日本の伝統 保存食を極める

第五回 干しいも  茨城県ひたちなか市 ほしいも屋の幸田商店

2013/11/08更新

 

季節を問わずに野菜や果物、魚介類が手に入るようになったのは、つい最近のこと。

冷凍や輸送の技術が発達するまでは、その時期に手に入るものを食するしかなかった。

いつでも生鮮食料品が手に入る温暖な地域だったら旬のものだけで十分だけど、世界には気候や風土の関係で長い期間食料の確保が難しくなる土地もたくさんある。そこで発達したのが保存食。生鮮食料品を、発酵、乾燥、燻製などの技術で加工して備える。世界各国では今なお多くの保存食が工夫され、作られている。

食文化の土台を支える生活の知恵、保存食を極める旅。

第五回目は、昔からおやつとして愛されている「干しいも」です。

添加物、保存料を使わない健康的な日本の伝統食

 

サツマイモを蒸した後に、実を薄くスライスして干す。

 

干しいもの作り方はいたってシンプル。原料はサツマイモだけで、保存料や添加物をいっさい使わない。油脂などを使った調理もなし、天日干しと乾燥機で仕上げる製法は素材のよさを100%生かしきる。

 

栄養素もたっぷり。干しいも1袋(150g)の中に、鉄分は成人女性が一日に必要な摂取量の約5割が含まれる。ほかにも、カリウム(必要摂取量の約9割)、ビタミンEやマグネシウム(ともに必要摂取量の約25%)などが凝縮されていて、しかも食物繊維が豊富でコレステロールはゼロ。干しいもは、干し柿や甘栗とならぶ日本ならではの健康的な天然保存食だ。

 

干しいもの歴史は意外に浅く、明治時代の1892年頃。現在の静岡県磐田市で蒸して干す製法が開発されたといわれている。

サツマイモが鹿児島県で生産され始めたのは約300年前のこと。当時はいたみやすいために輸送が難しい食材だった。サツマイモが栽培できない北国の人などは、干しいもが流通してから初めてサツマイモの味を知ったはずだ。

 

現在、干しいも生産量の9割以上を茨城県が占めている。

この地はサツマイモ栽培が可能な北限で、黒土が栽培に合うこと、強い北東の風が干しいも作りに最適だったこと、地域をあげて干しいも作りを奨励したことなどが理由としてあげられる。

 

今回、取材にお伺いした幸田商店さんは、干しいも作りのメッカ、太平洋に面したひたちなか市で1948年に創業した干しいも専業メーカーです。

 

 

 

 

ポップなものから本格派まで多彩な干しいもがあった

 

 

昔懐かしおやつの定番、干しいもについていろいろ教えてください、と幸田商店さんにお願いしたところ、代表取締役社長の鬼澤宏幸さんが自ら登場してくれました。

 

「最近はドラッグストアやコンビニで干しいもを見かけることがありませんか? それは弊社の努力の賜物なんですよ(笑)。10年ほど前までは、茨城産の干しいもは9月から3月までの季節限品で、青果流通によって消費されていたんです。弊社は10年ほど前から、干しいもを健康的なおやつとして一年中食べていただこうとアプローチを始めました」

 

青果流通とは、スーパーマーケットの野菜や果物と同じ扱いということ。それでは、若い世代には届かないと、コンビニに置けるような安価でポップな商品(下欄写真の左上)の開発を進めたという。

 

「安くて良質の原料を確保するために中国に自社工場を設立しました。開発分野では焼いたタイプやホワイトチョコレートをコーティングしたタイプを作ったり、スティックタイプやひと口サイズの干しいもを商品化しました。おかげさまで、若い世代にも受け入れられるようになりました」

 

同時に、国産の本格派干しいも作りも力を入れた。

たとえば、「平成22年ほしいも品評会」で最優秀賞を受賞した『べっ甲ほしいも』(下欄写真の左下)は、泉13号というサツマイモの品種を原料にしたブランド商品。一般的な品種の玉豊と比べると若干高価だが、甘味と粘り気が強く、なによりも黄金色に輝くボディが見た目も美しい。

実際にいただいたが、イモのうま味が濃密に凝縮されていてジューシー感たっぷり、まるで南国のフルーツを食べているようだった。

 

 

 

 


世界に広がる干しいもの可能性

冒頭で触れたように、原料を100%生かす干しいも作りはいたってシンプル。

自社農園で獲れたサツマイモを洗ってから蒸して、皮をむいてスライスして干す。この過程で、1kgのサツマイモが200gの干しいもに変わるという。つまり5分の1に凝縮されるわけだ。

サツマイモの形はひとつひとつ違うのでどうしても手作業が多くなるが、その分、干しいもの味わいにほのぼのとした人の手の温かみを感じられる。

 

「日本の食文化が無形文化遺産に登録されますが、日本で生まれた干しいもも世界に誇れる食のひとつだと思います。最近、アメリカなどに輸出しはじめましたが、夢は干しいもを世界中でメジャーな食べ物にすることです」

 

油や塩分を使用せず、食物繊維やミネラル分を多く含む無添加食品。世界で流行する可能性は十分だろう。

干しいもは大量生産が難しいのでブームになったら手に入りにくくなるかもしれない。今のうちから、ひと口ひと口大事に味わっていきたいものです。

 

 

ほしいも屋の幸田商店

茨城県ひたちなか市平磯町1113

TEL:0120-97-9988

http://www.k-sho.co.jp/

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