和食の楽しみ方入門

和の道具を知る ― 箸の種類と器の愛で方 ―

2015/04/10

和食の道具は、細工や絵柄に細かな意味を持つものが少なくありません。そうした点に目を向け、そこに込められたメッセージを受け取れば、さらに和食をいただくのが楽しくなるはずです。そこで今回は箸の種類と器の愛で方について、料理研究家の久保先生にお話をうかがいました。

お箸の種類と呼び名いろいろ

お弁当をいただく箸やお店で食事をいただく際の箸には、いろいろな形や材質があります。こうした箸を久保さんに整理して教えていただきました。

「(1)は、定食のお店で使われていたり、コンビニエンスストアなどでもらったりする気軽な割り箸ですね。なかでも割れ目に溝があり、割り箸の面や角の部分を削って割りやすくしてあるものを『元禄(げんろく)』といい、角の面取りの仕方や長さでさらに細かく分類されるようです」と久保さん。

「(2)は、『天削箸(てんそげばし)』といい、割り箸の天(持ち手の方)を斜めに削った割り箸です。料理を挟む部分だけが面取り加工されています。箸の上下を逆さまに使わないという意味が込められており、やや改まった雰囲気の箸です」。竹製、木製など素材はいろいろありますが、杉の木でつくられたものがもっとも高級とされているのだそうです。

「(3)が『利休箸(りきゅうばし)』といって安土桃山時代に千利休によって考案されたものと言われています」。千利休が客を招く日の朝、客人の数だけ一膳一膳、小刀で箸の両端を細く削り、食べやすい箸をつくったとされるのがこの名前の由来。なかでも赤みのある杉木地で作られた赤杉の箸がもっとも上質で、おもてなしにぴったりの箸です。

「(4)が『祝箸(いわいばし)』です。両端が細く、中央が太くなっている丸箸で、お祝いの席には、壊れたり折れたりといった縁起の悪いことがないよう、折れにくい柳でつくったため『柳箸(やなぎばし)』とも」と久保さん。ほかにもいくつか別名で呼ばれます。例えば、お雑煮をはじめ、お正月のお祝いのお料理は、人が食べるだけでなく、神さまへの感謝のお供えでもあります。そのため、箸の片方から人間が食べ、片方から神さまが食べるという“神人共食(しんじんきょうしょく)”の意味から『両口箸(りょうくちばし)』とも呼ばれています。また、箸の中央が膨らんでいることから豊作を意味する米俵に例えて『俵箸(たわらばし)』とも呼ばれているのだそうです。

「物にさまざまな思いを込める日本人。箸も例外でなく、形状や素材に意味を持たせ、それぞれに異なった名前がついています。日常的によく見る箸も、こうして名前を知り、意味を理解することで、興味が広がるのではないでしょうか」と久保さん。

 また、箸の長さについても久保さんは次のように教えていただきました。「自分にぴったりの箸の長さを測るのに、“ひとあた半”という言葉があります。ひとあた(一咫)とは、親指と人差し指を直角に広げ、その両指を結んだ長さのこと。この長さの1.5倍の長さがちょうどよい箸の長さです。箸には16.5cm、18cm、21cm、24cmとサイズがいろいろありますから、自分の手にあう箸を見つけてください」

器の顔を知る

器を置く際に、座る人に対してどちら向きに置くのか気にしたことはありますか? 久保さんにお伺いすると、「器は正面が決まっているものが少なくありません。特に和の器では形がさまざまですから、形によって置く向きがあるのです。たとえば片口の器の場合、口の向きは左側に置くのが正しい置き方です。同様に、木の葉の形であれば、軸を右側、葉っぱの先を左側に。団扇など取っ手のあるものは、取っ手を右側に置きます。いずれも、注ぐ時、持つ時に右手で持つと自然な形に置くのが決まりになっているわけです」と久保さん。このときの左側というのは、机と水平に左という意味ではなく、左側の方向に置いてあれば問題はないとのことです。また、「山椒の実が秋に割れた形を模した、割山椒と呼ばれる器は、中の実が見えるよう、切り込みを手前に置きます。また、この器のように高台が三つ足になっている場合は、一つ足が前にくるように置くのも決まりです」

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