甘酒の歴史・読み物
甘酒祭りレポートVol.5
下老袋氷川神社 甘酒祭
弓取式、甘酒祭、豆腐刺しの三部で構成される御神事
埼玉県川越市の下老袋氷川神社(しもおいぶくろひかわじんじゃ)で毎年2月11日に行われているこのご神事は、弓取式(ゆみとりしき)、甘酒祭(あまさけまち)、豆腐刺し(とうふさし ※豆腐田楽)の三部で構成されています。起源は不明ですが、弓取式は平成8年に埼玉県指定文化財、無形民俗に指定されています。ここでは本神事の甘酒との所縁とお祭りの様子をお伝えします。
※本記事は、2019年2月11日に開催された祭りの模様を取材した記事です。
下老袋氷川神社で豊年を祈る予祝行事
昔は甘酒ではなく濁酒だったとのこと。酒類の密造に対する取締が厳しくなった明治頃から甘酒になったと考えられていますが、本神事はその年の天候を占い、豊年を祈る予祝行事であるとされています。
お祭の流れをおおまかに説明すると、弓取式の弓取(地区総代)および弓取っ児(子供)、甘酒や豆腐田楽などの御神饌が列を成して社殿に進み、式典を執り行った後に、弓取式を行い、それが終わると直会の儀式として参列者に甘酒と豆腐田楽を配ります。
次に祭事を構成する弓取式、甘酒祭、豆腐刺しをもう少し詳しく説明します。
弓取式について
弓取式は、茣蓙に掛けられた白黒の的に矢を射ることで、その年の春から秋に掛けての天気を占うものです。
白は晴れを、黒は曇りまたは雨を表しています。
5名の弓取が各季節ごとに、3本の矢を3回射ち、白と黒の数を集計し、白が多ければ晴れ、黒が多いと悪天候とされます。
昔は、子供が弓取っ児として、弓取に抱えられながら矢を射っていたそうですが、神様の神意を伺うには子供の方が適していたからという理由だったのだとか。現在は選出された子供が何かしらの儀式に携わっている様子は見られませんでした。
甘酒祭(あまさけまち)について
甘酒神事は、下老袋(地区)が主催し、東本宿(地区)が援助する習わしとなっています。
甘酒祭の名称は、御神饌である甘酒が目立つためにこの様な名称でも呼ばれているそうです。実際に2つの酒樽に入れて担がれて登場する甘酒は圧巻です。そして、この甘酒を飲むと、その年一年風邪をひかないと言われています。
豆腐刺しについて
豆腐刺しは、中老袋(地区)が担当し、上老袋(地区)が援助する習わしとなっています。
四角柱にカットされ、大きな竹串にさされた豆腐、これに味噌ダレを塗った豆腐田楽という特殊神饌が出されます。この田楽も参加者の健康を祈って食べられます。
いよいよ神事がスタート!
空は曇り空、気温は1℃という激寒の中、執り行われました。
暦上は3月から春ですが、まだまだ春は遠く感じられました。
9時20分に鳥居から社殿に向けて、弓取および弓取っ児、甘酒や豆腐田楽などの御神饌が列を成して社殿に移動します。甘酒の入った樽の神輿や担ぎ上げられた豆腐田楽の桶が目の前を通り過ぎていきます。
9時30分から社殿にて粛々と式典が執り行われ、社殿の外では寒さで震える参拝客や氏子の方々が集まっています。そのような中、社殿の脇では弓取式の的の設置が行われていました。
9時55分から社殿の外で弓取式が執り行われました。社殿から弓取式の間の時間、着物姿の弓取の方々は寒さで震えているようでしたが、そんな沈黙を破り、司会進行の合図とともに放たれる矢ですが、的にきちんと刺さる矢は少なく、大体が的を突き抜けるか、弾かれて地面に落ちるかでした。
気になる春~秋の天候占いの結果は
・春は晴れ(白が多かった)
・夏は曇りまたは雨(黒が多かった)
・秋は曇りまたは雨(黒が多かった)
となりました。占いでは梅雨や秋雨はしっかりとした雨が降り、水不足の心配はなさそうです。
10時15分から直会として、甘酒や豆腐田楽が参拝者に配られていきます。甘酒は湯気が立ち上がっており、全身冷え切った参拝者がそこに集まってきます。
五臓六腑に染み渡る甘酒の美味さと温かさで一息付くと、祭はほぼ終盤に。
社殿から離れた位置で『くらづくり本舗』の『あわ大福』の配布が始まり、参加者がそちらに集まると、社殿では手早く片づけが行われていき、10時30分にはお祭は終わりました。
昔と比べて変わっていることも多いのではないかと感じましたが、それでも行事の流れは大事に受け継がれている様子をみることができたご神事でした。
- 開催日:
- 毎年2月11日
(開催日時や時期については変更や中止の可能性がありますので事前にご確認ください。)
- 開催場所:
- 下老袋氷川神社(埼玉県川越市下老袋732)