流通などが発達していない時代は、その土地土地に固有の野菜が根付き、地域ごとに消費されていました。たとえば米は2000種類も存在していたのです。しかし今では、何種類か、数えるほどしか残っていません。「内藤とうがらし」もそうした道をたどった野菜の一つです。「鷹の爪」人気が高まることで、「内藤とうがらし」は影を潜め、ごく一部の土地で、自家用として栽培されるだけになってしまいました。
こうした現象には、チェーン店を経営する企業の存在も大きくかかわっています。チェーン店は、日本中、世界中で同じ味の商品を展開しなくてはなりません。必然的に、鶏肉なら同じ品種の鶏肉、じゃがいもなら同じ品種のじゃがいもを育てる必要が生まれたのです。大きな企業に商品を買ってもらいたい畜産農家や農家は、その売れる種類の肉や野菜しかつくらなくなっていきます。こうして、絶滅する家畜や農作物を生み出すことになりました。もちろん、チェーン店が悪いという話ではありません。食材の持つさまざまな個性を楽しむために、割合は少なくても存在しなくなるのは残念なことだと思うのです。
「内藤とうがらし」の存在を知り、なんとか絶滅させることなく、栽培を続けられないかと考えました。その豊かな風味を再現したい、誕生の地 新宿で、地域のブランドとして復活させたい、との思いから、プロジェクトがスタートしたのです。
しかし、原種の「内藤とうがらし」の種を見つけることは簡単ではなかったですね。すでに栽培しているところがほとんどない。方々を探しまわり行き着いたのが、筑波にある種の研究所でした。ここで「八ツ房」の原種の種を分けてもらい、ようやく「内藤とうがらしプロジェクト」がはじまりました。