内藤とうがらし再興プロジェクト
第二回 内藤とうがらしを町の顔に。
2013/01/28
第二回 内藤とうがらしを町の顔に。
内藤とうがらし再興プロジェクト
2013/01/28
JR山手線 高田馬場のホームに降り立つと「鉄腕アトム」のテーマが流れ、早稲田口の改札を出ると、高架下に見事に描かれた手塚キャラクター達が出迎えてくれる。そんなアトム生誕の地から、2012年伝統江戸野菜「内藤とうがらし」を復活させようという動きが始まった。その名も「アトム通貨 内藤とうがらし再興プロジェクト(以下 内藤とうがらし再興プロジェクト)」。スローフード江戸東京の成田氏の協力を得て(参考:第一回「内藤とうがらし はじまりの物語」)、戸塚地域(現高田馬場・早稲田・落合)でプロジェクトを立ち上げた、(株)手塚プロダクションの石渡正人さんと日高 海さんにお話を伺った。
石渡さん:そもそもの活動は、地域通貨「アトム通貨」から始まりました。手塚プロダクションが企業市民として何をしたら地域貢献できるかと考え「アトム通貨」の流通を開始したのです。活動を通じ、地域コミュニティについて考えるうちに、企業、学生、住民、子どもたち、皆が参加できるような、地域ブランドが必要ではないかと思うようになりました。
日高さん:そんな時に、偶然出会ったのが「内藤とうがらし」でした。「内藤とうがらし」を知るにつれ、戸塚地域(現 高田馬場・早稲田・落合)のブランドにするのにぴったりだと考えるようになりました。かつてこの地で栄えた野菜であり、育てやすく、観賞しても美しく、生でも乾燥させても食すことができるため、長く保存することができます。アトム通貨の理念とも「生物多様性保護」「地域の歴史文化の継承」「地産地消」「食育」といった視点から合致し、大変意義がある取り組みなのではないかと考えたのです。そこで、スローフード江戸東京の成田氏の協力を得て、「内藤とうがらし再興プロジェクト」をスタートすることになりました。
日高さん:まずは「内藤とうがらし」を地域で育てるところから始まります。そうして実ったとうがらしを回収し、地域の飲食店にてオリジナルメニューとして提供し、地域ブランドとして育てていくというのがプロジェクトの初年度の概要です。
石渡さん:そこで、最初に企業の皆さんに声を掛けました。戸塚地区には、マルコメ(株)をはじめとした食に関する企業があり、(株)農業技術通信社のような農業に詳しい企業があり、(株)シミズオクトのようなイベント運営ができる企業があります。こうした企業の皆さんの力を借りない手はありません。この地区は、3万人の住民、5万人の学生、2万人の企業に勤める皆さんが生活しています。今後住民の皆さんに参加してもらうためにも、1年目は情報発信力のある企業の皆さんの力を借りたいと考えたのです。
日高さん:企画書を持って趣旨をご説明した結果、企業・団体・学校など、17社の皆さんがプロジェクトに参加してくださることになりました。2012年6月、苗分け会を行い、育て方やとうがらしの歴史を交えた決起集会を開催しました。同じ地域にある企業同士といっても、普段はなかなか知り合う機会などありません。こうした場を通じて地域の企業が繋がり合うのは意義のあることだと思いました。
日高さん:6月に苗を植えると、7月中旬には緑の実がなりはじめ、8月半ばを境に赤く色づき始めます。しかし、成長のスピードなどは日照時間などにも左右されるため、ばらつきがありましたね。なかなかうまく実らないという事例もありました。でも初めての試みである今回は、うまくいった事例だけでなく、うまくいかなかった事例も含めて大切な記録となります。どういう環境を整えると育ちやすいのか、統計を得ることでわかることがたくさんありました。
石渡さん:皆、それぞれに工夫しながら育ててくださいました。39鉢育ててくださった総合学園ヒューマンアカデミーは、学校の入り口にある階段にずらりと鉢を並べ、地元の人や学生が毎日その成長を見守ることができました。東京富士大学も20鉢ものとうがらしを育ててくださいました。
日高さん:店頭で育ててくださった(株)エイチ・アイ・エス高田馬場支店の鉢も、かなりの人が毎日目にすることになったと思います。今後、住民の皆さんが育てるようになれば、「私のところはこんなに大きくなったよ」など、企業と住民との間で会話が弾むようになるのではと思っています。
石渡さん:育ててくださった学校や企業、それぞれの場所で、さまざまな会話のきっかけになったらうれしいですよね。
日高さん:そうですね。皆さんとても愛着を持って育ててくださり、マルコメ(株)などブログで成長の記録を報告してくださる企業もあって大変うれしかったです。
6月6日苗を鉢に植える。7月初旬にはかわいい白い花をつけ、一カ月後の8月初旬には、緑色のとうがらしが実る。そしてお盆をこえるとどんどん赤い実に。一度実り始めると冬までの間、繰り返し何本も収穫できるように。