私らしく、美しく(医食同源)。

美しく健やかに生きるためには?

2013/03/22

編集担当ノブエとミヨコが、そのヒントを求めて、「食」「習慣」「日本」「伝統的な暮らし」などをテーマに、専門家を訪ねます。

ノブエ:暖かくなってきたねー

ミヨコ:ほんと暖かい。でも花粉がひどくてー。体調もイマイチ。春ってなんか調子が上がらない。

ノブエ:え、ミヨも? 暖かくなってワクワクするはずなのに、なんでかなぁ。今日の先生、一井先生に聞いてみよう。

柳の木のような体を目指して

ノブエ:先生、春ってなんか調子が悪いんです。

ミヨコ:私もー。なんか調子が上がらない。どうしてでしょう?

一井先生:二人とも春の体になってきてるんだと思いますよ。

ミヨコ:春の体、ですか?

一井先生:そう。人間も動物。動物が春になると活発に動きだすように、人間も春の体に移行しようとするんです。整体的な表現をすると、腰椎の4番という腰の骨が緩もうとする動きがおこるんですね。それにより体が少しグラグラする。だから、それを支えようと上半身に力が入り、体がこわばるような現象をおこす人が増えるんです。

ノブエ:体がこわばる。力が入るって感じですか?

一井先生:そう。それにより、だいたい節分を過ぎた頃から、頭痛や肩こり、めまいや関節痛を訴える人も増加するんです。下痢や発熱の症状を出す人も多いんですよ。今年は少し早くて、1月中旬ごろから変化を訴える方が出ています。

ミヨコ:春になるとそんな影響が……。

一井先生:春だけでなく、季節の変わり目っていうのは環境の変化だから、人の体にストレスを与える原因になるものなんです。ただ、そのストレスをうまく“いなせる”人と、強くストレスを受ける人が出るのは事実ですね。

ノブエ:“いなす”ですか。

一井先生:そう。私はよく「柳の木」に例えるのだけど、強風などの強い力がかかったとき、ポキンと折れてしまう木ではなく、柳の木のように、柔軟に受け止め、うまくいなす体になることが大切だと思っています。そういう体を作れれば、季節の変わり目にかかるストレスを上手に軽減することができるようになるんですよ。

体の声に耳を傾け、柔軟な体になる

一井先生:“整体”というと、コリのあるところにグッと圧をかけて和らげることとか、左右対称の整った体と思っていませんか?

ミヨコ:違うんですか?

一井先生:本当の意味で「整体した体」とは、環境の変化に柔軟に対応できるしなやかな体のことをいうんですよ。

ミヨコ:その柔軟に対応できるかどうかが人によって違うから、症状が出る人と出ない人がいるってことなんでしょうか?

一井先生:そうですね。体が、変化に応じて何とかついていこうとする“破壊のプロセス”、それが体に現れる症状ということになります。上手に受け入れて排泄する、それを柔軟にできるかどうかが、人によって違ってくるんですね。

ノブエ:強く症状に現れる人と、現れない人ではどのように違うのですか?

一井先生:それは重ねて来た年月や、これまでの生き方が関係するんですよ。例えば、風邪の菌が体に入った時に、子どもはパッと高い熱が出るけれど、翌日はけろっとしてるってことが多いのに対して、大人になると微熱がずるずると続くというような症状を訴える人が多くなります。それは、すばやく体に不要だと思えるものを外に排泄できない、危機察知能力が鈍いというか、感受性が鈍い人が増えるってことなんです。すぐに反応して、すぐに出す感受性を持っていれば、長く調子が悪いなんてことにはならないんですよ。

ミヨコ:では、症状が出ること自体は悪いことではないんですね。

一井先生:そう。すぐに体が反応してくれるというのは喜ばしいことなんです。昔の人はそういう反応が出た時には、“ああ、少し無理をし過ぎたね、温かくしてゆっくり休もう”とか、そういう処置をしていたはずです。いわゆる「養生」というやつです。でも今は、すぐに薬を飲んで押さえ込んでしまう。つまり体の声を無視してしまうんですね。そうやって無視し続けることにより、体は症状を訴えなくなります。つまり、黙るようになり、感受性の鈍い体になってしまうんですよ。

ノブエ よかれと思って症状をおさえる薬を飲んでいたのに、そんな風になってしまうなんて、なんだかコワいですね。

一井先生:そう。コワいことなんですよ。それに感受性というのは、体だけでなく、心にも影響をしてしまう。体の声を無視し続けていると、心も動かない人になってしまうんですよ。

ノブエ 心もですか??

一井先生:そうですね。心が固くなると体も固くなります。逆もしかりということ。体つきや体の使い方をみれば、その方の性格や考え方などある程度わかってしまうことがあるんですよ。体が固くなってくると、他人に対する思いやりの気持ちがなくなったり、気遣いができない、という心の変化にもつながります。当然、人に対しても気持ちが動かないので、例えば恋愛に対しても鈍くなってきたり……。

ノブエ・ミヨコ:えーーーー!それは困ります。もしかして、草食男子なんていうのも関係が…。

一井先生:私は大いに関係があると思っています。草食男子なんて、流行語のように使っているけれど、人間の種を保存していくという根幹にもつながることなので、どうなんだろうなと思いますね。

ノブエ・ミヨコ:確かに…。

一井先生:もちろん、薬を飲んではいけないとか、昔はよかったとか、そういう話ではないんです。薬のない時代の方が大変だったことは間違いないんだから。ただ、忙しいからといって簡単に体の声を無視し続けるのではなく、時には耳を傾け、上手に症状を出して“いなす”ことができる柔軟な体をつくることが大切だということですね。走り続けるのではなく、少し止まって養生する気持ちを持つこともストレスフルな現代人にはとても重要なことです。