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日本の朝ごはん
たったの100円で食べられる学生食堂の朝ごはん
2013/12/11
日本の朝ごはん
2013/12/11
有名料亭の名物メニューである朝がゆ、文豪が愛したホテルの朝定食、禅寺の精進料理。
これまでは伝統的な日本の朝ごはんについてリポートしてきましたが、今回は趣向を変えて「朝ごはんを食べる」という食文化の基礎を支える大事な習慣そのものが主役です。取材に伺ったのは、大学生の食生活をサポートする白鴎大学です。
内閣府食育推進室が2009年に発表した「大学生の食に関する実態・意識調査報告書」によると、朝食をほとんど毎日食べる人は約6割いるものも、週4日以上食べない層が2割もいることがわかりました。なかでも、下宿している男性が朝食を抜く傾向が強いという結果が出ています。
こんな調査結果が出る10年前から、学生たちに朝食をしっかり食べてもらおうと、独自の取り組みを続けている大学がありました。
「朝起きて栄養を補給して心身のスイッチをオンにしてから授業に臨むことができれば、より集中できるし、規則正しい生活習慣につながります。そう考えてサービスを始めました」と語るのは、白鴎大学事務局次長の島村志津夫さん。
当初は、新入生に向けて春の1~2ヵ月限定で通常400円相当の朝定食を無料で提供しましたが、3年前からは年間を通して(夏季冬季の休み期間は除く)、100円(300円は大学側負担)で食べられるようになりました。
「ひとりで部屋で食べるよりも、学生食堂でみんなの顔を見ながら食べるのはコミュニケーションの点でも都合がいい。学生側のメリットだけではなく、先生方も授業をしやすくなったのではないでしょうか。眠気まなこであくびする学生は減ったはずですから。親御さんも安心して送り出せるでしょう」
和洋日替わりのメインプレートにご飯とみそ汁。納豆や冷奴、カップケーキやゼリーなども付いて、たったの100円。これを利用しない手はありません。
案の定、朝8時の学生食堂は学生たちでわいわいと賑やかでした。
「朝練の後、毎日ここで朝ごはんを食べます。シチューやカレーなどが出る金曜日のアラカルトメニューが楽しみ!」(バスケ部・3年女子)
全国大会でも上位に進出するバスケットボール部や駅伝大会に備える陸上部など、寮生活を送りながら毎朝練習に励む運動部の面々は朝の常連組。ご飯は一杯で足りるのでしょうか?
体育系の学生だけでなく、一限目に出席する下宿生や自宅通学の学生も足しげく通います。
「アパート暮らしで夜食は自炊していますが、朝はつくるのが面倒くさい。週5日はここで食べています」(剣道部・4年男子)
「自宅で母親に学食メニューの写真を見せたら『大学で食べなさい』って100円くれます。家だとパン一枚だけしか出てきませんからね」(無所属・1年男子)
事情はそれぞれ違うけれど、仲間と顔を付き合わせて同じ釜の飯を食べる学生たち。なんだか見ているだけでほっとする。もちろん、陰には人知れず努力する人が控えています。
「栄養のバランスを考えながら学生たちに飽きられないメニューを提供すること。魚や野菜はあまり好まれませんが、ひと口でもふた口でも食べてもらおうと工夫しています。やっぱり、残さず食べてもらいたいです」と語るのは、店長の塚原康介さん(シダックスフードサービス)。なによりも、学生たちのごちそうさまのひと言が励みになるそう。
たった100円で食べられるのはうれしいけれど、値段よりも朝ごはんを笑顔とともにいただくことの意義はもっと大きいはず。
この健全な習慣が身につけば、鬼に金棒。学生のみなさん、社会に出ても忘れないでくださいね。