日本の伝統 保存食を極める

第八回 沖縄の保存食
赤坂潭亭(あかさかたんてい)東京都港区

2014/08/07

保存食は、食料が慢性的に不足する季節や不測の事態に備えたり、貴重な食材を無駄にしないために世界各地で工夫を重ねながら発達してきました。

新鮮な野菜や果物、魚介類や肉類を、発酵・乾燥・燻製などの技術を駆使して加工する。保存食には、その国、その地方の食文化が生きづいています。

食文化の土台を支える生活の知恵、保存食を極める旅。

第八回目は、沖縄の保存食について、沖縄懐石の名店「赤坂潭亭」にうかがいました。

琉球王朝の宮廷料理を再現

琉球王国は15世紀初頭から約450年間にわたって独特の文化を築きながら栄えていました。食文化に関しても、宮廷には中国王朝の皇帝が派遣する使節(冊報使)をもてなすための特別な料理の伝統がありました。

「赤坂潭亭」は、この宮廷料理を現代の技で再現する沖縄懐石の店。ミシュランで3年連続で星を獲得しています。

「宮廷料理は幕末に一度歴史が途絶えてしまいました。当時の文献を読みこみ、試行錯誤しながら取り組んでいます」と言うのは、料理長の田中直樹さん。和食を勉強してこられた田中さんにとっては新たな挑戦でした。

「和食は引き算、沖縄料理は足し算の料理だと思います。たとえば、日本酒。米を芯まで磨いて雑味をそぎ落としてうまみを引き出すのは、和食の流儀。対して沖縄料理は、チャンプルのように個性の強いいろいろな食材を混ぜ合わせて味の深みを出しながらトータルでバランスを整える。フランス料理の考え方に似ています」

沖縄の味噌とアグー豚の三枚肉をラードで炒めたアンダンスーとゴーヤを合わせた一品は、その象徴です。水はけの悪い沖縄の土で育ったゴーヤは、本土で採れるゴーヤに比べると色みは濃くて味は一段と苦くて強いですが、塩気の少ない甘みある沖縄味噌とは抜群の相性です。

アイゴ類の稚魚を塩漬けにしたスクガラスを島豆腐にのせた品も、歯ごたえと風味のコントラストを楽しめます。

「温暖な気候に恵まれた沖縄は食材も豊富です。でも、調理後はすぐにいたんでしまうので、塩漬けしたり、発酵させて保存するレシピが数多くあります。沖縄の人が愛する島豆腐も、作りすぎて余ると、塩水で洗ってから蒸したり、焼いたり、揚げたりして保存します」

豚は鳴き声以外すべていただく

島豆腐を発酵させる豆腐ようは、沖縄を代表する保存食です。

赤坂潭亭では、島豆腐を水切りしてから小角に切り、数日干してから泡盛で洗い、あらかじめ泡盛に漬けて発酵させていた米麹に三か月から半年間漬けこんでつくります。鮮やかな紅色は米麹に加えた紅麹の色。東洋のチーズといわれるように、味はもちろん濃厚、ひと口でお酒が何杯も進みます。

豚も沖縄料理に欠かすことのできない食材です。昔から沖縄には、肉としてのロースや三枚肉(皮つきバラ肉)ばかりでなく、頭も足も尻尾も内臓も皮もすべて食べる習慣が根づいていて、「鳴き声以外はすべていただく」といわれるほどです。

「豚の新鮮な血液は、塩と片栗粉を入れて蒸して保存する。豚血は貴重な調味料です。豚の脂(ラード)も調理に欠かせません。命そのものを余すことなくいただくのが沖縄流なんです」

沖縄産のアグー豚は、脂身がおいしくコレステロールが少ない黒豚として有名。赤坂潭亭では、アグー豚をはじめとして食材のほとんどすべては沖縄産を使用しています。

アグー豚の魅力を堪能するには、スーチカ(豚肉の塩漬け)がもってこい。新鮮な生の三枚肉を約5日間塩漬けして、食べるときは水に数時間戻す。透き通るような脂身のあっさりした味わいと、やわらかいけれど程よく熟成してしっかりと存在感を示す肉の味。絶妙なコンビネーションです。

豚ほどではありませんが、ゴーヤ料理のバリエーションも豊富です。ゴーヤの黒糖漬けは、保存が効くデザート。塩漬けして水分を抜いてから黒糖シロップに浸して数日間。苦さと甘さがコラボした大人のおやつといった感じです。

沖縄土産の定番ちんすこうは、小麦粉とラードと砂糖だけでつくるシンプルな焼き菓子です。焼きたては香ばしくてサクサク。アフタヌンティーのお茶うけにいただけたら最高です。

沖縄ならではの涼しげな保存食をいくつかいただいただけで、沖縄に旅立ちたくなってきました。

赤坂潭亭(あかさかたんてい)

住所:
東京都港区赤坂6-16-11 浜ビル
TEL:
03-3584-6646

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