日本の朝ごはん
ミシュランの店が沖縄の朝ごはんを提案
2014/09/10
日本の朝ごはん
2014/09/10
ミシュランで3年連続して星を獲得している沖縄懐石の『赤坂潭亭』。
沖縄の保存食について取材させていただいたときに、わがままを言って、普段の営業では提供していない朝ごはんメニューを提案してもらいました。
「沖縄の人たちは食事をしたあとに『クスイナタン』と言います。『ごちそうさま』にあたる言葉で、食べものをつくってくれた人に『薬になりましたよ』という感謝がこめられているといわれています。体にいいものを食べるのは、沖縄料理の伝統です。ご用意した朝ごはんは、見栄えが美しく、体にやさしい料理です」(料理長の田中直樹さん)。
沖縄には古くから「食はクスイムン(薬)」という諺が生きている。たとえば、ゴーヤ―。琉球の古書『御膳本草』によると、「気味、苦、甘、平、毒はない。邪熱を除き、労乏(つかれ)を解き、心を清め、目を明らかにする。夏の月は毎日食ってよい」とあります。沖縄県は長寿でも有名ですが、食べものに対するこうした姿勢が無関係ではないでしょう。
赤坂潭亭のエントランスには、第79代内閣総理大臣の細川護煕さんが書いた「ニライカナイ」の掛け軸があります。ニライカナイとは、沖縄に伝わる理想郷のことで、豊穣や生命の源であり、生者の魂はニライカナイから来て、死者の魂はニライカナイへ帰るとされています。沖縄はまさに天国に一番近い島。沖縄の食を知れば知るほど、理想郷に近づく気がします。
テーマは、体にいいものを少しずついただくこと。膳に盛られた9つのお惣菜をひとつずつ紹介しましょう(右上から時計回りに)。
まずは、タイモの揚げ煮。タイモは沖縄の里芋で、ハレの日の料理に欠かせないもの。揚げ煮には、イモのうま味が凝縮されています。
2番目は、全国的に有名になった石垣島の島ラー油であっさりした味つけをしたカリフラワーを山クラゲなどと和えたもの。ご飯との相性がぴったりです。
右下は、パパイヤのイリチー(炒めもの)。南国フルーツの酸味がアクセントになります。
真ん中の上は、クーブ(昆布)イリチー。昆布がまったく取れないにもかかわらず、沖縄県の昆布消費量は全国のトップクラスです。その理由は、江戸時代に日中貿易のために全国の昆布が貿易の拠点になっていた沖縄に集められたためです。冷蔵庫のない時代、沖縄の人にとっては腐りにくい昆布は貴重な食材になりました。
ラフテー(豚の角煮)も沖縄の伝統食です。ゼラチン化した脂ととろけるようなやわらかい肉のコンビネーションを楽しめます。
真っ白な地豆豆腐の原料は落花生です。地豆とは、地中に実る豆。毎年のように沖縄を襲う台風が地上の作物を根こそぎ押し倒してしまっても、地豆は確実に収穫できる大切な食材でした。
左上は、ナーベラ(へちま)のお浸し。ほのかに甘くてやわらかな食感は、まさに夏の味です。
チラガーは、豚の顔皮の燻製。豚は鳴き声以外はすべて食するという通りの一品で、こりこりとした歯ごたえが印象的です。
左下は、ゴーヤ―のお浸し。そのほかに、フーチバ(よもぎ)入りのおかゆとドラゴンフルーツ、野菜ジュース(パイナップル、シークワーサー、ゴーヤ―など)が揃って、大満足のラインアップ。
沖縄の食材を食べ尽くすような朝食メニュー。楽園はすぐそこにあります。