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今日がうれしくなる器
時を経て 育つ器
2014/11/13
時を経て 育つ器
今日がうれしくなる器
2014/11/13
日本には全国に個性豊かな器が存在し、さまざまな文化やつくり手の思いを伝えています。またそうした品々の存在は日常に華やぎを与えてくれるものです。そこで器ギャラリーオーナーに、日々の暮らしや季節の移ろいを彩る器をご紹介いただきました。
今回、ギャラリー「夏椿」の恵藤さんにお話していただいたテーマは、「器を育てる」ということ。時を経ること、使うことで変わる器の魅力について語っていただきました。
ずっと愛用している湯のみを覗き込むと、いつしかお茶の色が入り込んで編み目のような模様が生まれていたりする。貫入といわれるものだ。「貫入は、陶器ならではのもの。陶器は、使い続けることで変化が生まれます。なかでも、お茶やコーヒー、だしつゆなど、色の濃いものを入れる湯のみ、マグカップ、急須、蕎麦猪口などには、特に貫入が入りやすいですね」と恵藤さん。
「器は使う人によって、異なる変化を見せます。貫入はその良い例。長らく愛用することでだんだんと器が育つ、それが陶器のおもしろいところであり、それゆえ愛着が生まれますね」
とくに粉引と呼ばれる白い陶器に貫入は入りやすいというが、陶器であれば、どんなものでも長く使うにつれ、少しずつ少しずつ変化する。その変化を楽しみたい。
漆も、長く使うことで変化する器の代表といえる。
「漆には、時間が経つにつれ透明度が増すという特徴があります。そのため、長く丁寧に使われた漆器には、つやつやとした質感が生まれたり、塗り重ねられた下の色味や土台となる木の色が現れたりして、味わい深くなりますね。また、時間が経つことで、強く丈夫になるのも漆の特徴です」と恵藤さん。
漆器には、さまざまな色合い、塗り方があるが、たとえば「溜塗り」という手法は、下に朱色の漆を塗り、その上に半透明の透き漆を重ね、その微妙な色合いを楽しむ。塗った当初は、透き漆の透明度が低く、黒っぽく見える漆器も、年月を経ることで、次第に透き漆の透明度が増し、下の朱の色が現れ、奥深い色味となる。漆の持つ“時間を経ることで変化する”という特徴を生かした手法だといえる。
使用したての色味に戻したいと思えば、再度、職人さんにお願いして、もとの色に戻すことができるのも漆の特徴だ。