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日本の朝ごはん
東京湾の定置網漁見学ツアー
2015/01/09
日本の朝ごはん
2015/01/09
東京湾に面した千葉県南西部・内房の町、保田(千葉県)。
漁港では昔ながらの定置網漁を行っていますが、一般の人も見学できて、しかも獲れたばかりの魚を食べられるコースがあると聞いて行ってきました。
案内してくれるのは保田漁業協同組合の鈴木淳さん。よろしくお願いします。
12月中旬の平日。
夜明け前の4時50分頃、港に到着すると漁師のみなさんはすでに集まって焚火にあたっています。
都会ではめったに目にすることのない本物の火に煽られて、こちらまでちょっとワイルドな心もちになってきます。
5時10分、船長の「行こうか」のひと言で、15名前後の漁師さんが3つの船に分かれてささっと乗船。ほどなく、漆黒の海原に向かって出港です。われわれ取材班もなぜか胸躍る高揚感に包まれて気分は上々です。
沖合に出て10分ほどで定置網ゾーンに到着。
一帯には<30m×150m>の網が仕掛けられていて、長さ30mほどの船が2隻向かい合って所定の位置につき、2回に分けて網を巻き上げていきます。
1回目は左側の浅い位置に仕掛けた網。
網を巻き上げる過程で、50mほど離れていた2隻の船の距離が少しずつ縮まってきます。
30分くらいかけて慎重に網をたぐると、そこにはアジ、サバ、イナダ、タチウオ、ヒラメ、ホウボウ、アオリイカなど十数種類の魚が上がっています。
当たり前ですが、魚はピチピチで弾けんばかり。おこぼれをいただこうと目論むカモメも騒がしい。静かなのは、各自の仕事を黙々とこなす漁師のみなさんだけです。
船上では、ヤガラやヒラメ、タイなど高値で取引される魚が選別されています。
案内係の鈴木淳さんが、アオリイカとスルメイカをさっそく捌いてくれました。数分前まで生きていた新鮮な身がおいしくないはずがありません。歯ごたえコリコリで、甘味がたっぷり。白いご飯が恋しい!
2回目は定置網ゾーン右側の深い位置に仕掛けた網を引き上げます。こちらの網からは、十数トン分のスズキ。白身がおいしい魚がたっぷり入っていました。
ようやく朝陽が昇ってきましたが、海上は風があってとにかく寒い。体感温度は氷点下、骨の髄まで凍えます。鈴木さんに「寒くないですか?」と聞けば、「漁師に《寒い》って言葉はないんです」ときっぱり。郷に入って我慢します。
それにしても漁師のみなさんの緊張感ある仕事ぶりには感心しました。一歩間違えれば大事故につながる不安定な船の上の作業ですが、軽いフットワークでこなします。
「漁はチームワーク」だと、寒さに震えながら納得しました。
7時帰港。
陸に上がったわたしの足元はフラフラですが、漁師のみなさんはてきぱきと仕分け作業に取りかかります。
本日の漁獲量は約4トン。一番の高級魚はヤガラ(下段の右下写真)で、その白味の刺身は絶品、料亭でもなかなか食べられないそうです。
2時間後、アジ、ホウボウ、イナダ、アオリイカ(下段の左上写真)が、刺身となって食卓に上がってきました。ご飯とあら汁、コムツの煮付けも用意されています。
3時間前まで海中で泳いでいた魚を、ついさっきまで隣にいた漁師さんが目の前で獲って、すぐそこにいる人が調理してくれる。こんなにストレートでわかりやすい朝食は生まれて初めてです。おいしさはもちろんのこと、その単純さに感動します。
感動といえばもうひとつ、今回のコースのコストパフォーマンスです。定置網漁見学、朝食、そして人工炭酸泉風呂の入浴券が付いて1,800円。最強のアトラクションではないでしょうか。