今日がうれしくなる器

道具と器の間という美しさ

2015/02/12

独特の表情を見せるステンレス

鉄の器とともに、成田さんの作品で人気があるのが、ステンレスのシリーズ。「直火にかけられないものもありますが、ステンレスは鉄よりも使い方の汎用性が高く、さまざまな料理と相性がよいのではと考え、つくりはじめました。一般にステンレスの器というと、ピカピカと光ったものが多いですが、僕は金属らしいそうした質感には惹かれません。だから、表面をコークスで焼いてテクスチャーを付け、酸で洗ってマットな仕上りにしています」。その言葉の通り、成田さんの器には独特の質感、表情がある。また、こうした鈍い色味だからこそ、さまざまな料理と馴染みがよさそうだ。

「エスニックなお料理や、和食など、どんな料理とも相性がいいですよ」と恵藤さん。また夏になれば、器を冷たく冷やして使うのもおすすめだとか。「以前、ある料理家さんの提案で、このステンレスの器を冷やして、アイスクリームを盛ったことがありました。それが、とても新鮮で、素敵でした。ステンレスという素材を生かしたアイデアもぜひ試していただきたいですね」。

料理人の想いをそのまま食卓に

こうしてお話を伺っていると、成田さんのフライパンやお皿を使っている様子をみたくなり、調理をお願いしてみた。「鉄のものは、テフロン加工したものに比べてくっつくのではないか、と心配される方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。ポイントは適度にしっかりと熱して使うことですね」と恵藤さん。実際に、成田さんがオムレツや餃子を慣れた手つきでつくる姿は、とても軽やかで、使いやすそうだ。熱伝導がいいため、おいしく仕上がるという。また、お手入れの仕方として、「しまい込むことなく、ぜひ毎日使ってください。たとえば、収納する際も、壁にかけたりすると自然に乾くため、錆びにくいと思います。器も道具も使わないと良さはでてきません。使うことで艶が出て、美しく使いやすくなるのだと思います」とアドバイスをいただいた。

 湯気が上がったアツアツのお料理をテーブルに並べると、「おいしそう」と自然に声が漏れる。 「鉄の器が食卓に馴染むのか、心配する方もいらっしゃいますが、最近はとても柔軟に自由に使ってくださる方が増えてうれしいです」と成田さん。  手に馴染む道具であり、美しく食卓を彩る器でもある成田さんの作品は、料理人の想いをそのまま食卓に持ち込むことを可能にする。それが何よりもごちそうであり、温かい場をつくり出してくれることをこの時間が教えてくれた。

夏椿

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