暮らしの中の、小さな知恵

「水出しダシ」でいつでも美味しいおうちごはんを

2016/10/31

料理の基本とも言えるダシ。けれど“毎日とるのは面倒”と、忙しい日々の中で負担に感じることもあるのでは? そんな人におすすめなのが、『水出しダシ』。下準備や火加減の調節が必要なく、昆布を水に浸けておくだけでOKという手軽さながら、市販のダシにはない、潔く、奥深い味わいが広がる。
「水出しの昆布ダシを“昆布水”と呼んでいます。昆布は煮出すよりも水出しのほうが、断然旨味を引き出せるんですよ」と、料理家の山脇りこさん。
「昆布水は旨味成分のグルタミン酸が豊富で、塩分や油を控えめにしても美味しくなります。和食に限らず、合わせる食材次第で、洋食、中華、エスニック料理にも使えますし、ダシがら昆布も常備菜や煮物の具、煮魚の下敷きに。献立作りにも身体にも、嬉しいことがいっぱいなんです」
そこで、山脇さんに、昆布水の美味しい作り方と、昆布水を使ったオリジナルレシピを伺った。

<美味しい昆布水を作るための3つの条件>

① 昆布はケチらず、適量を準備する
美味しく作るためには、水に対して、適量の昆布を使うことが大切。慣れるまでは量を計って、目安を覚えよう。

② 一晩以上、水に浸ける
昆布の旨味を十分に引き出せるように、必ず一晩(約8時間以上)は水に浸けること。夕食後に仕込めば、翌朝には使える。

③ 必ずダシ用の昆布を使う
煮物や佃煮などに使う早煮昆布は、ダシには不向き。羅臼、利尻、真昆布など、種類は何でもいいが、ダシ用の昆布を用意しよう。

毎日の献立に大活躍!昆布水の作り方

昆布水は、作り方も味わいもとってもシンプル! 冷蔵庫にストックしておけば、忙しい日でも、手早く美味しい料理ができ上がる。ここでは、<基本の昆布水>と、昆布水に野菜の旨味をプラスした<昆布と野菜のダシ>の作り方を紹介。日々の料理に取り入れてみよう。

【基本の昆布水】

〔材料〕(作りやすい分量)
ダシ昆布…約40g(約15×7cmを2~3枚が目安)
水…1.5ℓ

[作り方]
昆布は表面をサッと拭くか洗い流し、水に浸け、冷蔵庫で8~15時間ほど置く。冬は涼しい場所に出しておいてもよい。

[保存]
冷蔵で約3日間。昆布がら、昆布水ともに冷凍保存可。

【昆布水をアレンジ!昆布と野菜のダシ】

〔材料〕(作りやすい分量)
昆布水(昆布ごと)…1~1.5ℓ
ニンジン…1/2~1本
玉ねぎ…1/2個
セロリ…1/2本

[作り方]
ニンジンは縦半分に切り、玉ねぎは皮をむく。すべての材料を鍋に入れて、ごく弱火で約40分加熱し、野菜と昆布を取り出す。

[保存]
冷蔵で約3日間。ダシは冷凍保存可。

山脇りこさんが教える!
昆布水を使った、とっておきレシピ

家庭ではおなじみの料理も、昆布水を使えば、いつもとはひと味違った美味しさに。メインのおかずから副菜、パスタまで。山脇さんが提案する、昆布水レシピをご紹介!

<ロールキャベツ>

昆布水、醤油、みりんと、少ない調味料ながら、昆布水の効果で深い旨味が広がる一品。長い棒状に巻くことで、作る時の手間が半減するのも◎。半分にカットしてから盛り付けたり、取り分けた後に自分でカットして召し上がれ。

〔材料〕(4~5人分)
合挽肉…300g
キャベツ(外葉)…5枚
卵…1個
塩、片栗粉…各小さじ1

(a)
昆布水…3/4カップ
醤油…小さじ1
みりん(または、酒)…大さじ1

〔作り方〕
【1】 挽肉に塩を加えてよく練り、粘りが出たら卵、片栗粉を加えてよく混ぜる。キャベツの葉は芯を切り取り、熱湯に5~6分浸ける。
【2】 肉種を5等分にして棒状にまとめ、水気を拭いたキャベツの葉で長さ15㎝ほどに巻く。
【3】 巻き終わりを下にして耐熱皿に並べ、(a)を注ぐ。軽くラップをして、電子レンジ(500W)で火が通るまで10分ほど加熱する。

<白菜とコーンの豆乳スープ>

これからの季節に嬉しい、身も心も温まる豆乳スープ。白菜は旨味成分のグルタミン酸が豊富で、昆布水と合わせると、相乗効果で旨味がグンとアップ! チーズの旨味とも相性がよく、ほっこり優しい味わいに。

〔材料〕(2人分)
白菜…1/6玉
コーン(ホール)…200g
昆布水…1カップ
バター…10g
塩…小さじ1/2
黒こしょう…少々
豆乳…1/2カップ
スライスチーズ…2枚

〔作り方〕
【1】 白菜は1cmのザク切りにする。
【2】 鍋にバターを入れ、溶けてきたら白菜、コーンを加えて炒め、塩、こしょうをして昆布水を加える。沸騰したら蓋をして、白菜が軟らかくなるまで15分ほど煮る。
【3】 豆乳を加えて弱火にし、スライスチーズをちぎって加える。

<昆布チーズペンネ>

野菜をプラスした昆布水<昆布と野菜のダシ>を使用。シンプルを極めた、旨味が主役の絶品パスタ。<昆布と野菜のダシ>でパスタをゆでることで、パスタが昆布と野菜の旨味を吸収。和える時にゆで汁を加えると、さらに旨味が増す。

〔材料〕(作りやすい分量)
ペンネなどのショートパスタ…200g
昆布と野菜のダシ…1と 1/2カップ

(a)
塩昆布…15g
パルミジャーノレッジャーノ…50g

〔作り方〕
【1】 鍋にパスタを入れ、ひたひたまで昆布と野菜のダシを注いで中火にかける。
【2】 ひたひたを保ちながらパスタの表示時間を目安にゆでる。ゆで汁大さじ3を取っておく。
【3】 ボウルにゆでたてのパスタ、ゆで汁、(a)を加えてよく和える。

山脇さんの昆布水レシピ、いかがでしたか?
“ダシだから”と難しく考えずに、水と同じ感覚で取り入れることが、昆布水を上手に使うコツだそう。例えば、山脇さんは、日本茶を淹れる時に温めた昆布水を使ったり、野菜やフルーツと一緒にミキサーにかけてスムージーにして楽しんでいるのだとか。
手軽に健康的で豊かな食卓を叶えてくれる昆布水、ぜひお試しを!

料理家

山脇りこ(やまわきりこ)さん

料理家

山脇りこ(やまわきりこ)さん

代官山で料理教室『リコズキッチン』を主宰。和食のダシ、伝統的な製法で作られた調味料、旬を大事にしたシンプルな料理に、現代のモダンなエッセンスを加えた家庭料理を提案。
“料理本のアカデミー賞”といわれる『グルマン世界料理本大賞2014』では、日本の伝統食材である昆布のダシとレシピをまとめた著書『昆布レシピ95』(JTBパブリッシング)がグランプリを受賞。他にも、最新作『今日も明日もごきげんカレー』をはじめ、著書多数。