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日本の発酵食 -食卓を飾る“菌未来”-
第九回:大泉工場NISHIAZABU
2017/06/29
第九回:大泉工場NISHIAZABU
日本の発酵食 -食卓を飾る“菌未来”-
2017/06/29
味噌、しょうゆ、酢、みりん、納豆など、日本の食卓を支えてきた発酵食。その土地に棲む微生物の働きによって食材のうま味を引き出したり、カラダにもよい作用をもたらす発酵食は、先人たちが生み出した日本の偉大な知恵の結晶です。 発酵食を現代から次世代につなげる人やお店、レシピを紹介するシリーズ、第九回は、KOMBUCHAの専門店としてつい先日オープンした大泉工場NISHIAZABUに伺いました。・・・KOMBUCHAってなに?
大泉工場NISHIAZABUは、KOMBUCHA(コンブチャ)の専門店。2017年4月27日に西麻布の交差点近くにオープンしたばかりのぴかぴかなお店です。まだ日本では聞き慣れない名ですが、KOMBUCHAはアメリカで大人気のお茶を発酵させたヘルシードリンクです。
「日本では1970年代に紅茶キノコという名でブームになりました。KOMBUCHAは、紅茶キノコの進化版。砂糖を加えたお茶(緑茶、紅茶など)に、酵母由来から生まれた発酵菌であるスコビーと酢酸菌を入れると、酸素と糖をエサにして発酵が進みます。当店では6日間発酵させたあと、専用タンクに移して炭酸をしみこませています。炭酸の強さはビールの半分程度にしています。昔の紅茶キノコは糖分が多くて発酵も深かったのでかなり甘くて酸っぱい味だったらしいですが、KOMBUCHAは飲みやすいですよ」
KOMBUCHAの開発を手掛けるのは、もともとはクラフトビールをつくっていたという島田祐二さん。さっそく現代の紅茶キノコ、KOMBUCHAをいただきます。
・・・さわやか! りんごやぶどうなど果実系の炭酸飲料みたい。ほどよいフルーティーな酸味。のど越し爽快で、発酵の香りはまるでワインみたい。これはクセになりそう。
「ワイングラスで飲んでいただくのは、香りや味をじっくり楽しんでもらうため。アメリカでは200ブランド以上の製品が発売されおり、スーパーにもKOMBUCHAコーナーができるなど盛り上がっています。茶葉やスコビーの選択、糖度の調整や発酵時間、PH値や炭酸の強さなど、さまざまなファクターを研究してこの味にたどりつきました」
食生活の乱れやストレスによって、現代人の腸内環境はアルカリ性に傾きがちで、悪玉菌が優位になる傾向があります。その結果、免疫力の低下やアレルギー疾患などにつながるともいわれています。KOMBUCHAが流行っているのは、その裏返し。億を超える酢酸菌、数百万株の乳酸菌とポリフェノールを豊富に含み、PH値を「3.4~3.6」に管理している大泉工場のKOMBUCHAは、腸内の善玉菌を増やす現代的な健康飲料です。
いくつかの酵母を混ぜ合わせて培養する発酵菌のスコビーは、ゲル状の塊です。もとになるスコビーは、2週間程度で完成し、ある一定の条件下でどんどん増殖していきます。市販されているスコビーもありますが、大泉工場はもちろん自家製です。「よく見ると白い膜と茶色の膜があって、白い方は砂糖をエサに繁殖していて、茶色の方は茶の成分で育っているんです。食べるとナタデココみたいでおいしいですよ」
スコビーの試食は遠慮しましたが、ゆずとスペアミントのフレーバーを加えたKOMBUCHAは、おいしくいただきました。原料はすべてオーガニック、人工甘味料や人工香料、着色料をいっさい使わないそうです。
「発酵の世界は奥が深いですね。発酵をこちらで100%制御することはできません。同じレシピできっちりつくっても、PH値が0.1異なるなんてしょっちゅうですから。そういう意味でも、KOMBUCHAは生きている飲みものですね」
取材中もひっきりなしにお客さんが来店していましたが、そのほとんどは近隣で働いていたり、住んでいる外国の方々。彼らは母国でもKOMBUCHAを飲んでいたのでしょう。大泉工場NISHIAZABUではヨガやスポーツとコラボした企画も定期的に実施しています。「健康」に関心のある人は、KOMBUCHAを見逃せません。