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和食の楽しみ方入門
だしを知る 〜旨味・風味の源 かつお節編
2017/08/22
和食の楽しみ方入門
2017/08/22
かつお節などの節類、昆布、煮干し類、干した野菜(干し椎茸、大豆)などの、旨味成分を水に溶出させた煮出し汁である“だし”。前回の昆布に続き、今回はかつお節などの節類について料理家の久保香菜子さんに教えていただきました。
お吸い物やお味噌汁、煮物をつくるとき、どのような“だし”を用いていますか? 昆布、かつお節、煮干しなど、何を用いるかは、地域性が大きく影響します。そんななかでも、だしの代表格といえば「かつお節」ではないでしょうか。
今日では、かつお節を自ら削って使っている家庭は少ないかもしれませんが、専門店や大きな乾物店では、削る前のかつお節を手に入れることができます。「かつお節には、背・腹と亀節(背と腹が合わさった小さめのかつお節)があり、それぞれ風味が異なります。腹は背に比べ脂が多く、背はあっさりとしています。お肉の脂身の多い部位と赤身の部位と同様と考えてもらえばいいかもしれません。亀節は小型の鰹から作られるため、軽めの風味で背と腹の両方の特徴を味わうことができます。私は、あっさりと上品な風味の背のかつお節を好んで使っています」と久保さん。和食料理店や料亭などでも、そのお店の料理に合ったかつお節を選んで使用しているそうです。
久保さんは、専門店でかつお節を購入し、店頭で削ってもらうサービスを利用しているとのこと。自分で削ることは難しくても、新鮮で風味豊かなかつお節を購入できるこうしたサービスを利用するのもおすすめです。
代表的なだしであるかつお節ですが、意外に知られていないのが、かつお節には『荒節(あらぶし)』と『枯節(かれぶし)』の2種類あるということだと、久保さんは言います。
「荒節は、かつおの頭や内臓を取り除き、煮たあと、燻して乾燥させたもののことです。枯節は、荒節にかび付け、乾燥を繰り返したものを言います。削りがつおやだしパックの場合、原材料名に、『かつおのふし』と書かれているものは荒節、『かつおのかれぶし』と書かれているものは枯節を使用しています」
さらに、かび付けを2回することを2番かび、3回すれば3番かびなどと呼び、一般に4番かび以上のものを『本枯節(ほんかれぶし)』と呼ぶそうです。
「本枯節は、乾燥とかび付けを繰り返すことで、固さ、香り、風味、旨味などが増していきます。なかでもかび付けによる渋酸っぱい独特の香り、豊かな風味が特徴です。好みもありますが、私はお吸い物や茶碗蒸しのようなだしの風味を活かしたい料理には枯節が、お味噌汁や煮物などには荒節が合うように思います。また、関西では香りが強すぎない荒節を好んで使ったり、かつお節の代わりに、旨味が強く香りが弱いまぐろ節を使ったりする料理人も多いようです」
では、一般家庭でも荒節と本枯節を使い分けるのがいいですか?とうかがったところ「荒節であっても、枯節であっても大切なのは鮮度です。どちらも新鮮なうちに使い切れるのであれば二種類を上手に使い分けるといいでしょう。でも、一般のご家庭であれば、どちらか好みのほうを一種類決めて、なるべく早めに使い切るほうがいいかもしれませんね」とのことでした。
また、かつお節には、さまざまな削り方があり、その名称はメーカーによって異なります。一般に薄く大きく削られた平削りや、細削りのかつお節は、だしと料理のトッピングの両方に用いることができ、厚削りと呼ばれる厚く削られたタイプは、煮立ててだしをひくもので、うどんやそばのだしなど、濃くパンチのあるだしをひくのに適しています。糸削りと呼ばれる細い糸状に削られているものは、トッピングとして用います。それぞれ料理に合わせて、削り方も選んでください。
袋入りのだしパックなどのパッケージを読んでみると、かつおのほかにも雑節と呼ばれるほかの魚の節が入っていることがあります。そもそも “節”とは何をさすのでしょうか。
「かつお節をはじめとする節類は、魚を燻蒸したもののことを言います。かつおのほかに、宗田かつお節やイワシ節、アジ節、サバ節などがあります。商品によっては、かつお節にこうした異なる節を加え、独自の風味を生み出しています。たとえば、宗田かつお節の旨味は、うどんやそばなど濃く、ややくせの強いだしをひくのに適しています。イワシやアジ、サバの節なども同様に、それぞれのだしの味わいをかつお節と合わせることで、より旨味もえぐみも強い濃いだしをひくことができるのです」
久保さんに教えていただいたように、かつお節商品のパッケージには、「本枯節」「3番かび」「宗田かつお」など、さまざまな言葉が並んでいます。削りがつおや、だしパックなどを購入する際には、そうした言葉にも注目し、料理に合わせた好みのだしを選んでみてください。
料理研究家
料理研究家
料理好きが高じて、高校生の頃から京都の老舗料亭「たん熊北店」にて学ぶ。同志社大学英文学科を卒業後、辻調理師専門学校に入学。調理師免許、ふぐ調理免許を取得。辻調理師専門学校出版部を経て、東京の出版社で料理書の編集に携わった後、独立。
現在は、料理製作、スタイリング、レストランのメニュー開発、テーブルコーディネート、編集など、食に関してジャンルを問わず精力的に活動中。
著書に『美しい盛り付けの基本』(成美堂出版)、『美しい一汁二菜 ―「おいしい」と「きれい」には理由がある』(河出書房新社)『きちんと、野菜の小鉢 ちょっとしたコツで「もう1品」がぐっとおいしくなる!』(河出書房新社)、『きちんと、おいしい昔ながらの料理』『旬の味手帖秋と冬』(ともに成美堂出版)などがある。