発酵を訪ねる

日本の伝統文化「発酵」を新スタイルで!
「Kouji&ko」が目指す発酵の未来とは?

2018/02/01

2016年11月に新宿高島屋8階にオープンした発酵デリカテッセン カフェテリア「Kouji&ko(コウジアンドコー)」。ショーケースに並ぶメニューはどれも彩り鮮やかでおしゃれなものばかりで、発酵をテーマにしたカフェと思わずに来店されるお客様も多いそうです。

カフェのほか、惣菜テイクアウト専門店やオリジナルの商品開発なども展開する「Kouji&ko」がコンセプトに掲げる、「ヌーベル ハッコー(Nouvelle Hakkou)」に込めた思いを、全メニューの開発を手掛ける大島今日(おおしま きょう)シェフに伺いました。

日本人の健康は「発酵」が支えていることを実感

日本に古くから伝わる発酵文化。その伝統を大切にすると同時に、発酵食品といえば和食といった既存のイメージにとらわれないおいしさを生み出していくという、新しいスタイルの発酵=「ヌーベル ハッコー(Nouvelle Hakkou)」をコンセプトにしたお店が「Kouji&ko」です。

お店には発酵学者の小泉武夫氏によるアドバイスのもと、有名レストランで料理長を歴任した大島今日シェフが開発したメニューや商品がズラリ。イタリアンのシェフとして長年活躍していた大島シェフが、日本の発酵文化を意識したのは、今から約7年前だったといいます。

「Kouji&ko」シェフの大島今日さん。

「能登のほうに旅行へ行った際、お土産に『へしこ』を買ってきたんです。へしこというのは、魚の塩漬けを、さらにぬか漬けにしたものなんですが、サバやブリ、イワシなどいろいろある中、僕はフグの卵巣のへしこを買いました。食べてみたところ、アンチョビに似てると思ったんです。それどころか、アンチョビよりも複雑な旨みを感じました。アンチョビの場合、原料はほぼイワシで、それを塩漬けして発酵させた物になりますが、へしこはぬかで漬けているのでアンチョビよりも舌の上で感じる味がすごく多いんです。さらに、ぬかによって栄養価も上がるので、これはイタリア料理の中にも取り入れられるんじゃないかと思って」

それをきっかけに、アンチョビやカラスミの代わりに日本の発酵食品を使う試みを続けていたという大島シェフ。勉強のために資料を読み漁る中で小泉武夫氏と出会い、ますますその魅力にはまっていったそうです。

「でも、当時は正直、今のように発酵食品が注目されるとは思っていませんでした。ただ、食べ物以外の分野はすでにすごく発展していて、微生物の働きを利用した医薬品や化粧品はたくさんありましたからね。でも、そういう意味では発酵食品って『食べる薬』なんです。発酵に関する勉強を続けていくと、麹という物がなければ今の日本文化はないだろうなってことがわかります。『医食同源』といいますが、やっぱり日本人に合っているかどうかはすごく重要で。お酒も醤油も味噌も、すべて麹から始まりますから。勉強すればするほど、日本人の健康を支えているのは発酵なんだなと思うんです」

おいしく食べて、健康になってほしい

「Kouji&ko」のショーケースに並ぶメニューは、見た目には発酵食品が使われているとはわからないほどおしゃれ。そこには、大島シェフのこんな思いがあります。

「今の若い人の中には、発酵食品が苦手という方も結構いらっしゃるんです。それもそのはずで、昔は食卓に必ずといっていいほどあったお漬け物が並ばなくなったり、ぬか床を持っているご家庭も少なくなっていると思いますから。お味噌汁が苦手という若者の話もよく耳にします。だからこそ、自然と発酵食品が食べられるメニューを作ることができたらと思うんですよね。気付かないうちに食べていただくというのが一番の理想。実際、当店に来てくださるお客様は、発酵食品を目当てにいらっしゃる方もいますが、そういったことは関係なく来てくださる方も多いです」

すべてのメニューに、「おいしく食べて健康になってほしい」という思いを込めていると話す大島シェフ。発酵ドレッシングをかけた新鮮なグリーンサラダや、発酵食品の自然な甘みを活かしたスイーツやドリンクなど、一つひとつの料理に施された工夫は女性にとってうれしいものです。

「発酵食品は、食物繊維といっしょに摂ることがとても大切なので、メニューにはできるだけたくさんの野菜を使っています。腸に食物繊維が入り、さらに善玉菌が増えることで腸内フローラのバランスが整うんですよ。また、腸だけでなく体の調子を整えてほしいという思いもあるので、なるべく動物性脂肪は使わないことも意識しています。ベジタリアンやビーガンの方にも安心して食べていただけると思います」

「デリプレートセット 1,188円(税込)」はグリーンサラダにお好きなデリ2品、
+216円でドリンクor「本日のスープ」が付けられます(ランチタイムは無料)。
上のデリプレートには、人気の「ロースト野菜の甘塩麹だれ」(左)と
「塩麹とヨーグルトのタンドリーチキン(もも)」(右)、スープは「塩麹のミネストローネ」。

スイーツも充実!ジェラートは新宿高島屋のみで販売(2018年1月現在)。

日本が誇る「発酵」という伝統を広く伝えていきたい

「Kouji&ko」のデリカテッセンカフェテリアが新宿高島屋にオープンして約1年。今では新宿高島屋、玉川高島屋にも惣菜テイクアウト専門店を展開するなど、進化を遂げています。

「今お店で使っている麹は、すべてオリジナル。お醤油やお味噌も厳選した物を使っています。また、カフェで提供している約10種類のメニューは、毎月少しずつ旬の食材を取り入れて替えていますし、テイクアウト専門店の方は新宿店と玉川店で若干異なるメニューを展開しています。今は野菜を中心とした物が多いですが、今後は発酵によって旨みと栄養価が上がったお肉やお魚のメニューも増やしていく予定です」

「Kouji&ko」オリジナルの甘酒や巨峰のレーズン発酵バターサンド、そのほか碁石茶などセレクト商品も販売。

「米酢と玉ねぎのフレンチドレッシング」など、オリジナルのドレッシングは全5種類!

そして、目指すは世界進出――

「まだまだこれからの話ではあるんですけどね。海外に出る前に、まずは日本国内にもっと店舗を増やせればと思いますし、現在使っているオリジナルの発酵ドレッシングをはじめ、開発中のアイテムがいろいろあるので、それらを自社でネット通販できたらと、構想として考えています。最終的には海外も視野に入れ、『Kouji&ko』を通して、発酵という日本が誇る伝統を広く伝えていけたらと思っています」

発酵デリカテッセン カフェテリア Kouji&ko

住所:
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2 新宿高島屋8階
TEL:
03-5361-1111(代表)
営業時間:
月曜日~木曜日・日曜日 10:00~20:00、
金曜日・土曜日 10:00~20:30
定休日:
新宿高島屋に準ずる
URL:
http://foodandpartners.co.jp/koujiandko/