発酵を訪ねる

目指すは「発酵のフラッグシップショップ」―
「Hacco’s Table」がこだわる
本物志向の発酵メニューに込めた思いとは?

2018/02/15

2017年10月に東京・浅草にオープンし、話題となっているレストランが「Hacco’s Table(ハッコーズテーブル)」です。免疫学者の藤田紘一郎氏をアドバイザーに迎え、その店名のとおり「発酵」にこだわった料理を提供。自家製の塩麹、醤油麹、甘酒といった発酵調味料をふんだんに使用した料理は、和食をベースにしながらイタリアや韓国、スペインといった各国料理にアレンジされてバラエティー豊富です。

「発酵食を食べる」まえに、シンプルにおいしくて目にも鮮やかな料理がいただける「Hacco’s Table」。そのオープンに至った思いを、同店を運営する主宰の石島誉士(いしじま たかし)さんにうかがいました。

カスピ海ヨーグルトによる自身の体質改善が原点

「Hacco’s Table」では、日本が誇る伝統食の中でも「発酵」に重点を置き、「私のカラダが喜ぶ、菌のある生活。」をコンセプトにしたメニューを提供しています。自家製の発酵調味料や日本各地を巡って探し出した食材など、たくさんのこだわりと愛情が込められたメニューばかり。そこまでの思いを持つに至ったのは、立ち上げに携わった石島さん自身の体験に基づくものだといいます。

「実は僕自身、小さいころからアレルギー体質だったんです。静岡の実家で暮らしていたときは、父が寿司職人だったこともあって和食中心の食生活を送っていたのですが、18歳で上京して一人暮らしを始めた途端、顔が真っ赤に腫れるくらいのアレルギーが出てしまって。当時は手軽なファストフードやコンビニ弁当が当たり前な上、制作会社で働いていたので生活リズムもバラバラ。若いときは何でもいいだろうと思っていたんですけど、やっぱりそういう状態を続けていると体質がどんどん悪くなっていくんですよね。そんなとき、カスピ海ヨーグルトをすすめられて、種を分けてもらって自分で培養しながら食べるようにしたんです。継続が大切ということで、それを8年続けました。すると、どんどん体質が変わって、アレルギーが出なくなったんです」

「Hacco’s Table」主宰・石島誉士さん。

この経験をきっかけに、自分の食生活を見直すようになったという石島さん。この時期、さらに「Hacco’s Table」の立ち上げにつながる新たな出会いがありました。

「東京医科歯科大学の藤田紘一郎名誉教授との出会いが大きかったです。藤田教授には『Hacco’s Table』のアドバイザーも務めていただいているのですが、藤田教授は昔から発酵食の良さを広く紹介している方で、僕も教授の著書を読んで感銘を受けました。人が持っている菌は、ヨーロッパ人に合う菌、アメリカ人に合う菌、日本人に合う菌と、人種によって違うそうで、日本人に合うのは、やっぱり発酵食だと。調べていくと、日本には各地にいろいろな発酵食がある。それをしっかり伝えていきたいという思いから、『Hacco’s Table』をオープンすることにしたんです」

どれを食べても発酵菌がとれる料理は
「本物」の調味料・食材を使用

「Hacco’s Table」の料理には、「カラダが喜ぶ菌」として麹菌・乳酸菌・納豆菌・酵母菌・酢酸菌が積極的に取り入れられています。特に料理に使う調味料は、オリジナルで作るほどのこだわりよう。

「塩麹、醤油麹、甘酒は自分たちで作っています。それをサラダのドレッシングなど、いろんな料理に使っているんです。特に、『恋する豚 肩ロース 塩麹漬け厚切りポークジンジャー』は、まずお肉を自家製塩麹に漬け、1晩以上寝かせてから焼いています。さらに、ソースには醤油、生姜、白ワインのほかに甘酒が入っていますし、お肉の下に敷いてあるマッシュポテトは、ポテトと牛乳、塩のみで仕上げているから低カロリー。ほかにも、自家製の水キムチを使った『水キムチのガスパチョ』や『自家製リコッタチーズと味噌のカナッペ』、赤味噌と酒粕を合わせた『チリコンカンとチーズのオーブン焼き』など、どの料理を食べても発酵菌がとれるようになっています」

「恋する豚 肩ロース 塩麹漬け厚切りポークジンジャー」。
塩麹で漬けているだけあってとても柔らかく、生姜の風味も効いています!

「ぬか漬けのスティック スパイスを添えて」は、紅芯大根や京都金美人参などのぬか漬けを、
カルダモンやクミンといったスパイスを付けていただきます。食事の始めに食べることで食欲増進につなげ、
楽しい宴の中でカラダが喜ぶ食事になるように…という思いが込められています。

また、食材の中には石島さんの出身地である静岡産の物や、各地から取り寄せた厳選の一品も。

「醤油は静岡県の掛川にある、江戸時代から続く栄醤油醸造の物を、たまり節も同じく静岡産の物を仕入れています。やはり自分が幼いころから慣れ親しんだ食材も使いたくて。このほか、発酵文化が盛んな石川県から仕入れた魚醤、鹿児島県・枕崎で作られているかつお節など、現地まで足を運んで自分が納得した物だけを使うようにしています。発酵食も大切ですが、それと同じくらい、料理として『食べておいしい』ことが大切だと思うので。なるべく『本物』を使ったメニューを提供したいんです」

全国各地から集めた食品のほか基礎化粧品も販売。

「発酵のフラッグシップショップ」として機能させたい

オープンから間もないにもかかわらず、地元・浅草に住む方々を中心に常連客も増えているといいます。「発酵食は続けることが大切」と語る石島さん、それを実践してもらうために、お店としてさまざまな試みを計画しているのだとか。

「アドバイザーの藤田教授によると、食事をする際には、まず野菜で食物繊維をとって胃に粘膜を張ってから、肉や魚料理を食べるのがいいそうです。今でも料理を提供するときにはそうしたアドバイスをさせていただいているのですが、ゆくゆくは藤田教授が提案するセットメニューというのも提供する予定です。また、発酵をテーマにしたイベントも定期的に行っていて、こちらは子供から20代、30代、40代…といった年代別のライフスタイルの提案も今後できればと思っています。今は『抗菌社会』だと感じていますが、体にいい菌もあるということを知ってほしい。また、体質改善という意味では、続けることが最も重要ですから、無理のない続け方というのも伝えていきたいです。そのためのフラッグシップショップとして、この『Hacco’s Table』を機能させていくのが夢ですね」

Hacco’s Table

住所:
東京都台東区花川戸2-9-10
TEL:
03-6231-7855
営業時間:
ランチ 11:00~15:00、ディナー 17:00~22:00
定休日:
火曜日
URL:
https://haccos.com/