発酵に恋して。

世界を巡る発酵旅人・寺島あかね[後編]―
みんなでワイワイ味噌づくりを学ぶ、
アットホームなワークショップをレポート

2018/05/17

世界を巡る発酵旅人・寺島あかね[後編]―みんなでワイワイ味噌づくりを学ぶ、アットホームなワークショップをレポート
世界を巡る発酵旅人・寺島あかね[後編]―みんなでワイワイ味噌づくりを学ぶ、アットホームなワークショップをレポート

私たちの食卓に欠かせない日本古来の発酵食品、味噌。その作り方を広めるために国内外でワークショップを行い、味噌を中心にしたさまざまなプロジェクトを企画する発酵旅人・寺島あかねさんの活動ぶりをお届けする特集企画の後編は、実際に寺島さんが主催する味噌づくり教室をご紹介します。編集部スタッフも実際に味噌づくりを体験しましたので、その模様をレポート!

下準備は大量の大豆を煮出すところから

我々取材班が到着したときは、味噌づくり準備の最終段階。大きな寸胴でこの日使う大豆がグツグツと茹でられている最中でした。味噌づくりには、大豆を24時間浸水させてから茹でる工程が必要。味噌に適した大豆のやわらかさは親指と小指で挟んでつぶれるくらいということで、差し水をしながら3~6時間煮た状態が良いそうです。多くの人が参加するワークショップともなると大豆もまた大量で、今回は8kgの大豆を調達したのだとか。

大豆をかき回す菜箸(?)もビッグ!

大豆は、親指と小指で挟んで簡単につぶれるくらいのやわらかさがちょうどいいそう。

大豆は種類によって風味がかなり異なること、発酵ゲストハウス耳日との出会い(詳しくは寺島さんインタビューで)、海外でのワークショップでは原材料を現地調達していることなどを伺っているあいだに準備完了。ちょうど良いタイミングでこの日参加する方々が到着し、ついにワークショップがスタートしました。

「3.11」に思いを馳せて

ワークショップに参加したのは14人。そのうち3割ほどは男性で、さらに耳日のオーナーご夫妻と2人のかわいいお子さんたちも加わります。幅広い世代の人たちが耳日の居間に集まり、畳の部屋ということもあって早速アットホームな雰囲気!

まずは、寺島さんが前の年に作った味噌による味噌汁(絶品でした!)とお弁当で腹ごしらえをしつつ、寺島さんを含めた参加メンバーの自己紹介タイム。

寺島さんが前年に作った味噌。

各自がお椀に一人分の味噌を入れ、お湯を注ぎます。

この日は、東日本大震災から丸7年にあたる3月11日だったこともあり、それぞれが2011年の「その時」にまつわる話題も交えてお話ししました。寺島さんにとっても震災のあった2011年は、自身の食への考え方を見直し、発酵に強い興味を抱くことになった転機の年だったと前回のインタビューでも語ってくれています。食事という「命をいただく行為」を改めて感じながら、味噌づくりに入ります。

おいしい味噌づくりに欠かせない、
骨の折れる大豆つぶし

まずは、3種類の大豆を食べ比べ。本日の味噌づくりで使う山形の地大豆「タチユタカ」のほか、「秘伝豆」(こちらも山形産)と「津久井在来大豆」という大豆を試食しました。

「日本には古くからいろいろな種類の大豆があるんです。そういった在来種を大事に育て、未来に残していきたいと考えている農家さんがいることを知っていただければうれしいです」と寺島さん。

普段、大豆の種類をあまり意識することはなかったので、見た目も風味も甘さも異なる3種の大豆があることにまず驚きました。続いて、これから使用する味噌の原料である、米麹と塩も味見。毎日のようにお世話になっている米麹ですが、そのまま味わうのは初めてでした。甘みのある素朴なお味です。

寺島さん手描きの味噌レシピ。とてもわかりやすいので、次の年からは自宅でも作れそうです!

味噌づくりの材料。(左から)米麹、大豆、塩。

そして、意外とたいへんだったのが、あらかじめ寺島さんが準備してくれていた茹で大豆をつぶす作業。適度に冷ました大豆をビニール袋に入れ、ペースト状になるまで丁寧につぶしていくのですが、大雑把にやるとどうしても粒が残ったり袋が破けてしまったりします。ある程度、大豆がつぶれてからが勝負。袋をモミモミしながらつぶれていない大豆を見つけ、地道に一粒ずつつぶしていきます。

味噌を1kg仕込むための大豆を袋に入れて量ります。

徹底的に大豆をつぶしていきます。

会場となった発酵ゲストハウス耳日の子供たちも、たっぷり1年分の味噌づくりをお手伝い。

しかし、そうしているあいだも参加者の皆さんとのお話に花が咲きました。寺島さんに大豆のつぶれ具合をチェックしてもらうのですが、おしゃべりに夢中で「合格」が出るまで結構時間がかかってしまいました…。

寺島さんチェックはなかなかきびしいのです。

「おいしくなぁれ」と願いを込めて

つぶした大豆に、手でほぐした麹と塩を加えて、よく混ぜ込みます。このときも、やはりビニール袋に入れて丁寧に。ここでよく混ぜ込まないと、お味噌の出来映えにも響いてくると聞き、鎌倉の「発酵盆唄」をBGMにして、皆さん熱心に取り組んでいました。

仕上げに、寺島さんが昨年作った味噌を「おいしくなぁれ」と念じながら
小さじ一杯加えて混ぜれば、仕込み味噌の工程は終了。


おいしくなぁれ!魔法のひとさじ。


魔法の味噌(こちらも前年に作った物)を味見。

最後に、各自で用意した容器に仕込み味噌を入れ、平らな状態にしたらふちに振り塩をします。空気が入らないよう全体にぴったりとラップを敷けば完了!(※)味噌が食べ頃になるには、最低でも半年はかかるそうなので、うまく発酵してくれることを願うばかりです。

※その後、自宅に持ち帰り、味噌の上に重しをするなどの作業がありました。

味噌を空気が入らないように敷き詰め、ふちに土手を作って塩を振ります。


空気が入らないように容器の隅までぴったりとラップを敷きます。さらにこの上に重しをするのです。

オリジナルの「発酵人形劇」で、
味噌が発酵するしくみを解説

味噌づくり終了後はおいしいロースイーツとドリンクで一息つき、寺島さんオリジナルの「発酵人形劇」を鑑賞しました。麹、大豆、酵母、乳酸菌、塩をキャラクター化した手づくり人形を使い、これらがどうやって味噌を発酵させていくかをストーリー仕立てで説明してくださいました。

寺島さんの個性あふれるお話しぶりが、みんなの笑いを誘います。おかげで、なんとなくの知識しかなかった発酵のしくみも頭に入ってスッキリ!これまで知らなかったことを学び、さまざまな方々とふれ合いながらの味噌づくり。密度の濃い時間を過ごすことができました。

最後にみんなで作り方をおさらい。

寺島さん曰く、「同じ原料で作っても人によって、環境によって味噌の出来は全然違います。たまり醤油ができることもあるし、変なカビが生えてしまうことも。気になることがあったら、いつでも質問してください」とのこと。みんなでいっしょに作った味噌が、それぞれの家で発酵していくことで、どのような仕上がりになるのかがとても楽しみになる――むしろ、またみんなで味噌の出来具合を共有したいと思えるほど、心温まる貴重な機会でした。

寺島あかね(てらしまあかね)(発酵旅人/「みそのわプロジェクト」代表)

寺島あかね(てらしまあかね)(発酵旅人/「みそのわプロジェクト」代表)

寺島あかね(てらしまあかね)(発酵旅人/「みそのわプロジェクト」代表)

1986年、東京生まれ。2014年にOLを辞めてイギリスへ語学留学。思想家サティシュ・クマールに影響を受け、社会を良くするアイディアを学ぶ。そこで得た哲学を体験するため、ヨーロッパや北欧各地、ニュージーランドなどでエココミュニティや畑のある暮らしをする⼈、地球を⼤切に思う⼈たちを訪ねる旅を続ける。その旅の中、そして日本国内で味噌づくりの楽しさを伝える一方、味噌を「防災食」とする取り組みも行っている。


「発酵に恋して。」の他の記事を読む

To Top

このサイトについて

https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/
お気に入りに登録しました