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発酵を訪ねる
大自然が育む豊かな食文化が根付く長野県・大町(後編)―地元で採れた食材を堪能できる注目のお食事処
2018/08/23
発酵を訪ねる
2018/08/23
前回ご紹介した、北アルプスの麓、長野県・大町市にあるマルコメ株式会社の天然醸造味噌蔵「美麻(みあさ)高原蔵」を訪れた後、絶品のご当地グルメを味わえる素敵なグルメスポットに出会うことができました。
後編となるこの記事では、せっかく美麻高原蔵を訪れたなら必ずチェックしてぜひ足を運んでもらいたい名店2つをご紹介します。
「美麻高原蔵」から車で約6分。民宿を改装してできたという趣のある一軒家「山品」は、手打ちの信州そばを味わえる創業48年の老舗そば屋です。ただし、人気店のため、そばは売り切れ次第終了。お昼過ぎに訪れる際は、電話で確認してからの来店がおすすめ。店内はお座敷で、昔懐かしいアットホームな雰囲気。子ども連れのファミリーやご高齢の方も足を運びやすいと思います。
女将さんの竹折房子さん曰く、人気メニューは「もりそば」と「うす焼き」。もりそばは、自家栽培したそばの実も含まれる石臼挽きした地粉を、山から流れる清水で打った香り高い手打ちそばです。ちなみに、よりそばの風味をしっかりと味わいたい方には「十割そば」も人気なのですが、こちらは数量限定販売なので問い合わせが必要とのこと。
そして、うす焼きというのは、この地方で昔からおやつとして食べられていた郷土料理。そば粉で作ったピザのような生地に、甘めの味噌を塗り、その上にネギを散らした一品です。モチッとした食感で、ちょうどおやつとおかずの中間といった感じの、食べ応えのある物でした。なお、こちらの味噌はマルコメ製の物を使用しているそうです。
そのほか、同じく信州の郷土料理で、昭和天皇が好んで召し上がっていたといわれる「蜂の子」「イナゴの佃煮」なんていうメニューも。なじみのない方は、名前を見ると「えっ…」となってしまいそうですが、実際は意外と食べやすく、酒のアテとしてもアリなおつまみでした。
「このへんは高冷地で火山灰土、そのため野菜とおそばはおいしく育つんですよ」と女将さん。何を頼もうかと迷った際は、気軽に声をかけてみると笑顔で答えてくださいますよ!
「山品」女将 竹折房子さん
長野県大町市生まれ。元々民宿だった建物を改築し、ご主人とともにそば屋を開業。元気な笑顔と明るいキャラクターに癒やされます。
室町時代から大町に居を構える栗林家の邸宅として、近年まで代々住まわれていた築120年の趣あるお屋敷に足を踏み入れると、明治・大正時代にタイムスリップしたような非日常的な空間が広がる「創舎 わちがい」。和室と洋間には、至る所にアンティークな家具や小物が置かれています。これらは、栗林家の倉庫に眠っていたたいへん貴重な物だそうで、美術短大出身の工芸作家であったオーナー・渡邉充子さんの手によって、センス良く配置されているのが印象的。
いただけるお料理は、すべて地食材を使った大町市の郷土料理。渡邉さんのご主人が育てた無農薬野菜をふんだんに使った、体にやさしいメニューが多いのが特徴です。季節によって変わる小鉢と、濃厚な味わいのおぼろ豆腐、地粉を使ったオリジナルの生細麺「わちがい ざざ」(信州では、うどんやそばなど麺類を総称して「ざざ」と呼ぶそう)はぜひ味わっていただきたい!
「茂吉膳」。左上から時計回りに、えご寄せ 甘味噌添え(「えご」とは、「えご草(えごのり)」が原料の海藻食品で、信州の郷土食)、ななほまれ 恵みの福袋(「ななほまれ」は、大町市で試験栽培されている大豆)、寒天 菊芋さらだ 柿そーす、わちがい ざざ、おぼろ豆腐 こしあぶら添え、信州サーモン 菜の花オイルかけ、凍み大根 ステーキ。
※季節によってメニューは変更になります。
また、2階のお座敷はギャラリースペースとなっており、渡邉さんの「地元のアーティストを応援したい」という思いのもと、オブジェやインテリア小物、洋服やアクセサリーなど、数々のアーティストの作品を随時展示・販売しています。
さらに館内には、古文書や歌人・斎藤茂吉の作品なども飾ってあり、歴史好き・文学好きは必見!おいしい料理に舌鼓を打ちながら、ゆっくりと時間が流れる憩いの空間と、ここでしか出会えない一期一会のアート作品を堪能してください。
なお、わちがいのかたわらには、「男清水(おとこみず)」と「女清水(おんなみず)」と呼ばれる2つの湧水があり、合わせて飲むと縁結びや夫婦円満のご利益があるといわれています。これらをくむためのペットボトルをいただける素敵な心遣いも、わちがいの魅力。お店に寄った際は、男清水と女清水をくむのをお忘れなく!
「創舎 わちがい」オーナー 渡邉充子さん
1956年長野県大町市生まれ。女子美術短期大学専攻科卒業。日本現代工芸美術展に出展。若一王子神社祭礼流鏑馬衣装の製作など、30代までは工芸作家として生きるが、目の手術をきっかけに作品作りを断念。1997年にいーずら大町特産館事業協同組合に事務局長として勤務。2000年には株式会社創舎を設立して代表取締役に就任している。
「山品」と「創舎 わちがい」は、いずれも落ち着ける空間で絶品の郷土料理を味わえる素敵なお食事処。
自然たっぷりの大町を訪れた際は、ぜひお立ち寄りください!