発酵を訪ねる
頼れる「街のでんきやさん」を目指して―KURA_THINKが提案する新しいライフスタイル
2019/02/14
発酵を訪ねる
2019/02/14
神奈川県藤沢市のパナソニック工場跡地を利用して開発中の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」。将来的には約1,000世帯が暮らす一大タウンになるといいます。
その一角に立つ「湘南T-SITE」内に、2018年4月、「KURA_THINK(クラシンク)」が誕生しました。こちらは、大手家電メーカーのパナソニック株式会社が運営しており、家電を販売する以外にもコミュニティスペースの提供、食・健康・美容に関するイベントの実施などに取り組んでいます。
ものづくりのエキスパートである企業がこうした新しい試みを行う背景には、どういった思いが込められているのでしょうか。KURA_THINK店長の根田朝弘(こんだ ともひろ)さんにお話を伺うと同時に、KURA_THINKで開催された、マルコメの発酵マイスター・尾田春菜(おだ はるな)による甘酒講座の様子もレポートします。
店内に一歩足を踏み入れると、ずらりと並ぶパナソニック製品。ここまでは一般的な販売店と同じですが、KURA_THINKには、それとは少し異なる空気が流れています。それは例えば、店内に漂うコーヒーの香り、あるいは「試食OK」という文字が添えられた、ホットプレートの上で湯気を立てている出来立ての料理――これらは、一見すると家電の販売とは無関係のように思えます。
その謎を明かす前に、まずはKURA_THINKがどういう思いのもとで誕生したのかについて、根田店長に聞いてみました。
「コンセプトに『街のでんきやさん』を掲げています。なじみのない方も多いと思いますが、地域の電気屋は物を売って終わりではなく、アフターフォローをはじめとするきめ細やかなサービスを行っているんです。各土地になくてはならない存在である一方、経営する側も利用する側もご年配の方が多いという現状があります。
KURA_THINKは、家電メーカーとして、特に30代、40代の若い世代に向けてアプローチできることはないかということで始動しました。さまざまなサービスを通して、頼れる『街のでんきやさん』になることを目指しています」
KURA_THINKという店名は、「暮らし(KURA)」と「考える(THINK)」をミックスした造語で、その2つの単語をつなぐ「_(アンダーバー)」が、「場」を示しているとのこと。店舗では「相談の場」「憩いの場」「集いの場」という3つを柱としたサービスを行っているといいます。
「KURA_THINKの最大の特徴は、店内に置いてあるすべての商品を、実際にお試しいただけるという点です。家電の多くは使ってみないとわからないこともありますから、ご購入の前に試せるというのは大きなメリットだと思います。
もうひとつ、ご好評いただいているのが、『肌チェック&美容家電定額利用サービス』です。特に美容家電定額利用サービスは、総額約22万円の最新美容家電6商品をご自由にお使いいただけるもの(要予約/1日1回あたり60分)で、毎日来られるお客様もいらっしゃいます。
ほかにも、パナソニックのスマートコーヒー焙煎機 The Roastで焙煎した豆を使い、沸騰浄水コーヒーメーカーで淹れたコーヒーがお楽しみいただけるカフェスタンドがあったり、専門家の方を招いてのイベントを開催したりと、家電の購入以外にもお店に足を運んでいただけるような試みを行っています」
オープンから間もなく1年。最初のころは「何のお店かわからない」という声もあったとのことですが、少しずつ認知度や利用度も上がってきたそうです。
「特に食に関するイベントやセミナーには、多くの女性のお客様にご参加いただいています。『甘酒講座』を開催していただいたマルコメさんは、前回行った味噌づくりのセミナーでも、市販の物ではわからない原材料が一つひとつ明快なので安心できると、ご好評をいただきました。
やはり、我々家電メーカーは、どうしても商品の説明までで終わってしまいがちなんですよね。けれども、マルコメさんなど食の専門の方をお招きすることによって、商品のその先…例えば甘酒づくりでしたら、家電を使った甘酒の作り方のほか、甘酒の効果・効能といったところまでご提案することができます。家電+αの体験をしていただくことが、暮らしを考えるきっかけになったらうれしいですね」
「電気屋は、お客様に喜んでもらえて、お金をいただけるすばらしい仕事」
実際、根田店長もKURA_THINKでお客様とじかに接する喜びを感じているといいます。
「すごくうれしかったのが、あるときお客様がテレビのリモコンを持ってこられて、壊れたので見てくださいとおっしゃったんです。そのお客様には、この店がちゃんと『街のでんきやさん』であることが伝わっているんだなぁと思ってうれしくなったのと同時に、自信につながりました。
今後は、もっともっと皆さんに頼っていただけるようになるのはもちろん、みんなが集まって暮らしを考える場として、KURA_THINKブランドが世の中に広まったらいいなと思っています。そのためにも、量販店やネットショップにはない、さまざまな付加価値を提供していきたいですね」