発酵を訪ねる
毎日通いたくなる850(ハッコー)の店に―
「東京850 STAND」「東京850 PIT」がつなげる発酵の輪
2019/02/28
発酵を訪ねる
2019/02/28
東京屈指のビジネス街・赤坂に、発酵好きにはたまらないショップが2018年末にオープンしました。ひとつは、自家製ヨーグルトに無農薬玄米甘酒をブレンドした自家製発酵ドリンクを提供するジューススタンド「東京850 STAND」と、発酵定食やアルコールの入った発酵ドリンクなどユニークなメニューを展開する食堂「東京850 PIT」です。
隣り合っているこぢんまりとした両店舗は、文字どおり「850(ハッコー)=発酵」をテーマに、健康とおいしさを兼ね備えたメニューを提供しており、女性のみならず、男性も多く来店しているといいます。
今回は、この2つのショップを運営する株式会社東京発酵文化研究所のディレクター、久保河内さなえ(くぼこうち さなえ)さんに、両店のオープンに至る経緯や、メニューのこだわりについてお話を伺いました。
お店のことはもちろんですが、まず気になったのが運営会社である「東京発酵文化研究所」という企業。名前がとても印象的です。どういった経緯で立ち上がったのでしょうか?
「味噌の醸造元に生まれた弊社の代表が、味噌のような日本に古くからある発酵食品を、食品そのものだけでなく文化として国内外に発信していきたい、ということを目標に立ち上げました。東京発酵文化研究所という社名も、その思いから名付けられています。
『東京850 STAND』と『東京850 PIT』は、発酵をもっと身近に、手軽に生活に取り入れてほしい、発酵を取り入れたメニューでおいしく健康になっていただきたいという思いのもと、弊社がプロデュースする形でオープンしました」
「東京850 STAND」と「東京850 PIT」はどちらも明るい雰囲気で、女性一人でも入りやすいお店。「東京850 STAND」で飲めるドリンクは、見た目がかわいく、持って歩いても絵になります。
「『東京850 STAND』は、忙しくて時間のない方へ向けて、気軽に発酵飲料を取り入れていただけるようにとオープンさせたジューススタンドです。片手で飲めるので、『ながら腸活』にはぴったりですよ。
乳酸菌は、ビタミンなどと同じように体内に貯めておくことができないので、毎日取り入れることで腸内の善玉菌を増やすのが健康的な状態です。そのためには、高価なものだと続かないと思い、ワンコインで飲めるような価格設定にしています。
赤坂という立地もあるのかもしれませんが、男性の方のリピーターが意外と多いんです。来客される方の4割は男性。美意識の高い方や健康志向の方、また、残業続きで疲れている方やお酒を飲む機会が多い方にも好評のようです」
一方の「東京850 PIT」も、女性の一人ご飯にうってつけ。ランチはもちろん、ディナーも料理からドリンクまで発酵にこだわっています!
「『東京850 PIT』は、発酵食堂という位置付けで、特別な日ではなく日頃から利用していただけるような場所を目指しています。仕事帰りや買い物帰り、一人でさくっと食事をしたいときなどに気軽に立ち寄ってもらえたらうれしいですね。私自身が『あったらいいな』と思う物もメニューにしています(笑)。
また、お酒の発酵ドリンクも置いているので、ちょっと一杯飲みたいときにもご利用いただけますよ。おすすめは『発酵つぶつぶレッドアイ』。発酵トマトの角切りを使ったレッドアイ(ビールとトマトジュースのカクテル)なのですが、ちょっと変わった食感と風味が楽しめます」
以前、女性誌の編集者をしていたという久保河内さん。不規則な生活で体調を崩してしまい、日々の食事の大切さに気が付いた経験が、現在の仕事にも活かされているそうです。
「常に仕事に追われ、不規則なのが当たり前の生活をしていたせいでアレルギー体質がひどくなり、つらい思いをした経験があります。体に良さそうなことをいろいろ試しましたが、良い結果をキープするのは難しく、やはり付け焼き刃ではダメなんだと気付きました。
「今の自分の体を作っているのは、2ヵ月前に食べた物」という言葉がありますが、毎日の食事がいかに大切かということを実感したんですよね。そこで、体にいい発酵食品を、特別ではなく日常的な物として取り入れたいと思うようになりました。
忙しい生活や仕事をすぐに変えることはできなくても、食べる物は変えられますよね。私だけでなく店舗のスタッフたちも、調子がいい、きれいになったと感じているようです。このように、『東京850 STAND』と『東京850 PIT』に通っていただくことで、がんばらなくても体をケアできる。そんな風に感じて、習慣にしてもらえたらうれしいですね」
両店舗とも、レギュラーのメニューに加えて、月替わりの限定メニューが提供されています。そんなメニュー開発はどのように行われているのでしょうか?
「シェフを交えた商品開発会や試食会は、頻繁に行っています。開発にあたっては、発酵食品と聞いてイメージする物を、良い意味で裏切りたいという気持ちが強いですね。
例えば『クランベリー甘酒』という限定メニューは、味も見た目もベリーそのもので、女性が好む見た目のかわいらしさという部分を大切にした商品です。こういった味だけではない部分でも、お客様に新たな発見を提供できたらうれしいですね」
さらに、料理やドリンクに取り入れられているオリジナル乳酸菌「TK-850」も気になるところ。
「『TK-850』は、体にいい物を自分たちの手で作りたいという思いから開発がスタートしました。味噌などの発酵食品はすでに作っていたので、次は元になる発酵菌の一つである乳酸菌を作ったということですね。
TK-850は、植物性の乳酸菌で細かいパウダー状なのですが、ドリンクで提供する場合は食感を楽しんでもらえるようタピオカ状にしたり、鍋であればコラーゲンと組み合わせて熱で溶けるボール状の物にしたりと、メニューによって形状を変えて提供しています。菌の数を設定できるというのもメリットですね」
店内での発酵ワークショップやセミナーの開催も予定していると話す久保河内さん。最後に、これからの「東京850 STAND」「東京850 PIT」の展望を伺ってみました。
「お客様に食事を楽しんでいただいた後は、ワークショップやセミナーを通じて知識や学びを深めてもらうなど、新たな発酵体験を味わっていただけたらと考えています。さらに、いっしょに楽しめる仲間とつながるきっかけの場になることができたらうれしいですね。私自身も発酵仲間を増やしたいです!
そうして良いつながりが生まれれば、発酵文化がもっと広がるんじゃないかなと期待しながら、さまざまなアイディアを形にしていきたいです」
「東京850 PIT」では、店内でいただけるランチやディナーに加えて、新たにテイクアウト可能な朝ごはんやランチボックスの販売がスタートしたばかり。ますます働く人たちの日常に寄り添うしくみが整ってきているようです。日々通うのが楽しみになる展開に、今後も期待したいですね!