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発酵を訪ねる
焼き鳥とワインと発酵。
ありそうでなかった新スタイルの焼き鳥店「源 MOTO」
2019/04/25
発酵を訪ねる
2019/04/25
東京・六本木にある「焼き鳥とワイン 源 MOTO」は、その名のとおり「焼き鳥」と「ワイン」をメインにしたレストランで、2018年にオープンしました。あまりなじみのない組み合わせだと感じる方がいるかもしれませんが、その相性は抜群。そして両者の味をつなぎ、互いを引き立て合うのに一役買っているのが「発酵」だといいます。
焼き鳥とワイン、そして発酵。ありそうでなかった新鮮なインパクトを与えるこれらの融合について、「焼き鳥とワイン 源 MOTO」の料理長であり、ソムリエの資格も持つ千𥧄健司(ちかま けんじ)さんと、同店を運営するデリシャス・リンクス株式会社営業本部の伊藤舞(いとう まい)さんにお話を伺いました。
多くの人が行き交う六本木交差点から徒歩5分。2018年11月にオープンした「焼き鳥とワイン 源 MOTO」は、そんな繁華街を抜けた路地にひっそりと佇む、知る人ぞ知るレストランです。
こちらで提供される焼き鳥は、部位によって異なる味や肉質が楽しめるよう、京都の「京紅(きょうあか)地鶏」や愛知の「錦爽(きんそう)どり」など、全国各地の地鶏や銘柄鶏を厳選。また、ワインは赤、白、ロゼ、オレンジが各種豊富に取り揃えられているのも魅力です。ひと頃には「焼き鳥といえばビール」が主流でしたが、「焼き鳥とワインは意外と相性がいいんです」と、料理長の千𥧄健司さんは言います。
「焼き鳥とワイン 源 MOTO」料理長 千𥧄健司さん。
「当店では全体のコンセプトとして『化学調味料不使用』を掲げておりますので、扱っているワインも自然派の物を取り揃えています。こうしたワインはフレッシュで優しい味わいが特徴で、鶏肉の味を邪魔しないどころか、お互いを引き立て合うんです。
もちろん、部位や味付けによって赤が合う、白が合うといった相性はありますが、当店ではフルボトルの半額でデキャンタ提供をしていますので、いろいろな種類のワインとともに焼き鳥を味わっていただきたいと思います」(千竈さん)
また、自慢の焼き鳥に関して、特に女性にとってはこんなうれしい工夫も。
「焼き鳥って、たくさん食べたくても1串が大きいとそんなに食べられないことがありますよね。なので、うちの店では少し小ぶりのサイズでお出ししています。また、部位によっても肉の厚さや切り方を変えていて、例えばもも肉であれば食べ応えがあるように大きめに、歯応えの強い砂肝は小さくして数を多めにするなど、1種類でも多く召し上がっていただけるように考えています」(千竈さん)
焼き鳥は、ただタレや塩というのではなく、エビと黒糖のタレや柚子胡椒、クミンなど、さまざまなフレーバーで楽しませてくれます。サイズも2口サイズ程度でちょうどいい。
「焼き鳥とワイン 源 MOTO」の焼き鳥は、ストップをかけるまで提供される「おまかせ(280円均一)」と、焼き鳥10品が組み込まれた「おきまり(5,500円)」でいただくスタイル。こうした千𥧄さんの工夫によって、多くの方が10数品をペロリとたいらげてしまうそうです。
お酒は、ワインにとどまらず種類が豊富。中でもオリジナルの「焼き鳥サワー」は人気で、タレや塩レモン、七味など、焼き鳥を連想させる味が楽しめる。写真は「タレ」。その正体はシェリー酒と本みりん。
そして、こちらのお店でもうひとつ欠かせないのが「発酵」という要素。入店後、席に着いて最初に運ばれてくるのが、6種類の前菜が美しく盛られた「季節の発酵総菜」のプレートです。
焼き鳥×ワイン×発酵。この方程式の魅力とは?伊藤舞さんによると、「発酵を取り入れることになったのは、ごく自然な流れ」だったそうです。
「実は当店の立ち上げにあたり、スペシャルパートナーとして日本を代表するワインテイスター/ソムリエの大越基裕(おおこし もとひろ)さんに入っていただいているんです。大越さんは現在、外苑前で発酵を取り入れたベトナム料理店『An Di』を営まれているのですが、そこでシェフを務めている内藤千博(ないとう ちひろ)さんにもお力添えをいただくことになったので、『発酵』というキーワードにたどり着くのはすごく自然な流れでした」(伊藤さん)
デリシャス・リンクス株式会社 営業本部 伊藤舞さん。
一方、千𥧄さんも、焼き鳥とワインをよりおいしく味わうためには、発酵による「酸味」が必要不可欠だといいます。
「やはり、ワインには酸味のある物が必要だと思うんです。鶏肉に酸味はありませんし、かといってチーズなど味が濃厚な物は、優しい味わいの自然派ワインには強すぎてしまいます。そうなったとき、発酵食品が持つ酸味が一番合うと思いました。
ワインを飲みながら、あるいはちょっと塩味が欲しいときに食べていただくなど、食事のアクセント、または箸休めになればという思いで6種類の『季節の発酵総菜』をご提供しています」
発酵白菜や紫キャベツのザワークラウトを漬けた瓶が店内にディスプレイされている。
そして、この「6種類」という数にもこだわりがあるのだとか。
「料理には、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5つの要素から成る『五味』という味覚の基本があります。『季節の発酵総菜』にはその5つそれぞれにあてはまる総菜が含まれているのですが、当店ではそれに『辛味』をプラスした6種類の総菜を提供しているんです。
この6種類は、季節によって一部メニュー内容を変更しています。焼き鳥屋というのはどうしても季節を感じにくいところがあるので、より季節が感じられるように野菜のメニューを工夫したいと思っています。この『季節の発酵総菜』は店のポイントのひとつですね」(千竈さん)
上が「季節の発酵総菜」。このときの内容は、青リンゴのピクルス(甘味)、紫キャベツのザワークラウト(酸味)、発酵白菜(旨味)、春菊の塩麹和え(苦味)、熟成鴨のなめろう(塩味)、いろいろ茸のキムチ(辛味)。下の焼き鳥は、皮で巻いたムネ(柚子胡椒)とささみ(エビと黒糖のタレ)。
このほか、大々的に打ち出してはいないものの、酒粕の甘さを利用したデザートを提供していたり、焼き鳥のタレには味噌や塩麹のほかに秋田のしょっつるを使っていたりと、随所に発酵を取り入れている「焼き鳥とワイン 源 MOTO」。さらなる飛躍を求めて、千𥧄さんにはこんな展望があるといいます。
「今は全国各地から寄りすぐった発酵食品をお出ししているのですが、ゆくゆくはすべて自家製の発酵食材をご提供できたらと思っています。鶏肉に関しても、いずれ熟成肉にも挑戦できたら…。
鶏肉も自然派ワインも飽きがこないので毎日召し上がっていただけますし、発酵食品も毎日食べたほうがいい物ですよね。そのように『毎日でも食べたい、毎日でも通いたい』と思っていただけるようなお店になっていけたらと思っています」