発酵マイスターに聞く!知って得する発酵豆知識

温度調節、保存方法は?
甘酒づくりの素朴な疑問

2019/05/09

さまざまな発酵食品の中でも、近頃特に注目を集めている甘酒。日常的に飲みたいから自分で作りたいという人も多いといいますが、そうなると難しそう…などという理由で躊躇してしまっていませんか?

そこで、今回は甘酒づくりにまつわる素朴な疑問や、最も簡単にできる米糀を使った甘酒の作り方を、マルコメ株式会社 広報宣伝課の発酵マイスター・尾田春菜(おだ はるな)が紹介します!

甘酒づくりの素朴な疑問に答えます!

最も簡単な甘酒の作り方…は最後に紹介することにして、まずは甘酒づくりにおいてありがちな、甘酒づくりにまつわる疑問について、尾田がお答えします!

【甘酒の疑問1】

甘酒には「粒あり」と「粒なし」がありますが、違いはあるのでしょうか?

「それは、お米の粒をつぶしているかいないかの違いだけで、栄養面は特に変わりません。特に、甘酒に慣れていない方は粒なしのほうが飲みやすいかもしれません。また、お料理に使ったり、スムージーに加えたりするときも、粒なしのほうが見ため的にもお米の粒が気にならず、キレイに仕上がるのでおすすめです。自分で作った甘酒は、ミキサーにかけると滑らかになりますよ」

【甘酒の疑問2】

作った甘酒はどのように保存すればいいのでしょうか?

「手作りの甘酒は、そのまま冷蔵保存すると23日しか持ちません。なので、出来上がった甘酒は一度加熱して、酵素を失活させてから保存することをおすすめします。そうすれば、冷蔵庫で1週間程度の保存が可能です。また、冷凍保存すれば1ヵ月程度は持ちます。その際、製氷皿などで小分けにして冷凍すると、使い勝手も良くて便利ですよ」

【甘酒の疑問3】

発酵食品は加熱すると菌が死滅してしまうそうですが、甘酒も加熱するとそうなるのでしょうか?

「甘酒に使われる麹菌の酵素は、お米のでんぷんをブドウ糖に変えるために働くもの。なので、熱によって麹菌や酵素が失活するというのは、甘酒が出来上がれば気にしなくて大丈夫です。むしろ、加熱せずに保存するほうが、雑菌が増殖してしまうので危険。安全に飲むためにも、ぜひ加熱していただきたいです」

【甘酒の疑問4】

作った甘酒をそのまま飲む以外に使うおすすめの方法は?

「一番いいのは、お料理に使うことですね。煮物などを作る際に、お砂糖やみりんの代わりに甘酒を使うと、甘みに加えてコクや旨みも出て、奥深い味わいになります。分量の目安は、元々入れる予定だったお砂糖やみりんといっしょで試してみて下さい。

また、ヨーグルトに入れたり、お味噌汁に入れたりするのもおすすめです。お味噌汁の場合、買ってきた味噌がちょっと辛口だった、なんていうときに甘酒を混ぜてあげると味がまろやかになるんですよ。飲む場合も、豆乳やトマトジュースと割ったり、紅茶や焙じ茶にスプーン1杯加えたりしてもおいしいです」

【甘酒の疑問5】

甘酒を飲むのに最適なタイミングというのはあるのでしょうか?

「基本的にはいつ飲んでも大丈夫です。ただ、甘酒には糖分がたくさん含まれているので、寝る前よりは、朝起きたときなど、『これから活動する』っていうときに飲むのがいいと思います。また、甘酒は胃腸に負担をかけずに栄養を吸収できるので、風邪など体調を崩してしまったときにもおすすめですね」

栄養面のメリットだけでなく、さまざまな活用法があるのも甘酒の魅力。ぜひ手作りの甘酒で、その魅力を体感してみてください!

自宅でできる最も簡単な甘酒の作り方

自宅で甘酒を作るのはたいへんだと思いますか?実は、ちょっとの手間でおいしい甘酒を作ることができるんですよ。

用意する物は、ご飯、米糀、水という甘酒の原料と、保温機能のついた水筒のみ。甘酒メーカーや炊飯器といった家電も、温度測定といった面倒な手間も一切なしの作り方を紹介します。

材料以外に用意する道具は、保温機能のついた水筒のみ。かき混ぜるため、口の広い物を使ってください。

  • [材料]
    炊きたてのご飯100g
    米糀150g
    常温の水200ml
  • [作り方]
    1. 水筒に熱湯を入れ、温めておく。
    2. アツアツのご飯に常温の水を入れ、よくかき混ぜる。
    3. 2に米糀を加え、まんべんなく混ぜ合わせる。
    4. あらかじめ温めておいた水筒に2を入れ、蓋をする。

    かき混ぜているあいだに温度が下がってしまった場合は、適宜電子レンジで温め直して。600Wで30秒程度。

    5. およそ2時間おきに全体をかき混ぜ、6〜10時間で完成。

    このくらいの塩梅になればOK。

「これだけ!?」と思いますよね。極端にいえば、「材料を混ぜて、置いておくだけ」。

とはいえ、失敗しないためにはいくつかのコツがあります。

「一番のポイントは温度で、60℃前後をキープするのが理想です。温度計がなくても、アツアツのご飯に常温の水を入れると、だいたい60℃になりますよ。

失敗してしまう理由は、温度が上がりすぎたり、下がりすぎたりするため。麹菌は70℃近くになると、酵素を出す働きが失活してしまいます。米糀に熱湯をかけたり、温め直すときに温度を上げすぎたりすると、それ以降は発酵しないということになってしまいます。

反対に下がりすぎてしまった場合も、死活はしないものの発酵が進まず、いつまで経っても甘酒になりません。ただ、温度が高すぎた場合と違って、低いときはそこからまた60℃くらいにしてあげれば復活します。保温容器に入れた後、2時間ごとのチェックでもし温度が下がっているようだったら、電子レンジや湯せんで温めてください」

電子レンジがあれば火をかける必要もなく、コツさえ押さえれば簡単にできてしまうので安心。保温機能のついた水筒は、なるべく一定の温度を長く維持できる物で作ると、より楽にできるでしょう。ぜひトライしてみてください!

発酵マイスター

尾田春菜(おだはるな)

発酵マイスター

尾田春菜(おだはるな)

マルコメ株式会社広報宣伝課所属。
発酵マイスターに加えてジュニアソイフードマイスターの資格を持ち、発酵食品関連のイベントなどにも多く登壇している。