発酵を訪ねる

店内で醸造した新鮮な「どぶろく」を!
神田の日本酒バル「にほんしゅ ほたる」

2019/06/06

店内で醸造した新鮮な「どぶろく」を!神田の日本酒バル「にほんしゅ ほたる」
店内で醸造した新鮮な「どぶろく」を!神田の日本酒バル「にほんしゅ ほたる」

「日本酒をもっと気軽に、もっと楽しく、もっとカッコ良く」をモットーにした神田の日本酒バル「にほんしゅ ほたる」。ここでは、お店で自家醸造した出来立ての「どぶろく」が楽しめます。

どぶろくとは、米と米麹などでアルコール発酵させてできる飲み物。見た目は韓国のマッコリに似た白く濁ったお酒で、ほんのり甘く、シュワシュワとした飲み口が特徴です。全国各地で作られている物ですが、東京都内で自家醸造したどぶろくを提供する店は「にほんしゅ ほたる」が初めて。 そこで、お店のオープンに至る経緯や作り立てのどぶろくの魅力について、どぶろくづくりも担うオーナーの宮井敏臣(みやい としおみ)さんにお話を伺いました。

どぶろくと日本酒の
違いとは?

神田から徒歩5分ほどのオフィス街にある「にほんしゅ ほたる」。店内奥のガラスの扉に囲まれた区画に、醸造用の200Lタンクが2本並んでいます。この1.5坪ほどのスペースで、どぶろくを醸造しているのです。ところで、どぶろくは日本酒とはどう違うのでしょうか?

「どぶろくの製造工程は、もろみを濾すまでは日本酒と同じです。米を蒸して米麹と仕込み水を合わせ、酵母など微生物の働きでアルコール発酵させます。日本酒との定義上の違いは、『もろみを濾すか濾さないか』。どぶろくは一切濾さないんです」

「にほんしゅ ほたる」店内にある、どぶろく醸造用のタンク。

「もろみ」とは、アルコール発酵している液体のこと。米が溶けてドロドロの粥状になっています。日本酒は、アルコール発酵を終えたらもろみを濾し、酒粕と清酒に分けて出荷しますが、濾さずにそのまま飲むのがどぶろくというわけです。

大吟醸クラスの
スタイリッシュなどぶろく

「にほんしゅ ほたる」で作られているどぶろくは、さまざまな工夫で飲みやすさを追求しているといいます。

「米は、酒づくりに使われる酒米、『山田錦』を50%精米して、低温でゆっくりと発酵させます。日本酒の大吟醸と同じような作り方なので、スッキリとして淡麗な味わいになるんですよ。

『どぶろく特区(※)』で作られるどぶろくだと、地元で作ったお米を使わなければいけないという制約があって、飯米を使うことが多く、少しボテッとして重い味わいになりがちなんです。一方、当店一般免許で醸造しているので、自由にいいお米が使えるんです」

※どぶろく特区…特定の区域において全国一律の規制を緩和し、地域経済の活性化を目的とする「構造改革特区」(2002年成立)のひとつ。年間の醸造見込み量が、酒税法で定められた「最低6kL」に満たなくても、特区内の農業者が自家産米で仕込み、みずから経営する民宿などで提供する場合に酒づくりの免許を取得できる。

宮井さんは、どぶろくを醸造するにあたって、日本酒の蔵やどぶろくを作る民宿を訪ねて学び、アドバイスをもらいながら、スッキリとした大吟醸のような味わいになる醸造の仕方を完成させたといいます。もろみを濾していないことから、ほかの多くのどぶろくは溶け残ったお米の粒が少し残っているのですが、「にほんしゅ ほたる」では、飲みやすいように米粒をミキサーで砕くといった工夫もしているのだとか。

「にほんしゅ ほたる」のどぶろくは、シュワッとした炭酸感のあるスッキリとした飲み口が特徴。 ヨーグルトのような、ほんのり甘みのある味わいです。

「アルコール発酵は、糖がアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解されるので、出来立てのどぶろくには炭酸ガスが多く残っています。このシュワシュワした飲み口がフレッシュなどぶろくの魅力。特に、女性客からの評判がいいんですよ」

どぶろくや日本酒に合う
おつまみが充実

「にほんしゅ ほたる」では、自家醸造のどぶろくのほかに、50種類以上の日本酒がそろいます。また、そのどぶろくや日本酒にぴったりのフードメニューが充実しているのもうれしいポイント。さて、どぶろくにはどんなおつまみが合うのでしょうか?

「飲み口はスッキリしていますが、それでも日本酒と比べると複雑な味わいなので、しっかりとした味付けのフードに合いますね。当店のおすすめは、ソース味の『ハムカツ』です。ペースト状にした酒粕とチーズをミルフィーユ状に挟んだ濃厚な味わいで、どぶろくの風味にぴったりです。ほかにも、醤油味で煮込んだ牛すじ豆腐、味噌煮込みなども合いますよ」

ボリュームたっぷりの「ハムカツ」。

「酒肴6種盛」もお店の人気メニュー。鶏白レバーの山椒煮や鴨ハムの燻製など、お酒が進みそうな組み合わせです。揚げ物や煮物、チーズといった、味の濃いめな物をチョイスすると良さそう。

日替わりの「酒肴6種盛」。
左上から時計回りに、「タコときゅうりの和え物」「きのこのきんぴら」「鶏白レバーの山椒煮」「水耕にんにくのたまり醤油漬け」「あなごの煮こごり」「鴨ハムの燻製」。

どぶろく目当てで訪れる
お客さんが増えてきた

元々は、長野県にあるクラフトビールを醸造・販売する株式会社ヤッホーブルーイングで、工場長を務めていたという宮井さん。その後、会計事務所を経営し、酒蔵の事業再生コンサルなどに携わっていたそうです。そんな宮井さんが「にほんしゅ ほたる」をオープンしようと思ったきっかけは、日本酒蔵を訪れたことからだったとか。

「酒蔵でしぼり立ての日本酒を飲んだら、すごくおいしくて感動したんです。それまではビールばかり飲んでいたので、そういう出来立ての日本酒のおいしさを知らなかった。そこで、もっとたくさんの人にこういう日本酒を飲んでほしくて、都会で出来立てのお酒が飲める店を出そうと決めました」

「にほんしゅ ほたる」オーナーの宮井敏臣さん。

清酒の免許が取りにくかったことから、どぶろくを作ることができる「その他の醸造酒」の免許を取得。しかし、どぶろく自体の認知は今以上に低かったといいます。

「最初は、どぶろくといってわかってくれる方は少なかったですね。日本酒目当てで来店されたお客様が、せっかくだからと飲んでくれることが多かったです。最近はどぶろくも注目され始めて、どぶろく目当てで来てくれる方も増えました。自家醸造のどぶろくを提供するというのは都内で初めての試みだったので、飲食業界の人が一番驚いていたと思います。オープン当初は、同業者の方が興味を持って来てくれましたね」

「にほんしゅ ほたる」では、どぶろくでカクテルを作ったり、どぶろくづくりの体験セミナーを開催したりと、よりどぶろくを身近に感じてもらえるよう、さまざまな試みを行っています。また、2018年には赤坂見附に「酒肴ほたる」をオープンし、出来立てのどぶろくが楽しめる場所が新たに作られました。一方で、自家醸造どぶろくの外販用ブランド「神田マドンナ」が飲める店も徐々に増えているそうです。ぜひ、一度フレッシュなどぶろくのおいしさを味わってみてください!

にほんしゅ ほたる

にほんしゅ ほたる

住所:
東京都千代田区内神田1-17-1 MIIIビル1F
TEL:
03-5577-6556
営業時間:
月~金 17:00~23:30(L.O. 22:30)
 土 17:00~23:00(L.O. 22:00)
定休日:
日曜日、祝日
URL:
http://sake-hotaru.com/

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