発酵を訪ねる

しょうゆの大手企業が立ち上げた
「発酵のある暮らし こころダイニング」で
新しい食の発見を

2019/08/08

2018年7月、「発酵のある暮らし」をコンセプトとして吉祥寺にオープンした「こころダイニング」。しょうゆをはじめとした調味料を製造・販売する大手食品メーカー・キッコーマン株式会社から生まれた、キッコーマンこころダイニング株式会社が運営しています。 こころダイニングでは、「しょうゆもろみ」などオリジナルの発酵調味料を中心に、全国から選りすぐったさまざまな発酵食品を販売するほか、オリジナル発酵調味料を使ったお料理が楽しめるイートインスペースもあり、連日女性を中心に賑わっています。

そこで、このような「発酵」をテーマとしたショップを立ち上げた経緯や、食卓を彩るオリジナル調味料の魅力など、「発酵のある暮らし こころダイニング 吉祥寺店」マネージャーの大山芙佐子(おおやま ふさこ)さんにお話を伺いました。

しょうゆの作り手だからこそ知る
「しょうゆもろみ」の魅力

キッコーマンといえば、江戸時代から続くしょうゆの老舗メーカー。しかし、こころダイニングのような形態の店舗を持つのは初めてだといいます。なぜこのような「発酵」をコンセプトにした店をオープンするに至ったのでしょうか?

「発酵ブームもあって、納豆や味噌などさまざまな発酵食品が注目されています。しょうゆも発酵食品のひとつですが、あまりにも生活に身近すぎるのか、発酵食品というイメージが薄いんですよね。そこで、しょうゆのまだ知られていないおいしさがあることを、これまでとは違う形で伝えていくというのが、お店をオープンした理由です」

「こころダイニング 吉祥寺店」マネージャーの大山芙佐子さん。

しょうゆの新しい楽しみ方として、こころダイニングが注目したのが、「しょうゆもろみ」。しょうゆの製造過程でできる「しょうゆもろみ」を調味料として活用しています。

「しょうゆは、大豆と小麦と麹菌でしょうゆ麹を作り、食塩水と合わせて仕込んでいきます。それを半年間、麹菌が作り出した酵素、乳酸菌、酵母など、微生物の働きによって発酵・熟成させて出来上がるのが『しょうゆもろみ』で、それを搾って火入れをすると『しょうゆ』になります。

じっくり手間暇かけてできた『しょうゆもろみ』は、発酵・熟成したしょうゆ本来のおいしさをそのままの状態で味わえるんですよ。香りも豊かで、しっかりとした旨味やコクのある濃厚な味わいが特徴です」

こころダイニングでは、定番の「しょうゆもろみ」に加え、「しょうゆもろみ」をベースにした「もろみ花椒」「白ごまもろみ」を開発。ほかにも、「食べるラー油」のしょうゆ版のように楽しめる「サクサクしょうゆアーモンド」や、しょうゆと「しょうゆもろみ」に唐辛子発酵調味料を加えた「しょうゆの実」といった調味料を販売しています。

左から、「しょうゆもろみ」「もろみ花椒」「白ごまもろみ」。

左から、「サクサクしょうゆアーモンド」「しょうゆの実」。

「『しょうゆもろみ』自体のおいしさにプラスして、薬膳の考え方を取り入れ、体にいい物を素材として選んでいます。例えば、花椒は体を温めたり消化を促したりする働きがあるとされているほか、アーモンドは肺を潤すといわれているので、乾燥の季節にぴったりと考えられています。

また、なるべく安心して食べていただける素材を使うことも意識しています。淡路産の玉ねぎ、青森産のにんにくなど、日本で作られた質のいい物を使用しているんです」

こころダイニングの調味料は、発酵でイメージされる「健康」にフォーカスするだけではないと大山さん。

「発酵食品が健康面でメリットがあるのはもちろんですが、発酵で生まれるコクや旨味で、より食材をおいしく味わえる調味料を意識しています」

お客様とのコミュニケーションを通してオリジナル発酵調味料の使い方を伝える

2階のイートインスペースは、ランチやバータイム、定期開催されるセミナーなどを通して、販売しているオリジナル発酵調味料を使った料理を味わうことができます。

「新しい調味料なので、どんな味なのかわからないし、どうやって家庭で使ったらいいかもわからないというお客様は多いと思うんです。なので、実際にお料理を食べてもらいながら、使い方を伝えられるような場にしようと思い、キッチンのあるイートインスペースを設けました」

蔵をイメージしたというイートインスペースには10席のゆったりしたカウンター席が設けられ、オープンキッチンが見渡せます。

「『食でこころとからだをととのえる』をテーマに、週1回くらいのペースで発酵の力を活かす薬膳料理セミナーを開催しています。テーマは月替わりで、例えば『夏バテや熱中症予防に効く料理』をテーマにした月では、薬膳を学んだ講師を招き、体の調子を整える食材を使いデモンストレーション形式で調味料の使い方や調理のコツを伝えながら、お食事を楽しんでいただきます。

食や料理にこだわりを持っている方が多く参加されるので、新たな発見ができると好評をいただいています」

このスペースは、元々セミナーをするために設けられたそうですが、もっと気軽に調味料の味を知ってもらうために、ランチの営業も始めました。

「お客様は圧倒的に女性が多く、女性一人で来られる方もいらっしゃいます。単に料理を提供するだけでなく、お客様にとっては、食にまつわる新しい発見や情報が得られるように、より近い距離でスタッフと会話をしていただきながら、一方で私たちもお客様の生の声を拾える場にしていきたいですね」

ランチメニュー「牛肉の和風煮込み~季節野菜を添えて~」。5種類のオリジナル発酵調味料をすべていただくことができます。お肉やお野菜に一通りつけてみて、お気に入りを見つけるのが◎。

「発酵のアミューズメントパーク」を目指して

店舗1階には、オリジナル発酵調味料のほかに、漬物など全国各地で作られたさまざまな発酵食品が並んでいます。オリジナル商品以外のセレクトは、おいしく・安心・安全に食べられる物が基本。スタッフがみずから直接買い付けてくることもあるなど、こだわっています。

「お客様がいつ来店されても新しい発見があるように、自社で開発した商品だけでなく、発酵をキーワードにさまざまな物を取り入れています。イメージは、『発酵のアミューズメントパーク』。幅広い発酵の楽しみ方を伝えていけたらと思っています」

オリジナルの商品も、5種類の発酵調味料のほか、だしや食材の漬けだれなど種類も豊富になってきています。

「まだオープンして1年。いろいろなことにチャレンジしながら、よりお客様に喜んでいただけることを模索している最中です。今は、通販と店舗での販売のみですが、商品の魅力をより広く知ってもらうために、吉祥寺以外でも催事の場所を借りてデモンストレーションしていきたいと考えています。

今は、年配のお客さんが中心なものの、30代から40代の働く女性にこそおすすめしたいですね。弊社の調味料があれば、簡単においしい料理が完成します。共働きのご夫婦が多い中、仕事で帰りが遅くなったときにも役立つのではないでしょうか。もっと幅広い世代に知っていただける機会を増やせるように、展開していきたいです」

発酵のある暮らし こころダイニング 吉祥寺店

住所:
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-10-5
TEL:
0422-23-0071
営業時間:
11:00~19:00
定休日:
お盆・年末年始
URL:
https://cocoro-dining.co.jp/