発酵を訪ねる

くさくてうまい!発酵食品をもっと身近に。
「くさうま®レストラン」

2019/11/07

2019年9月、「くさいけどうまい」食材を使った料理とお酒を楽しむ1日限りのイベント「くさうま®レストラン」が開催されました。会場は、東京・池袋某所。チケットを購入した人だけに詳細を公開するというシークレットイベントながら、当日はカップルや仕事仲間、家族連れといったグループのほか、一人での参加者同士で意気投合して盛り上がる姿も多く見られ、会場は大賑わい!

強烈なにおいに悶絶しつつ、そのにおいすら味わいに変えてしまう料理の数々に舌鼓を打ちながら、プロが語るくさうま®食材の秘密や健康パワーに驚いたり納得したり…。
2時間では味わいつくせないほどの刺激にあふれた、魅惑のくさうま®ワールドをリポートします。

「くさい」だけでなく「うまい」を実感するイベント

世界にはくさくてうまい食べ物がたくさん!くさい物に蓋をするのではなく、心と鼻をめいっぱい開いて「くさうま®フード」を体感してほしいというコンセプトのもと、開催されたこのイベント。

会場に入るとすぐ目についたのが、正面に置かれた透明のケースです。中には、「世界一くさい食べ物」といわれている「シュールストレミング」の赤い缶詰が置かれ、その場でにおいをかぐことができるようになっています。ケースを開封する度に、何ともいえない猛烈な刺激臭が漂うため、消臭スプレーの使用を促されていました。

密封されたケースに入れられた「シュールストレミング」。

中にはニシンの塩漬けがぎっしり!

「シュールストレミングは、おもにスウェーデンなどで食べられているニシンの塩漬けです。常温で開缶すると発酵が進んで身が溶け、くさい液体となって噴き出す危険があるので、開缶にもかなりのリスクが伴います」と教えてくれたのは、くさうま®レストラン実行委員会の田村章さん。

「このイベントの目的は、信じられないほどくさいといわれる食べ物を肴にただ騒ぐだけではなく、くさくてうまいを実感してもらうこと。発酵食品のおいしさと健康への意識を啓発することを第一に考えています」と話します。

「発酵食品が大好き」と話す、くさうま®レストラン実行委員会の田村章さん。

「近年、その効能などが再注目されている発酵食品ですが、若い世代は食べない人が増えているそうです。和食離れが進んで、料理に味噌や鰹節を使う機会が減り、納豆やぬか漬けも食卓に上がらなくなっているのでしょう。今回のイベントをきっかけに、発酵食品が世界中に存在していることやその驚きのパワーを知っていただき、日常生活に取り入れてもらえるとうれしいですね」

くさうま®の可能性を感じさせる料理の数々がずらり

いよいよ、世界のくさうま®食材を使った料理の実食です。

使用する食材は、シュールストレミングのほか、独特の香りで知られる伊豆諸島の特産品「くさや」、塩水やお酒などで洗うようにして熟成させる「ウォッシュチーズ」、韓国料理に使われる発酵させた大豆のペースト「チョングッチャン」、豆腐を発酵液に漬けて作る「臭豆腐」、鮒(ふな)に塩を詰めて発酵させる滋賀県の郷土料理「鮒ずし」の6品。

独特のにおいと格闘しながら調理を行ったという担当シェフから、本日のメニューの紹介とともに、大皿に盛られた料理が運ばれてきました。

・鮒ずしのカプレーゼ仕立て
薄切りのトマトの上に、モッツアレラチーズと鮒ずしが乗ったおしゃれな一品。鮒ずしの香りが鼻腔をくすぐり、口に入れると旨みと酸味が広がります。

・ウォッシュチーズと
無花果のクロスティーニ サラダ仕立て

スライスしたパンに食材をトッピングして食べるイタリアの前菜、クロスティーニ。チーズと相性抜群の無花果を使い、食べやすく仕上げてあります。ワインが飲みたくなる味!

・世界一くさい
シュールストレミングミニバーガー

「あのシュールストレミングがこうなるのか」と、参加者全員をうならせたミニハンバーガー。「これぞ」というにおいはわずかに残りますが、むしろそれが良い風味に。

・臭豆腐のフリット
自家製パクチーソース

臭豆腐を揚げて、自家製のパクチーソースをかけた一品。フリットにしたことで、臭豆腐独特のねっとりとした歯触りが軽減され、パクチーの効果もあってそれほどにおいは感じません。

・くさやのラグーラザニア
本格的なラグーソースで作られたラザニア。くさやのコクが手伝って、ただただ美味です。

・チョングッチャンのビビンバ風
一口サイズのご飯の上に、納豆のような粘り気とにおいを持つチョングッチャンを乗せてビビンバ風に。参加者からは「メニューの中で一番、食材の強烈な個性が残っていた」という感想が聞かれました。

大人気だった「鮒ずしのカプレーゼ」。

韓国ではチゲなどに使われるチョングッチャンを、ビビンバ風にアレンジ!

いくらでも食べられそうと好評だった「くさやのラグーラザニア」。

参加者は料理が登場する度に、スマホや携帯でパシャリ。
このイベントの存在は、SNSで知ったという人が大半でした。

伝統的な発酵食品の「本当の効能」を広く知ってほしい

料理を目、鼻、舌で堪能したところで、このイベントにふさわしい3名のゲストによるくさうま®トークショーが行われました。

滋賀県にある石山寺の門前で「至誠庵」を営む女将の井上裕子さんからは、滋賀県の郷土料理でもある鮒ずしの歴史や栄養素のお話を。池袋で「くさやバー」も営む、八丈島の藍ヶ江水産の加藤幸代表からは、天然の抗菌剤とも呼ばれるくさやの誕生からおすすめの食べ方などを。三幸貿易の伊藤謙さんからは、シュールストレミングが日本で周知されるようになったきっかけといった、発酵食品の知られざる雑学や豆知識を教えてもらいました。

左から、司会者、藍ヶ江水産の加藤幸代表、至誠庵の女将・井上裕子さん、三幸貿易の伊藤謙さん。

そして最後は、シュールストレミングの実食タイム。爪の先ほどの少量でも、口内に入れた瞬間の破壊力は例えようがないほど!あちらこちらで悶絶する参加者の姿が見られ、会場のボルテージは最高潮に。
終始笑い声が絶えない、なごやかな雰囲気のままイベントは幕を閉じました。

少量でも驚くほどの破壊力!しばらく口内に残るシュールストレミングの味…。

世界に数々ある「くさうま®」な発酵食品。かいだ人のリアクションのおもしろさもあって、どうしてもにおいだけに注目が集まりがちですが、「くさい=まずい」ではないことを改めて学んだ2時間でした。
参加者の好評を得たくさうま®レストランは、今後も継続を予定しているそう。イベントを通じて、発酵食品の魅力が幅広い層に伝わっていくことを予感させてくれました。

くさうま®レストラン