ヘルシーフード探訪
ビーガン、オーガニック、 マクロビオティックを融合する
『+Veganique(プラスヴィーガニック)』
2019/11/28
ヘルシーフード探訪
2019/11/28
ビーガン、オーガニック、マクロビオティック、グルテンフリーetc。食の選択肢が広がり、多様になるなか、そうした料理をおいしく、美しく提供するお店、『+Veganique(プラスヴィーガニック)』が、今年5月、東京都 自由が丘にオープンしました。
ホテルやイタリアンレストランなどで経験を積み、現在はオーガニックの食材、調味料を用いたビーガン料理を提供する同店の料理人 加藤良雄さんと、奥さまで主にビーガンスイーツを担当する加藤志乃ぶさんにお話を伺いました。
「こちらが『白いんげん豆のトマト煮込み』。オレガノ、バジルなどのハーブをきかせていて、スパイスとしてパプリカを用いています。こちらは、『きのこのマリネ』。ケッパーの実を入れ、白ワインビネガーを使ったものです。これは、『米粉でつくった野菜のケークサレ』。炒め野菜は、今の季節は…ブロッコリーです。『キャベツのコールスロー』には醤油糀を使っています…」
色鮮やかなお料理は一点一点美しく、丁寧に手をかけてつくられていることがわかり、お料理の説明に耳を傾けながら、見とれてしまうほど。
『+Veganique』のお料理は可能な限りオーガニックの野菜と果物、調味料を用い、グルテンフリーを希望する人には、パンだけを除けばいいよう、料理に小麦粉が入った食材を使わない配慮がされています。
季節ごとに内容は変わるということですが、「どの季節も同じぐらいの品数をお出ししていますね」と、志乃ぶさん。何種類ぐらいの野菜や果物を使ってらっしゃるのですか?と聞いてみたところ、そうですねぇと指を折って数えていた良雄さんが、ぱっと顔を上げて「今日は、ちょうど50種類ですね」と。それを聞いた志乃ぶさんも「数えたのは初めてねぇ」と、驚きの表情に。
「野菜や果物は、契約農家さんから届くものです。季節によって種類が変わってくるので、主に長崎島原、淡路島、長野、千葉と、西から東に産地を少しずつ移しながら、旬のお野菜を取り寄せています」
野菜や果物はもちろん、パンや調味料選びにも余念がありません。
「パンは、軽井沢の『一歩』さんのもの。自家製の天然酵母、自家栽培のライ麦などを用いてパンをつくっておられます。調味料も、材料に小麦粉を用いない醤油など、オーガニックかつ厳選したものを使っています」
そんなふうに、教えてくださりながら「でも、こういうご説明って難しいんです」とぽつり。“こだわりで、厳選された、オーガニックの…”と声高に言いたいわけではないと、志乃ぶさん。「からだにいいもの、おいしいもの、ごまかしがないもの。そう思って選んでいるだけで、私たちにとっては自然なことなんです」
もともとヴィーガニックスタイル=ビーガンとオーガニックとマクロビオティックの融合を目指した料理を提供する店を出すきっかけになったのは、良雄さんが体調を崩したことでした。
「痛風になってしまったんです。これは口に入れるものを考えなくてはと思いました」
薬が体に合わず、食事から暮らしを見直そう考えた良雄さんを思い、マクロビオティックの勉強を始めるうちに、もともと料理人でなかった志乃ぶさんも“食べるものとからだ”について関心を深めていくことになりました。「私たちのからだは、私たちが食べたものでできている」「食べるもので変わることができる」ことを実感したと言います。
「最初の2〜3年は、かなりストイックに食事制限をしていましたが、当時私は、イタリアンの料理人。ランチなどは自分で用意しないと食べられません。外でおいしいものを食べたいと思っても、入れるお店がないという感じで。もうこれは、自分たちでやったほうがいいんじゃないかと考えました」と良雄さん。
食べること、外食も大好きなおふたり。自分たちのことと同時に、世の中の同じ悩みを持つ人のためにも、安心して入れるお店をつくりたいと考えたそうです。また、オーガニックの野菜や果物、調味料などをつくる生産者さんが経営を維持するためにも、こうしたコンセプトの店の必要性を感じました。
こうして、これまで良雄さんが学んできたイタリアンやフレンチの料理に新たな知識や技術を加え、『+Veganique』オープンへとつながっていきました。
おふたりが「野菜の声をきく」と表現するように、姿や手触りからその野菜の個性を感じながら、切り方や火の入れ方などを変え、出来上がっていく料理の数々。「味わいの良さはもちろん、食感や、色合いの美しさなど意識してつくっています」という言葉どおり、プレートに並ぶ一品一品がいきいきとしています。
ビーガン、グルテンフリー、マクロビオティックというと、どこか“節制”という言葉が浮かんできそうですが、『+Veganique』の料理にはそうした要素を感じることはありません。
「私たちが目指すのは、ハレの日の料理。ビーガンやグルテンフリーの食事をする人も、そうでない人も、みんなで一緒にテーブルを囲んでほしいと思っています」
おいしいデザートや、料理にあうワインやビールも存分に楽しんでほしいとおふたり。
「たとえば、ご用意しているビールには、さまざまなフレーバーがあり、味も香りも豊かな大変おいしいものです。ワインも料理にぴったりあうものを揃えていますよ」
「私たちは流行や、ブームにはあまり関心がないんです。ふらりと入ってきてくださってもいいですし、お誕生日などアニバーサリーにご利用いただけるのもうれしい。少しずつ私たちの料理を楽しんでくださる方、思いをわかってくださる方が増えて、地道にファンになってくださるのが一番だと思っています」
お肉の料理を出せば、たくさんお客様が来てくださることはわかっているんですが、と笑う良雄さん。
「だって僕はもともとイタリアンの料理人。お肉を焼くのはうまいんです。得意料理を封印してますからね、へんなことにチャレンジしてると思っています(笑)」
その言葉にうなずき笑いながらも、志乃ぶさんが確信をもった口調で続けます。
「そうなんですよ。でも、そこは曲げられないんです。この信念なしには前に進めないし、間違いはないって思っているので。ごまかすことなく、今のやり方でやっていきたいですね」
また、『+Veganique』は、情報の発信地でもありたいとおふたり。
「思いに共感しあえる方の作品の展示をしたり、音楽やおはなし会などのイベントを開催したり、いろいろな人と繋がり合うこと。ここでだからこそ出会える人との出会いの場になってくれたらと思っています。そのなかに私たちの料理があって、皆に楽しんでいただけたら最高ですね」