食の知恵袋
毎日の食事づくりが面倒…
それでも無理なく続けるコツ
2020/07/02
食の知恵袋
2020/07/02
1日3食を作ることもある家族の食事。調理するだけでなく、メニューを考えることもおっくうになってしまうことは誰しもあると思います。
「面倒だ」という本音を隠して毎日キッチンに立っていると、次第に食事づくりが苦痛になってきます。悪循環に陥らないようにするには、マイナスな気持ちにどう折り合いをつければいいのでしょうか。
今回は、料理研究家/フードコーディネーターである河瀬璃菜(かわせ りな)さんに、毎日の食事づくりを無理なく続けるための考え方や調理のコツについてお話を伺いました。
毎日、おいしくて体にいい食事を作るのが理想だけど、とにかく面倒くさい…。メニューを考えて、スーパーへ買い物に行き、調理をして、片づける。一連の食事づくりのプロセスを考えるだけでうんざりしてしまう…。
どうすれば「面倒くさい」という心の叫びをなだめ、食事づくりを続けていくことができるのでしょうか。
河瀬さんは、「料理が面倒だ」と思うのは、「ちゃんとしなきゃ」という気持ちが強い上に、「ちゃんと」のレベルが高すぎるせいではないかといいます。
「家族のために栄養バランスのいい食事を作らなくてはいけない、出来合いの惣菜や冷凍食品は使わずに全部自分で作らなくちゃなど、自分にプレッシャーをかけすぎて苦しくなってしまうのだと思います。家事としての料理は、たまにする楽しい料理と違って毎日やらなければならない分、負担が大きいもの。楽をして当然なのに、楽をすることに罪悪感を覚えてしまうんですね」
「食事づくりがちょっとつらいな」と感じたら、「面倒を手放すこと」を意識してほしいと河瀬さん。
「誰かのためにという責任感も、理想の食卓のイメージもすべて手放して、自分を許してあげることが楽になるための第一歩。多少手抜きでも、作った人が機嫌良くいられるほうが、本人だけでなく食卓をいっしょに囲む家族もずっと幸せです。
ごはんを作る人には、『自分を一番大事にしてあげて!』と伝えたいですね。時短調理で浮いた時間を自分の心と体のケアに使えたら、とても有意義だと思いませんか?」
河瀬さんは、「面倒を手放す」ための具体的な方法として、次の3つを挙げてくれました。
・レトルト食品や冷凍食品を使って1品追加する
・調理不要で、出すだけで食べられる納豆やめかぶなどを冷蔵庫に常備しておく
・気持ちや体調と相談して「今日できること」を見極め、無理をしない
「本来、食事は気楽で楽しいもののはず。プロセスや材料にこだわりすぎず、食事を準備できた自分を褒めてあげてください」
メニュー決めも、料理づくりで感じるハードルのひとつです。毎日料理を作っていると、だんだんマンネリ化してきて、何を作っていいかわからなくなる人も多いのでは。
河瀬さんは、メニューを決める際にどんなことを意識しているのでしょうか。
「肉、魚、卵など、メインはすんなり決まっても、副菜が決まりにくいですよね。私はいつも、昔ながらの『まごわやさしい』をヒントにしてメニューを組み立てています」
「まごわやさしい」は、体に優しい和食材の頭文字を取った、健康な食卓を作る合言葉です。
ま:豆(納豆、豆腐、油揚げ、味噌など大豆加工品)
ご:ごま(ピーナツ、くるみ、ぎんなんなど)
わ:わかめ(ひじき、のり、昆布、もずくなど海藻類)
や:野菜(緑黄色野菜、淡色野菜、根菜類など旬の野菜)
さ:魚(あじ、さば、いわし、たこ、しじみなど魚類)
し:しいたけ(まいたけ、しめじ、エリンギ、えのきなどきのこ類)
い:いも(じゃがいも、さつまいも、里芋など芋類)
「今日のメインは『さ』で魚にすると決めたら、スーパーで旬の魚を買ってメインにします。あとは、『さ』以外の食材を組み合わせて副菜を考えましょう」
忙しい毎日、調理時間もできる限り短縮したいもの。時短調理のために河瀬さんが実践しているのが「便利グッズを使う」「調味料を上手に取り入れる」ことだといいます。
それぞれ、具体的に紹介してもらいました。
便利なグッズが大好きだという河瀬さんのキッチンでは、簡単にみじん切りができる「ぶんぶんチョッパー」や、1本で混ぜる、炒める、取り分けるとマルチに使えるシリコンスプーンの登場頻度が高いそう。
「手間暇かけて手作業で仕上げなければならないという、見えないプレッシャーも手放してしまいましょう。キッチンで火を使う気力すらないときは、耐熱ボウルで加熱するだけでいい電子レンジ調理も取り入れるといいですよ」
あれこれ調味料を使うのではなく、1つで味つけが決まる調味料は、時短調理の強い味方。最近はバラエティに富んだ調味料が登場しているので、お気に入りの味にできる自分の定番を探すのも楽しいかも。
「冷奴やオニオンスライス、アボカドなどをおかずとしてワンランクアップさせてくれる、しょうゆとはまた別の調味料を常備しておくと、もう一品欲しいときに活躍します」
最後に、「あともう1品欲しい」ときに便利な、電子レンジで調理できるレシピを紹介している河瀬さんの著書「神レンチン あなたにやさしい電子レンジレシピ」(文藝春秋)から、仕事や育児でヘトヘトな日に試したい時短メニューを特別にご紹介します!
「アツアツのうちに水溶き片栗粉を入れて混ぜるのがコツ。程良いとろみがつくので、そのままおかずの1品として出しても、ご飯にかけて丼物にしてもいいですね。堅焼きそばのあんにもぴったりです」
「具がたっぷり入った汁物がレンチンで簡単に作れます。メイン料理に時間をかけたいときや、お弁当づくりなどで忙しい朝にもおすすめ。あさりの汁にはいい出汁が出ているので、必ず汁ごと入れてください」
「ポイントは、トマトと卵、調味料を混ぜ合わせてレンジにかけたら、3分くらいで取り出すこと。加熱しすぎると卵が固くなっておいしさが半減してしまいますので、注意してください。ちなみに、ザーサイはおかずやスープなど活用の幅が広いので、常備しておくといいですよ」
「無理をせず、自分が心地良くいられる方法を選択することが何より大事。手の込んだ料理は、気持ちと時間にゆとりがあるときに作ればいいんです」と河瀬さん。
時には出来合いのお惣菜を買ってきてもいいし、レトルトのカレーを出してもいい。それでも日々がんばっている自分をいたわることができれば、家族をいたわる余裕が生まれます。
毎日の料理が「面倒でつらいもの」から「ワクワクするもの」に変わるように、ラクする自分を許してあげましょう。
料理研究家・フードコーディネーター。レシピ開発、商品開発、食の企画やコンサルティング、レシピ動画制作など、食にまつわる多岐にわたる活動を行う。最新著書は「神レンチン あなたにやさしい電子レンジレシピ」(文藝春秋)。
Twitter:河瀬璃菜 りな助(料理研究家)