発酵に恋して。

研究家・菅野のなさんが伝えたい、
毎日のごはんから見つける幸せ

2020/08/13

研究家・菅野のなさんが伝えたい、毎日のごはんから見つける幸せ
研究家・菅野のなさんが伝えたい、毎日のごはんから見つける幸せ

私たちが生活する上で欠かすことのできない、毎日のごはん。毎日のごはんを食べて幸せなら、きっと365日ずっと幸せに過ごせる。そんな思いを大切にし、神奈川県川崎市を拠点に活動しているのが、オーガニック料理教室「ワクワクワーク」です。

代表を務める菅野のなさんは、教室のほか、食にまつわるイベントやワークショップの開催、料理本の出版など、さまざまな活動に取り組んでいます。最近では、オンラインでゆるやかにつながる「おにぎりキャラバン」や、SNS投稿による「ごはんとみそ汁バトン」も注目を集めました。
菅野さんの食への想いや活動について、お話を伺いました。

伝えたいのは
「毎日のごはんの大切さ」

菅野さんが「ワクワクワーク」をスタートしたのは2007年。管理栄養士であるお母様とともに設立したオーガニック料理教室です。
オーガニックと銘打っているものの、ストイックなルールがあるわけではありません。ベースになるのは、昔ながらの食の基本である、ごはんと味噌汁。講座を通して、毎日のごはんの大切さを伝えています。

「『毎日のごはんから私のしあわせを見つける』。これが私たちの理念であり、目指す未来でもあります。これまで、お子さんのためには一生懸命食事を作るのに、自分が食べる物は後回しになってしまっているお母さんたちにたくさん出会ってきました。
ともすれば、流れ作業になりがちな食事づくりが、もっと豊かな時間になれば、きっと少しずつじんわりとした幸せにつながっていくはず。食材にこだわることも必要かもしれませんが、何より大切なのは『食事づくりを楽しむ』『家族みんなでおいしく食べる』ことだと思っています」

料理教室「ワクワクワーク」を主宰する、料理研究家の菅野のなさん。

その想いは、料理教室発足以来ずっと続いているというクラス「食と心のバランス講座」にも表れています。

「『食と心のバランス講座』は、毎日のごはんづくりを無理なく自分らしく楽しみながら、メンタルのバランスを整える半年間の講座です。
特徴的なのは、毎回調理後に振り返りのワークを行っていること。レシピを習って終わりではなく、受講者が自宅に持ち帰り、続けていけるような工夫をしています」

おにぎりで紡ぐ多世代のつながり

菅野さんが、2020年から新たに始めた取り組みが「おにぎりキャラバン」です。当初は全国に足を運びながら、おにぎりと味噌汁、地域ごとの郷土料理を作って発信していく予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、キャラバン計画は中止に。

さらに、外出自粛や休校、テレワークの推進などにより、自宅で家族とともに過ごす人が増えました。そこで、「人に会えない中でもつながりを感じられる何かを」と考えます。
思いついたのが、「オンラインで参加者といっしょにおにぎりを握ること」。これをきっかけに、「おにぎりキャラバンオンライン」がスタートしました。

子供でも料理が身近ではない人でも、誰でも作れる料理。それがおにぎり。

「結果的に、ビデオ会議システムを使ったオンラインイベントになったことで、関東だけでなく、関西や北海道、九州など、全国各地から、多世代の方が参加してくれています。
おにぎりは昔から身近な日本人のソウルフード。おにぎりを通して、手作りの良さや日本の食文化、誰かといっしょに食べる楽しさなど、伝えられることがたくさんあります。参加者におにぎりの思い出話を語ってもらったり、ご自慢のおにぎりをお互いに見せ合ったり、おいしい握り方を解説したり…。今後、全国をキャラバンできるようになっても、オンラインイベントは続けていくつもりです」

毎回、個性豊かなおにぎりが登場するという、「おにぎりキャラバン」の1コマ。

SNS投稿が
新たなプロジェクトを
生むきっかけに

外出自粛中は、お題に沿ってSNSでつながる、「バトンリレー」も多く見られました。そんな中、菅野さんが始めたのが「ごはんとみそ汁バトン」です。誰もが気軽に作ることができる「ごはんと味噌汁」というテーマが多くの方に支持され、4,000投稿を超える盛り上がりとなりました。

「家で過ごす時間が増える中、ごはんとみそ汁の画像にふれて毎日が少しでも楽しくなれば…という気持ちで始めたバトンでした。これほどたくさんの方がつないでくださるとは想像もしていなかったので、びっくりしています。
この機会にごはんとみそ汁という食の基本を見直してみようかな、という方が増えたら、こんなにうれしいことはありません」

「ごはんとみそ汁バトン」は食べる前に撮影し、自身のSNSやブログに投稿。
指名した次の人へとつなげていくルール(強制力はもちろんなし)。

この「ごはんとみそ汁バトン」は、菅野さんの活動にもひとつの新しいきっかけを生みました。
バトンでつながった料理家や食に関心を持つメンバーが集まり、「ごはんとみそ汁シンポジウム2020」が発足したのです。

「『ごはんとみそ汁シンポジウム2020』は、食にまつわる興味関心、課題など、テーマを決めて参加者でチームを作り、プロジェクトを実施・運営していきます。
以前からずっと考えていた、『食の未来を守る』ための一歩を踏み出すことができました」

時短と熟成の両方をバランス良く
生活に取り入れてほしい

忙しい日々の中で、「少しでも料理にかける手間を省きたい」という時短を求める方が増える一方で、「時間をかけるからこそ得られる豊かさもある」と、菅野さんは言います。

「ワクワクワークでは醤油や味噌などを手作りする『発酵手しごと講座』も開催しています。
時短はもちろん、すばらしい考え方です。でも、生活の中に長い時間をかけて熟成される物があるというのも、とても良いことだと思うんです。答えを短絡的に求めないという意味で、発酵は育児にも似ているかもしれません。時短と熟成は一見真逆ですが、両方をバランス良く取り入れることで、生活がより豊かになるのではないでしょうか」

菅野さんと同じ志を持つ、ワクワクワーク認定講師たちといっしょに活動を盛り上げる。

ごはんやおにぎり、味噌汁は、どれも日本人が昔から慣れ親しんできた食べ物。ワクワクワークの活動は、日本の伝統的な食文化を伝えるという側面も担っています。

「これからの未来を考えたとき、『古き良きものを守り伝えたい』という思いが生まれました。そこで、日本の伝統的な食生活の意味を見直すクラスを開講し、私自身も学びを深めている最中です。
食を通して昔と今、そして未来をつなぐ役割を果たしていけたら、うれしいですね」

菅野のな(すがののな)さん

菅野のな(すがののな)さん

菅野のな(すがののな)さん

オーガニック料理教室「ワクワクワーク」代表。大学卒業後、就職するも連日のハードワークに体調を崩し、食と健康の大切さを再認識。2007年、管理栄養士である母とともに神奈川県川崎市を拠点に「ワクワクワーク」を設立。教室運営のかたわら、イベントやワークショップの開催、レシピ提供、料理教室講師の育成、料理本の出版など、食とオーガニックを軸に多方面で活躍する。2020年8月に著書「みんなで食べたい時短のおやつ」(辰巳出版)を発売。2児の母。

http://wakuwakuwork.jp/

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