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食の知恵袋
健康的な免疫力を整える食事って?
見えない敵や体調の変化に負けない体を作ろう
2020/09/18
食の知恵袋
2020/09/18
昨今、注目を集めている「健康的な免疫力」。健康的な免疫力が高いと体調の変化への対策につながり、逆に低いと不調に陥りやすいといわれています。
そんな健康的な免疫力を上げるためには、十分な睡眠と適度な運動、そしてストレスを溜めないといったことが挙げられますが、日々の食生活ではどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
今回は、国際中医薬膳師の資格を持つフードコーディネーター/管理栄養士の清水加奈子さんに、健康的な免疫力を上げる食事について教えていただきました。
免疫とは、私たちの体に備わっている防御能力のこと。空気中に含まれる細菌やウイルス、カビなどの病原体が体内に侵入するのを防いでくれています。
では、私たちが持っている免疫とは、具体的にどのようなものがあると思いますか?
それは、白血球であり、自律神経であり、腸内細菌であり、一つひとつの細胞であったりします。
その免疫をしっかり働かせるためには、
・腸内環境を整える
・活性酸素(※)を除去する力を正しく保つ
などといったことが必要です。
※活性酸素…呼吸によって体内に取り込まれる酸素の中でも、過剰になると細胞を傷つけて老化や生活習慣病、免疫力低下の原因になるといわれているもの。
これらは、どれかひとつが有効であればいいのではなく、すべてが正常に機能し、協力し合うことで私たちの健康は保たれます。そのため、食生活においても体全体に十分な栄養が行き渡るように、バランスのとれた食事を心掛けることが大切なのです。
体内における免疫システムは若くして出来上がり、一般的に20歳を過ぎたころから低下していくといわれています。
また、食習慣によってさらに健康的な免疫力を落としてしまいかねないのです。どんなものがあるか見ていきましょう。
体温が低下すると健康的な免疫力も低下するといわれています。(※1)体温が低いと免疫を司る細胞や酵素が十分に機能しなくなるほか、腸内では悪玉菌が増殖しやすくなってしまうのです。
そのため、冷たい飲み物や水分の多い野菜、果物のとりすぎは要注意。特に、朝の起き抜けは体温が一番低くなっているので、体を冷やす飲食物は避けましょう。
ビタミン類や食物繊維、そしてポリフェノールなどのフィトケミカル(※)といった健康的な免疫力を整える作用が期待できる栄養素は、野菜(きのこ、海藻含む)に多く含まれています。
また、きのこや海藻に多く含まれる食物繊維には、腸内環境を整えるのに加え、体内の活性酸素の排出を促す働きがあるので、積極的にとるようにしましょう。
※フィトケミカル(ファイトケミカル)…植物が紫外線や害虫から身を守るために作り出す化学成分。人間にとっては、過剰な活性酸素を除去してくれる成分で、健康的な免疫力を整えると考えられている。
たんぱく質は、体の細胞や免疫物質を作るために必要な成分。不足すると、細胞や免疫物質が十分に生成されず、体全体の健康的な免疫力が下がってしまいます。
健康的な免疫力を整えるには、バランスのいい食事をするのが大切。では、具体的にどのような食材をとればいいのかご紹介します。
体の細胞や免疫物質を作るたんぱく質をとることで、免疫の働きが維持できます。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品といった食品をバランス良く食べ、良質なたんぱく質を摂取するようにしましょう。
緑茶、ココア、赤ワイン、そば、野菜、果物などには、抗酸化物質であるポリフェノールが多く含まれています。
ポリフェノールは白血球の働きを高めるほか、活性酸素を除去する作用があるので、健康的な免疫力を整えるだけでなく老化対策(健康維持)にもなります。
緑黄色野菜には、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEが豊富。中でも、ビタミンAは細菌やウイルスを殺すマクロファージ(リンパ球や食細胞)を増強して、健康的な免疫力を高める働きがあるといわれています。
また、緑黄色野菜にはフィトケミカルも多く含まれており、野菜の色素によって摂取できる栄養素も異なります。そのため、なるべくさまざまな色の野菜をとることを心掛けましょう。
きのこには食物繊維に加え、β–グルカンというきのこ特有の成分が含まれています。
β–グルカンは、マクロファージを刺激して健康的な免疫力を整える働きがあります。
納豆や漬物、ヨーグルト、味噌、醤油といった発酵食品は、腸内環境を整える作用が期待できます。発酵食品に含まれる乳酸菌は、腸内の善玉菌の増加と、悪玉菌を抑制する働きを持っているのです。
また、腸内環境の改善には、食物繊維も欠かせません。野菜やきのこのほか、いも類や豆類、果物といった物も積極的にとるようにしましょう。
健康的な免疫力を上げるには、毎日の食事できちんと必要な栄養素をとることが大切です。
最後に、常備菜として作っておきたいメニューを紹介しましょう。ぜひ作ってみてください!
野菜の中でもビタミンCの含有量が最も高いパプリカと、ビタミンAとEを豊富に含むカボチャを使ったマリネ。
ビタミンA、C、Eは、そのアルファベットから「ACE」と呼ばれ、文字どおりビタミンのエース的な存在。3つをいっしょにとることで、活性酸素の除去率がさらに高くなります。
また、色素の強いパプリカやカボチャを使用するので、フィトケミカル(ファイトケミカル)も豊富。
免疫機能の整えを促すβ–グルカンが含まれるきのこと、味噌や醤油といった発酵調味料をふんだんに使った一品。
保存が効くので、多めに作ってストックしておくと便利。冷蔵庫で4〜5日間を目安に食べ切るようにしてください。
※1
◎ビタミンACE 活性酸素除去
参考文書;栄養成分の事典改訂新版「図解」オールカラー/則岡孝子
参考文献;1.生体内におけるビタミンEとCの相互作用 : ODSラットでの検討 五十嵐 脩, 米川 由香子, 藤原 葉子
The Vitamin Society of Japan ビタミン1990 年 64 巻 7 号 p. 395-396
フードコーディネーターでありながら、管理栄養士・調理師・国際中医薬膳師の資格を持つフードのスペシャリスト。料理をおいしく、美しく見せるスタイリングだけでなく、カロリー計算されたダイエットレシピの作成、アイディアレシピの提案・監修を行っている。