発酵を学ぶ
日本のソウルフード、納豆を極める!
ネバネバパワーを味わう食し方
2020/12/17
発酵を学ぶ
2020/12/17
食卓の定番として昔から親しまれてきた、納豆。
納豆菌、ナットウキナーゼなどによる高い栄養価に加え、原料の大豆に含まれるイソフラボンや食物繊維による美容効果も期待できることから、最強との呼び声も高い発酵食品です。
充実した納豆ライフを楽しむためのマメ知識を、全国納豆協同組合連合会会長の野呂剛弘さんに教えていただきました。
納豆の生産に携わる事業者によって組織された全国納豆協同組合連合会(以下、納豆連)は、1954年の創立以来、納豆文化の継承と業界の発展を目的として、納豆の付加価値を高めながらその魅力を発信し続けている業界団体です。
加工・製造技術の改善や、品質のさらなる向上を目指して毎年開催されている納豆鑑評会では、審査員が納豆の「外観(見た目)」「香り」「味・食感」の3つの項目を評価して、日本一の納豆を決定しています。
「納豆を個人で味わうときは、自分の好みが第一です。発酵が進んで独特のにおいが増した物や、酸味の強い味をおいしいと感じる人もいますので、自分だけの納豆日本一を探してみてほしいですね」
鑑評会に出品される納豆は、毎年200種類近く。全国には、多くの納豆が存在しているのです。
「納豆の種類は、まず原料となる大豆の大きさによって、大粒、中粒、小粒、極小粒、さらに大豆を細かく割ったひきわりに分かれます。そして、付属のたれによって味つけにも違いがありますね。
納豆は発酵の過程で味をつけることができないので、たれで多様性を出し、より多くの人に親しんでもらえるように工夫しています」
ちょっと違ったタイプの納豆が食べたいというときは、各地のご当地納豆や変わり種を試してみるのもおすすめです。
<全国のご当地納豆と変わり種納豆>
・干し納豆(熊本県)
熊本県の伝統的な郷土食である「干し納豆」。納豆に塩と、小麦粉や米粉などを振って混ぜ合わせ、よく晴れた乾燥した日に天日干しした保存食です。地元では「こるまめ」と呼ばれ、お茶請けやおつまみとして、日常的に食べられています。
・そぼろ納豆(茨城県)
「そぼろ納豆」は、戻して刻んだ切り干し大根を納豆に入れ、醤油などで調味して漬け込んだお惣菜風の一品。納豆の粘りに切り干し大根のポリポリとした歯応えが加わって、癖になる味わいです。
・寺納豆(京都府・静岡県)
蒸した大豆に粉をまぶし、麹菌で発酵させてから天日干しする「寺納豆」。寺で製造されていたことからこの名がつきました。京都府の大徳寺納豆、静岡県の大福寺納豆などが知られ、「浜納豆」と呼ばれることも。
・フリーズドライ納豆
納豆の概念を覆すポリポリとした食感が魅力の「フリーズドライ納豆」は、納豆を真空凍結乾燥させたもの。そのまま食べたり、パスタや味噌汁に入れたりと、気軽に納豆の栄養を摂取できます。
納豆を飽きずに楽しみたいなら、食べ方も工夫してみましょう。各地の納豆郷土料理には、納豆の味わい方のヒントが詰まっています。
野呂さんは、納豆郷土料理を伝統系と進化系に分類し、それぞれの代表選手を挙げてくれました。
<伝統系>
・納豆汁
出典:農林水産省ウェブサイト
野菜類や油揚げ、豆腐、きのこ、山菜など、具だくさんの味噌汁に納豆を加えた「納豆汁」。山形県や秋田県など、極寒の冬を迎える雪国で昔から食べられてきた料理です。納豆のとろみで味噌汁の熱が逃げにくく、一口飲むと体が芯から温まります。
・納豆餅
出典:農林水産省ウェブサイト
京都の郷土料理「納豆餅」は、餅の中に納豆を包み込んで焼いた腹持ちの良い一品。その昔、納豆は珍味として京都御所に献上されていたため、庶民は「納豆はおめでたい日に食べる貴重な物」と考えるようになりました。自宅で納豆を作る習慣がほぼなくなった今も、正月三が日の料理として納豆餅を食べる習慣は残っているそうです。
<進化系>
・牛乳納豆茶漬け
北海道富良野市で生まれた「牛乳納豆茶漬け」。富良野の新鮮な牛乳を温めて、ネギを散らしたご飯にかけ、納豆を加えて特製醤油で調味しています。斬新すぎるこの牛乳納豆茶漬け、実は「北の国から」の脚本を手掛けた倉本聰さんが考案した物だそう。クリーミーな牛乳と納豆がびっくりするほどマッチして、やみつきになる人が多いのだとか。
ほかにも、沖縄県の「納豆タコライス」や、岩手県盛岡市の「キムチ納豆ラーメン」、鳥取県・鳥取砂丘の「納豆らっきょうそぼろ」といった、実にバラエティ豊かなご当地納豆料理があるそうです。
富良野の牛乳納豆茶漬けのように、実は納豆と乳製品は相性が良く、パルメザンチーズなどのチーズ類もよく合います。また、ラー油、オリーブオイルといった、油との相性も抜群です。お肉の脂と炒めるとにおいも飛んで、苦手な人でもおいしく食べられるようになるそうです。
「納豆は癖が強く、存在感がある食材ですが、意外と何にでも合うんですよ。乳製品と油を軸に、いろいろ組み合わせてみてください」
<納豆連・野呂さんおすすめの納豆×食材レシピ>
・納豆×マヨネーズ
子供が大好き、納豆×マヨネーズ。味が少しマイルドになって、万人受けするおいしさです。
・納豆×オリーブオイル×トマト
納豆にオリーブオイルを垂らし、刻んだトマトを混ぜるだけ。ちょっと洋風で、おしゃれなおかずに。
「納豆をもっとおいしく食べて、栄養も余さず摂取したい!」というとき、気になるのが「何回混ぜるのか」「いつ食べるのか」といった疑問です。
「400回以上混ぜた納豆が一番おいしい」「混ぜれば混ぜるほど良い」などと聞きますが、いったい何が正解なのでしょうか。
「食べ方について話し始めると、『自分のやり方が一番だ!』と誰もが白熱しますよね(笑)。正直なところ、納豆はどうやって食べてもおいしいですし、混ぜずに食べたい人もいればたくさん混ぜたい人もいるので、納豆連で答えは用意していません。皆さんのマイ納豆への執着を存分に発揮して、おいしいと思うこだわりの食べ方を貫いてもらいたいですね」
ちなみに、会長独自のおすすめの食べ方は、下記の動画で紹介されています。
■納豆の美味しい食べ方講座
納豆は朝食に食べるイメージがありますが、「いつ食べてもいいし、食べすぎなければ1日に何回と決めなくてもいいのではないか」と野呂さん。また、賞味期限が近くなった場合は、冷凍保存をしておくのもおすすめ。常温で解凍すれば風味も栄養も損なわれずにいただけるそうです。
ちなみに、賞味期限が切れても納豆は食べられると考えてもいいのでしょうか?
「元々発酵しているので、大丈夫という声をよく聞きますが、やはり風味やおいしさは損なわれてしまいますので、おすすめできないですね。納豆は、日本人の伝統的な発酵食品であり、なくてはならないソウルフード。納豆への愛とロマンを貫いて、毎日おいしく納豆を召し上がっていただきたいですね」