世界の発酵食品探訪

トマトの旨味を凝縮!
トルコ料理に欠かせない発酵調味料「サルチャ」

2021/02/25

トマトの旨味を凝縮! トルコ料理に欠かせない発酵調味料「サルチャ」
トマトの旨味を凝縮! トルコ料理に欠かせない発酵調味料「サルチャ」

ヨーロッパとアジアの交差点とも言われる国、トルコ。ヨーロッパ・アジア各国から影響を受けたバラエティあふれる料理があります。そのおいしさ、豊かさから世界三大料理の一つとも称されるトルコ料理に欠かせないのが、発酵調味料「サルチャ」です。一家に必ず常備されているというサルチャとはどのような調味料なのか。東京都市ヶ谷にあるトルコ料理店『ボスボラス ハサン』を営む、トルコ出身のご夫婦、アキユルドズ・シベルさんとリザさんに教えていただきました。

トルコにおける“味噌”?
昨今は手づくり派も増加中!

トルコには、日本の味噌のような役割を果たす発酵調味料があるらしい。そんな話を聞いて訪れたのが、東京 市ヶ谷にあるトルコ料理店ボスボラス ハサンです。ボスボラス ハサンは1993年、リザさんのお父様ウナル・ハサンさんが創業。現在は、市ヶ谷店と新宿2丁目店の2店舗をシベルさんとリザさんのご夫婦で経営しています。本国そのままの料理が味わえるとあって、在日トルコ人の皆さんにも大変愛されているお店です。まずは、シベルさん、リザさんにサルチャについて伺いました。

アキユルドズ・シベルさんとリザさんのご夫婦。
リザさんのお父様ウナル・ハサンさんは、トルコ国内でレストランを経営。
1987年に来日し、日本初のトルコ料理店でシェフとして5年間働いた後、「ボスボラス ハサン」をオープンした。

「サルチャは、主にトマトを材料にした調味料です。昔はどの家でも、夏になると旬のトマトを買い込んで、1年分のサルチャを手づくりしていました。安価にトマトを保存する方法だったのだと思います。私の祖母が、大量のトマトを買ってきて、干して発酵させ、煮込み、瓶詰めにしていたのをよく覚えています」とリザさん。シベルさんも「パンの上に自家製のサルチャでつくったソースを塗って、おやつにして食べていました」と言います。こうしたシンプルな食べ方は、今ではあまり見かけなくなったそうですが、幼い頃の思い出として、シベルさんの記憶に残っているそうです。

「食べてみてください」と、シベルさんにいただいたサルチャは、とても濃厚で、トマトの旨味がぎゅっと詰まっています。まさにトルコ料理のベースとなる味。人々は、トマトのおいしさを一年中味わおうと、発酵食にして保存性を高めたのです。サルチャがあれば、塩やオリーブオイル、にんにくなど、料理ごとに味付けを変えながら、さまざまな料理を生み出すことができます。

トルコ料理になくてはならない発酵調味料「サルチャ」。“トルコの味噌”とも言われている。

しかし、季節の風物詩でもあったサルチャづくりもだんだんと見かけなくなっていき、特に都会では瓶詰めのものを購入する家庭がほとんどになったそうです。

「でも、今また状況が変わってきました。私の母は市販のサルチャを使っていましたが、健康志向や手づくりブームの高まりによって、最近は若い世代が再びサルチャをつくるようになっています。トルコに住む私の友人も毎年つくっているそうですよ」

さまざまな味を生み出す
サルチャの魅力

サルチャには、トマトを材料にするものと、赤ピーマン(パプリカ)を使うものがあるそうです。

「トマトと赤ピーマン、どちらのサルチャを好むのかは、地域によっても異なるようです。ボスボラス ハサンでは、トマトを原材料にしたサルチャを使っています」

本場のトルコ料理が食べられるため、古くからのお客様や在日トルコ人の皆さんが多く訪れるボスボラス ハサン。

スープやケバブ、煮込み料理など、さまざまな料理にトマトのサルチャを使っていると言います。

「メニューにある料理の多くにサルチャを用いています。お客様にお伝えすると、どれもトマトの味?と驚かれるのですが、サルチャは、味付け、使い方によって、まったく異なる味わい、料理になるんですよ。
たとえば、『イスケンダルケバブ(牛焼き肉そぎ切りトマトソース)』は、トルコのブルサという町の伝統料理。カットしたピタパンの上に、牛肉を重ね、香辛料などを加えたサルチャベースのソースと溶かしバターをかけた料理です。ヨーグルトと一緒に食べるとさっぱりとしておいしいですよ」

ブルサの郷土料理「イスケンダルケバブ」。サルチャのおいしさが味わえる人気の一品。

また、煮込み料理もトルコ料理の定番だ。

「例えば『カヌルバハル』も人気のあるメニューです。カヌルはトルコ語でカリフラワーのこと。大きめにカットしたカリフラワーとチキン、野菜をサルチャを使ったソースで煮込んでいます。ほかにも、マントゥと呼ばれるトルコ風の水餃子にもサルチャを用いています。サルチャなしに、トルコ料理をつくるのは難しいですね」

バラエティあふれる
郷土料理を楽しめるトルコ料理

リザさんはイスタンブール出身、シベルさんはチョルムという街の出身で、互いに味の好みは似ているそうですが、トルコには各地に個性的な郷土の料理があり、土地ごとに材料や味付けも変わります。

「たとえば、ウルファ(シャンルウルファ)は唐辛子の名産地。ですからウルファ出身の人は辛い料理が好きなことで知られています。サルチャの味付けも、ぴりりと辛いですね」

ウルファの郷土料理として有名なのは、『チーキョフテ(生肉のハンバーグ)』。赤ピーマンのサルチャ「ビベルサルチャ」を用いた辛い料理で、ザクロエキスをかけて食します。トルコ国内でも珍しいウルファならではの料理です。

トルコ産の美しいタイルに目を奪われる店内。トルコのムードを味わえる。

「他にも、黒海に近い都市はイワシ料理をよく食べますね。黒海で獲れる小イワシのことをハムシと言いますが、黒海名物の『ハムシピラフ』は、当店でも人気のメニューです。イワシとサルチャも相性がよく、とてもおいしいですよ」

海外を自由に旅できるようになるまで、まだもう少し時間がかかりそうですが、「サルチャ」が生み出すさまざまなおいしさを楽しむなど、食でトルコを旅してみるのもおすすめです。

ボスボラス ハサン 市ヶ谷店

ボスボラス ハサン 市ヶ谷店

住所:
東京都千代田区九段南4-4-5 榊原ビル1F
TEL:
03- 6431-8803
営業時間:
ランチ  11:30〜14:30
  ディナー 17:00〜23:00ディナー     17:00〜23:00
URL:
https://bosphorushasan.com/index.html

※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、営業日時が変更になることがあります。店舗にご確認ください。

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