発酵に恋して。
【矢沢心さん×宮間かや乃さん】
手づくり味噌のおいしさ以上の魅力とは?
2021/02/25
発酵に恋して。
2021/02/25
3人のお子さんを育てながら、女優やタレントとしてマルチに活動する矢沢心さんは、現在、手づくり味噌歴11年。そんな矢沢さんが最初に味噌づくりをするきっかけとなったのが、友人のフードコーディネーター・宮間かや乃さんの存在です。宮間さんが主催する「手づくり味噌ワークショップ」は、予約が困難なほどの盛況ぶり。
「自分の手で作る味噌には、おいしさ以上のメリットがある」と、みずからの経験から気がついたという矢沢さんと、食のプロである宮間さん。それぞれの立場から、手づくり味噌の魅力と味噌づくりのコツを教えていただきました。
矢沢さん(以下、矢沢):私が初めて味噌を手づくりしたのは2010年のことで、手づくりするようになる前は、市販の味噌を使っていました。2種類をブレンドするなど、自分なりに工夫はしていたのですが、さまざまな種類の中から気に入った味噌の味に出合うのは、なかなか難しいと感じていたんです。
そんなときに、かや乃さんから手づくり味噌の話を教えていただいて……。「まずは食べてみてください」と分けてくださった味噌が、すごくおいしかったんです。甘くて、まろやかで、特に味噌汁にしていただいたときの優しい味に驚いて、「これはぜひ自分でも作ってみたいな」と思いました。
宮間さん(以下、宮間):夫の母から伝授された宮間家の味噌は、大豆の量に対して混ぜる糀の量が多いので、甘くてリッチな味わいになるのが特徴です。材料は、北海道産の大豆と富山県産のコシヒカリで作る生米糀、そして能登塩のみ。また、家族の健康を考えて、塩分を控えた配合になっています。そのまま食べてもおいしいですし、味噌汁のほか、調味料として使うのもおすすめです。心さんは普段、味噌を調味料として使っていますか?
矢沢:我が家は味噌汁でいただくことが多いですね。
宮間:例えば、ホワイトソースを作るときにコンソメの代わりに味噌を入れると、コクのあるホワイトソースになります。それを里芋のドリアにするなど、味噌は洋風なお料理にも使えるんですよ。
矢沢:おいしそう! ソースをそのまま、里芋やじゃがいもにかけても良さそうですね。
宮間:味噌って、意外と使い勝手がいいんです。ほかにも、にんにくを入れてにんにくソースにするのもいいですし、夫の母はよく、しょうがを入れてしょうが味噌を作っています。それから、容器に入った味噌の表面に少し凹みを作っておくと、溜まり醤油のような液体が溜まるので、それでお刺し身を食べてもおいしいですよ。
矢沢:トロッとしておいしいんですよね。でも、そんなにいろいろな料理に使えるとは知りませんでした。私がおもしろいなと思うのは、手づくりの味噌は菌が生きているので、仕込みから半年、1年……少しずつ味が変わっていくこと。もちろん、年によっても同じ材料なのに味が違いますし、それがわかるのも手づくりならではだなと思います。
宮間:菌が生きている味噌は、腸内環境も整えてくれますからね。
矢沢:手づくりの味噌を作るようになって、家族に変化がありましたね。まずは夫が「おいしい!」と喜んでくれて。そこから毎年作り続けて11年間、子供たちは基本的に私が作った味噌を食べています。ですが、たまたまその味噌が切れてしまったときがあって、市販の味噌を使ったところ、夫も子供たちも、「全然違う!」って。すぐわかるんですよね。
それほど自分の生活の中にも、子供たちの食育の中にも、この味噌が根づいていることがわかったので、これからも作り続けていこうと思いました。でも、そこに義務感はなく、「楽しいから続けている」というのが本音です。
「家族や自分のために味噌を作ろう!」というのもありますが、かや乃さんとお話ししながら、楽しく時間を活用しているって感覚のほうが大きいです。味噌づくりって大変なイメージがあるかもしれないですけど、私は全然そんなことなくて。むしろ、毎年仕込みの時期が来たら、かや乃さんと何を話そうかなって(笑)。私のライフワークのひとつになっていますね。
宮間:本当ですか?うれしいです!実際、心さんのところは3人のお子さんが、私にも中学1年の子供がいるので、普段はなかなかゆっくりお話しする時間が取れないんですよね。なので、私も心さんに味噌づくりに来ていただくのが毎年楽しみなんです。
矢沢:かや乃さんのワークショップには、親子で参加される方も多いと思うんですけど、子供たちにとっては、とてもいい経験になるんじゃないかなと思います。
宮間:心さんが味噌を作り始めた当時は、まだ周りに自分で味噌を作っている人っていなかったんじゃないですか?
矢沢:そうですね。今でこそ、私もほかの友人から「いっしょに作らない?」とお声掛けいただくこともありますが、最初は誰も味噌を自分で作ってはいませんでした。でも、一度手づくり味噌を食べた人の多くは、自分でも作ってみたいとか、海外に住んでいるお友達なんかも持って帰りたいとか言ってくれるんですよ。
それに、やっぱり体に入れる物なので、どんな材料を使って、どんな風にできているかがわかると安心ですよね。自分で作れば、それを知ることもできます。味噌を手づくりするのが流行っているのも、おいしいからだけじゃなくて、そういう安心感であったり、作った人の愛情がこもっていたりするところが、多くの人に届いているからだと思っています。
宮間:私自身もそうだったんですが、味噌を手づくりすることで、それまで顆粒出汁を使っていた人が、「せっかくだから昆布やかつおぶしで出汁を取ってみようかしら」ってなることが多いんです。また、ご家庭では、味噌汁を飲まないのに、ワークショップでお子さんが試食の味噌汁をおかわりする姿を見て、お母さんがびっくりするなんてこともあるんですよ。
矢沢:手づくり味噌の優しい味わいは、おいしいことはもちろん、お母さんたちの食に対する意識改善にもつながるのかなと思います。
最初はどうしても「大変なのでは?」と敬遠してしまう人も多いと思いますが、私のように仲間や家族といっしょに恒例行事のようにすれば、思い出もたくさん詰まった格別な味噌が味わえるのではないかと思います。ぜひたくさんの人に、味噌を手づくりする楽しさを知ってもらいたいですね。
ファッションモデルとしてCMや舞台出演などの活動を経て、現在はフードコーディネーターとして雑誌やCM、ウェブ広告の調理・スタイリングの仕事に携わる。2006年に結婚後、夫の母が30年以上作り続けている手づくり味噌に感動し、味噌づくりの楽しさや食の大切さを伝えていきたいという思いから、2010年より「手づくり味噌ワークショップ」を主催する。プライベートでは13歳の野球少年の母。
Instagram @kayanomiyama
女優やタレントとして活動するかたわら、夫の元K-1 WORLD MAX世界王者・魔裟斗氏の妻、そして3児の母として、ヘルシーレシピの研究も熱心に行う。趣味は子育て、料理など。2018年には自身の不妊治療の経験をもとにした夫との共著『夫婦で歩んだ不妊治療』(日経BP)を出版。食育インストラクターやペットセラピストの資格も保有するなど、マルチな才能の持ち主でもある。
オフィシャルブログ「コロコロこころ」
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