暮らしの中の、小さな知恵

料理は自立につながる第一歩。
子供と楽しむ「初めての料理」

発酵美食×暮らし上手

2021/09/02

料理は自立につながる第一歩。子供と楽しむ「初めての料理」
料理は自立につながる第一歩。子供と楽しむ「初めての料理」

現代は昔とは異なり、性別や年齢も関係なく誰もが厨房に入る時代。子供のうちから料理の楽しさを知り、生きるために欠かせない「食」への興味と関心を育ててあげたいと願うパパやママは多いものです。
「小さいうちから料理に親しむことで、体に必要な栄養をバランス良く取り入れる味覚が育ちます」と話すのは、管理栄養士・料理家の中村美穂(なかむらみほ)さん。主宰する料理教室では、2歳頃からできる調理の基本を交えたレシピで、子供の「楽しい!」を引き出しています。

そんな中村さんに、幼児から小学校低学年くらいの子供と初めて親子で楽しむための料理づくりのコツと、家庭で簡単に試せるおすすめの発酵レシピを2つ教えていただきました。

料理づくりの工程は、
五感を刺激し創造性を育む

子供といっしょに料理をするにあたって、「どこまで何をやらせるか」は悩み所です。全部やらせるのは荷が重いし、かといって一部だけでは楽しさが半減してしまいそうと、料理づくり自体を躊躇してしまうご家庭も少なくありません。そこで、中村さんが推奨するのが、簡単な手順で五感をたっぷり使えるレシピです。

管理栄養士・料理家の中村美穂さん。

「ミニピザ」は、完成までに「混ぜる」「こねる」「切る」「伸ばす」「塗る」「のせる」「焼く」といった調理を一通り経験できる上、どの工程も子供一人でチャレンジできるので、作り終えたときの達成感が大きいといいます。

「生地の成形やトッピングのプロセスで、五感を刺激し創造性をはぐくむことができるミニピザは、家庭で始められる親子クッキングの定番。ほとんど失敗することもなく、子供もやりがいを感じられるため、食欲が増すこと間違いなしです。発酵パワーと野菜を取り入れ、栄養価も満点なので、休みの日などに、ぜひ親子で挑戦してみていただきたいですね」

発酵食品のヨーグルトで生地づくりも簡単に!
「ミニピザ」

  • [材料](作りやすい量:およそ6個分)
    ホットケーキミックス1袋(200g)
    プレーンヨーグルト2分の1カップ(100g)
    オリーブオイル小さじ1
    トマトソース トマトピューレ大さじ3、ケチャップ大さじ2
    ピザ用チーズ適量
    ミニトマト3個
    オクラ2本
    カラーピーマン1個
    とうもろこし3分の1本
    しらす干し適量
  • [作り方]
    1. ホットケーキミックスにヨーグルトとオリーブオイルを混ぜて生地を作る。
    2. とうもろこしは皮をむいてヒゲを取り、実をほぐす。ミニトマトはヘタを取り半分に切る。ピーマンは種を取り、オクラとともに一口大に切る。
    3. 生地を6等分にし、指先を使って薄く伸ばす。
    4. トマトソースを塗り、チーズとトッピングをのせて、1000Wトースターまたは180℃に予熱したオーブンで10分ほど焼く。

「1」の過程で混ぜる、こねる、「2」の過程で切る、「3」の過程で「伸ばす」、「4」の過程で塗る、のせる、焼くが、それぞれ経験できます。

混ぜる、こねるときのポイント

片手をグーパーするようにして、生地をまとめていきます。ボウルの周りの粉もすべて取り切りましょう。どうしても取り切れない粉は、親がヘラなどを使ってサポート。手がべたつくのを嫌う子は、ポリ袋で混ぜてもOKです。

切るときのポイント

包丁を使うのが初めての子は、オクラやきゅうりなど細長く、やわらかすぎず硬すぎない物からチャレンジするのがおすすめです。子供用の包丁をまっすぐ持たせ、野菜を押さえる手は「猫の手」にして指先を守ることを教えたら、こするように手前に引いて実際に切らせてみましょう。

生地を分割するときは、「まずは3つ、同じ大きさになるように切って」などと声をかけると、学校の算数の勉強につながる、「数量の感覚」を養う練習にもなって一石二鳥です。

伸ばすときのポイント

6等分した生地をそれぞれ丸めたら、くっつかないホイル(オーブンならクッキングシート)に並べて、指先を使って伸ばします。サクッとした食感を楽しみたいなら、生地の厚さをやや薄めにします。

のせるときのポイント

トッピングは家にある具材を使って、子供の発想に任せましょう。野菜の色や形を楽しんだり、トッピングで顔の模様を作ったりと、子供のアイディア次第でオリジナルのピザが完成! 想像力、発想力が育ちます。

「お手伝いしたい!」
気持ちに応えてあげる

子供がある程度の年齢になり、料理に興味を持って「お手伝いしたい!」と言い出したら、できるだけ応えてあげたいもの。でも、まだ幼く包丁を使うには早いと感じた場合は、「手でちぎる」からのスタートがおすすめだと中村さん。

「まだ本格的なお手伝いをするには小さい子も、素材に向き合う時間を作ってあげることはとても大切です。将来、料理を楽しみ、自分の体を作っている食べ物に関心を持ち、栄養の過不足に気づけるように、簡単なことから始めてみてはいかがでしょうか」

即席漬けも発酵食品で味わい深く!
「ヨーグルトと塩糀の即席漬け」

  • [材料](1人分)
    キャベツ1枚
    きゅうり1本
    プレーンヨーグルト大さじ1
    塩糀小さじ1程度
  • [作り方]
    1. キャベツは手でちぎる。きゅうりは半月薄切りにする。
    2. (1)をポリ袋に入れる。
    3. ヨーグルトと塩糀(お好みで、出汁昆布やオリーブオイルを少し加えてもOK)を(2)に入れてよく揉む。

キャベツは、手でちぎる練習に最適。きゅうりは、包丁の練習におすすめの食材です。
混ぜたり揉んだりするプロセスは、ビニール袋の口を閉じて、押したり、右手と左手でキャッチボールのように軽く投げたりと、子供のやり方にお任せしてしまいましょう。簡単で散らからないので親の負担が少なく、子供も「パパ・ママに頼らず、自分でやっている」「料理をしている」と、喜びや達成感を味わえるはずです。

「楽しい!」が子供の
料理スキルを伸ばす

「料理スキルは将来、必ず役に立つものだと思います」と話す中村さん。ですが、無理矢理やらせようとしても身につかないのは勉強と同じ。何かしらの成功体験を得て、「楽しい!」と思わなければ、子供はなかなか自分からやる気にはなりません。親子でいっしょに料理をする機会を通して、無理なく子供の興味を伸ばしていくことが大切だといいます。

「料理が好きになれば、近い将来、親に代わって御飯の準備をしてくれる日が来るかもしれません。料理教室には、『子供が率先してお手伝いをしてくれるようになった』『食べることに興味がわくようになった』『料理する親の姿を見て、ねぎらってくれるようになった』といった子供の変化を感じたという声も多数寄せられています。将来に向けて、お子さんに少しずつ料理の習慣を根づかせていきましょう」

出来上がった料理を、「いただきまーす!」

中村美穂(なかむらみほ)さん

中村美穂(なかむらみほ)さん

中村美穂(なかむらみほ)さん

保育園栄養士として乳幼児の食事づくりや食育活動、地域の子育て支援事業に携わる。2009年に独立後、日々の暮らしに「おいしい楽しい食時間」をモットーに、料理教室や離乳食教室を開催。食育講座の講師のほか、書籍・雑誌やテレビなどのレシピ監修に携わる。

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