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暮らしの中の、小さな知恵
子供の味覚を育てる「幼児食」。
手をかけすぎず、素材を活かす工夫を
2021/09/09
子供の味覚を育てる「幼児食」。手をかけすぎず、素材を活かす工夫を
暮らしの中の、小さな知恵
2021/09/09
離乳食を完了した、1歳半から6歳くらいまでの子供にとっての食事である幼児食。巷にノウハウがあふれる離乳食に比べて、幼児食はどこか「親任せ」感の強い傾向があります。離乳食から移行した途端、突然ぽんと放り出された気がして、心もとない気持ちになるというママやパパも多いのではないでしょうか。
ここでは、「大人と同じ物を食べさせていい?」「調理の注意点は?」といった悩みを抱えるパパやママに知ってほしい幼児食づくりのポイントとおすすめ発酵レシピを、管理栄養士・料理家の中村美穂さんに教えていただきました。
離乳食を卒業後、大人の食事へと徐々に移行する準備期間でもある幼児期。この時期に食べさせる幼児食は、どんなことに気を付けていけばいいのでしょうか。中村さんが挙げるポイントは、主に下記の3つです。
幼児期では、ほぼ大人と同じ物が食べられるようになりますが、「未発達な部分も多いので、注意が必要」と中村さん。特に、この時期の食事を通してはぐくまれていく「味覚」と「食べる力」には配慮したいところです。
・味覚
主に甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5つで構成される味覚。この発達を阻害する可能性があるのが、濃い味や強い刺激です。できるだけ薄味を心掛け、辛味のある香辛料などの刺激物は控えめにしましょう。
「お菓子やジュース、味の濃い加工食品には要注意です。依存性があるので、一度子供に与えてしまうとそればかり求めて、食事が進まなくなる原因になります。体に必要な栄養をバランス良くとる味覚を育てるために、大人が気を付けてあげましょう」
・食べる力
食べる力は、栄養を吸収する体の基本的な機能としての力と、食具を使いこなす力の2つに分かれます。噛み応えがある物を少しずつメニューに加え、咀嚼、嚥下、消化といった体の機能を鍛えましょう。
「離乳食期の手づかみ食べで習得した動きを、食具を使って食べ物を口に運ぶ動きへと発展させます。食具は、お子さんの手や指を動かすための機能の発達を促すことにも適しています」
幼児食は、将来にわたる食生活の土台になるもの。中村さんは、この期間にできるだけ多く「食の経験」を重ねることが大切だと言います。
「食の経験は、いろいろな食材を味わうこと、食事づくりに参加すること、周りの人と楽しく食べることで積むことができます。好き嫌いがあっても、栄養バランスに支障がない範囲なら、親はあまり気にせずに、旬の食材を中心にさまざまな食材にふれる機会を作ってあげてほしいですね」
幼児食づくりの最大のコツは、「手をかけすぎず、食材そのものを味わうこと」だと中村さんは言います。
「何を作るかよりも、何で作るかが重要です。できるだけ良質な食材を選びましょう。良質な食材というのは、高級な物というわけではなく、例えば産地がはっきりしている物、新鮮な物、農薬や化学肥料の使用が少ない物などです。食材の味がダイレクトに伝わるように、調理工程はシンプルにします」
ここからは、中村さん考案の親子でいっしょに食べられる、幼児食の発酵レシピを3品ご紹介します。
3. オーブンシートを対角線に置き、(1)と(2)をのせて水をかける。
火を使わず、短時間でできる上、洗い物も少ないメニューです。野菜を切ったりちぎったり、オーブンシートで包んだりする工程は、子供といっしょに楽しむこともできます。
「ヨーグルトを加えたソースはさっぱりして、減塩やカルシウム補給効果もあります。大人はコショウや大葉、小ネギなどの薬味を添えることで、味の満足感を高めることができますよ。親子いっしょのご飯は、調理の効率化に加え、大人は減塩でヘルシーに、子供は親が同じ物を食べる姿を見ながら食事を楽しめるので、安心感を得られる、食欲が増すといったメリットがあります」
バテぎみで食欲がないときも食べやすく、元気が出る一品です。
「わずか5分でできて、たんぱく質もしっかり摂取できるお助けメニュー。時間がなかったり、食欲が出なかったりする朝にもぴったりです。大人はわさびや、大葉などの薬味をのせてもいいですし、オリーブオイルや醤油を足すのもおすすめですね」
かつお薄削りや刻み海苔だけでなく、トッピングになる食材をたくさん用意しておくと、子供にとっても食事がより楽しくなるそうです。
「いくつかの選択肢から、自分の好みのトッピングを選ぶだけで子供はわくわくしますし、トッピングによる味の違いを感じる、かけることによってその食事がよりおいしくなる、彩りが良くなるなど、さまざまなことを体感できます。『桜えびはカルシウムがいっぱいだよ、ミネラルもとれるね』などと親が話しかけながら子供にトッピングを選ばせてあげましょう」
これらのトッピングの活用方法として、ふりかけを作るのもおすすめと中村さん。
「市販のふりかけは、幼児には少し塩分が多く、化学調味料や添加物が含まれていることも。味覚を育てる幼児期には、なるべく控えめにしておきたいですね。かつお節、桜えび、ちりめんじゃこ、ゴマ、海苔など、家にあるものを混ぜるだけで、おいしい自家製ふりかけができますから、ぜひトライしてみてください」
「魚と野菜のレンジ紙包み蒸し ヨーグルト味噌ソース」で余ったヨーグルトで作れます。1、2歳頃でもバナナの皮をむいたり、レーズンを散らしたりすることはできるので、親子クッキングにもおすすめです。
「忙しくても、食後の10分でできる親子クッキングのレシピとしてよくご提案しています。我が子が食べることに積極的ではないとお悩みの方には、一度試していただきたいですね」
食事の「量」を確保しにくい幼児期、デザートで栄養補給できるこうしたレシピはとても便利。
「プレーンヨーグルトの酸味や、砂糖ではなくフルーツの自然な甘味に舌が慣れることで、お菓子に依存することを予防できますよ」
幼児期には、よく食べる子なら栄養過多、食べない子なら少食や偏食による栄養不足に陥ることも。子供の健診結果を見ながら、無理なく適切な栄養補給を心掛けましょう。
子供の味覚を育てることは、大人の味覚を再育成することにもつながります。
「幼児食を上手に活用して、大人も食事の塩分量などを見直せるといいですね。ほんの少し気を付けるだけで、きっと体調に変化が生まれ、心身の健康へとつながっていくと思いますよ」
保育園栄養士として乳幼児の食事づくりや食育活動、地域の子育て支援事業に携わる。2009年に独立後、日々の暮らしに「おいしい楽しい食時間」をモットーに、料理教室や離乳食教室を開催。食育講座の講師のほか、書籍・雑誌やテレビなどのレシピ監修に携わる。