発酵を訪ねる
街を変える!?
ビール好き注目の
「Omnipollo」の魅力
2021/11/11
発酵を訪ねる
2021/11/11
日本の金融街として知られる東京の日本橋兜町では、従来のイメージを覆すような新しい街づくりが進んでいます。その一角を担うのが、スウェーデン生まれのクラフトビールとライフスタイルのブランド「Omnipollo(オムニポヨ)」です。
新進気鋭の若い世代が、変革を目指して生み出す個性的なクラフトビールは、発酵の世界にも革命を起こしてくれるかもしれません。Omnipolloの魅力や今後の展望について、「Omnipollos Tokyo」のコミュニケーション・マネージャーである澤本佑子(さわもとゆうこ)さんに伺いました。
再開発が進む兜町の大通りを1本入ると、「おもしろい出会いがありそう」な飲食店が並んでいます。ジャンルを超え、ワクワク感に魅せられて集結したという飲食店の若きオーナーたちが、「新たな兜町の文化を皆で作っていこう」とするその雰囲気は、とてもエネルギッシュで魅力的です。
Omnipolloのアジア初の直営店である「Omnipollos Tokyo」は、そんな兜町の古き良き雰囲気を残した路地にあります。兜町のビジネスパーソンが多く集った鰻屋をリノベーションしたという、とても趣のある築70年の木造建築が目印です。
「Omnipolloを共同設立したデザイナーのカール・グランディン(Karl Grandin)と醸造家のヘノク・フェンティ(Henok Fentie)は、東京にバーを開きたいと漠然と思っていたんだそうです。古き良き日本の伝統を残しつつ、街をアップデートしていこうとする兜町の取り組みを知り、伝統的なビール醸造において変革を目指す自分たちの理念と共通するものを感じたことが、出店の決め手になったと聞いています」
変革を試みるその姿勢は、昔ながらの引き戸を開けた途端に広がる、特徴的な内装からも感じることができます。床と壁は明るいスカイブルーで、さまざまな色が溶け合うように塗られたテーブルが並び、ガラス製の円盤型照明がきらきらと不思議な光を放っています。一気に、別世界へと引き込まれるようです。
「デザインのテーマは、『Dissolving Borders of Perception(認識の境界線を溶かす)』。壁が天井なのか、天井が壁なのかわからなくなるような、ほろ酔いの気分にも似た世界観を演出しています。私たちはビールブランドを基本とし、ファッションやアートを含めたライフスタイルブランドでもあるので、ここで提供するすべてのものが混ざり合っていくような不思議な感覚を味わってもらえたらと思っています」
Omnipolloのビールは、お店のコンセプトと同様、ビールに対する認識が変わる個性的な味わいが魅力です。料理からインスパイアされたというフレーバーが特徴で、マンゴーやベリーなどのフルーツフレーバーや、ナッツやバニラを使ったもの、Omnipolloのフラグシップビールであるシャンパン酵母を使用したものなど、どれも新鮮な驚きを与えてくれます。
その味はよく、「Brain Melting(脳が溶けそうになる味わい)」と評されるのだとか。
お店に並ぶビールは、常時11種類。
カウンターの前に掲げられたメニューに、品名と並んで度数や商品の説明が書かれているので、これを参考にしたり、店員さんとコミュニケーションをとったりしながら、好みのビールを選ぶのも楽しそうです。
「私が好きなのは、人気の高いビアンカシリーズです。種類はさまざまありますが、乳酸発酵の爽やかな酸味を感じさせるものなど、とても個性的でおいしいですよ。たくさん種類を飲みたい方や飲む量が少ない方は、小さいグラスを選ぶのがおすすめです」
従来のビールの概念にとらわれないOmnipolloでは、食べ物とのコラボも多数行われています。これまでに、Omnipolloの濃厚な味と香りに特徴を持つインペリアルスタウトの「Noa Pecan Mud Cake(ノア ピーカン マッドケーキ)」をたっぷり使った羊羹や、ビールの代わりに麦を使ったオリジナルティーによる和菓子とのコラボのほか、ホップの苦味や香りが魅力のセッションIPA「Arzachel(アルザチェル)」を生地に使って焼き上げたたこ焼きとのコラボなど、斬新な組み合わせを多数提案してきました。
「今後は、おにぎりスタンドとのコラボなども考えています」と澤本さん。「ビールに合うおつまみ」「ビールを使った料理」という決まりきったイメージから脱却し、豊かな発想でビールと食事のペアリングを考えるきっかけにもなりそうです。
「常に思っているのは、ここをビールファンだけのお店にはしたくないということ。ビールが好きな方はもちろん、何の情報も持たずにお店の外観に惹かれてふらっと入ってみた方や、近隣のお店に来たついでにちょっと立ち寄ってみた方にも、スペシャルな体験を提供できるお店でありたいんです」
そんな澤本さんは、アメリカに留学してデザインを学んだ後、デザイナーとして関わっていたイベントでOMNIPOLLO JAPAN株式会社代表の松井明洋氏とOmnipolloに出会い、ビールのおいしさとデザインのカッコ良さに惹かれて今に至ったといいます。
澤本さんを虜にした、自由で遊び心あふれたデザインは、缶や瓶のラベルやグラス、さらにはTシャツなど、アパレル商品にも反映されています。
「コロナ下では、Omnipolloの味とデザインをご家庭でも楽しんでいただけるよう、テイクアウトやECにも力を入れていました。遠方でなかなか足を運べない方や、Omnipolloの雰囲気を知りたい方は、ぜひのぞいてみてほしいですね」
コロナ禍が収束した後の展開について、澤本さんは「地元・兜町のお店と組んでビールと食事のツアーの企画や、各地のビアフェスにも積極的に参加して、Omnipolloの世界観を広めていきたい」と話します。
「このエリアには、私たちを含めて現在5つの独立系飲食店が集まっています。豊かな才能があふれているお店ばかりなので、いっしょにこの兜町という街の可能性を広げていけたらいいですね。これまでと同様、ビールの枠にとらわれないアイディアで、ライフスタイルブランドとして確立していけたらと思っています」