発酵を訪ねる

深川醗酵所が提案する、
発酵の世界との新しい関わり方とは?

2022/01/13

深川醗酵所が提案する、発酵の世界との新しい関わり方とは?
深川醗酵所が提案する、発酵の世界との新しい関わり方とは?

深川不動尊や富岡八幡宮のある東京・門前仲町は、下町情緒あふれる歴史ある街。その一角に20218月、「深川醗酵所」がオープンしました。
発酵の世界を、「かう・すごす・まなぶ」の3つの角度から楽しめる複合飲食施設として、1階に発酵をテーマとしたデリと日本酒を中心とした飲料のテイクアウト、2階は酒粕、味噌、塩麹など「麹」をつかった料理とお酒とのペアリングを楽しめるBARを併設。全国の酒蔵から取り寄せた日本酒のほか、日本の発酵文化を取り入れた料理がそろいます。異なるアプローチで発酵の魅力を発信する、深川醗酵所が目指す未来とは?

始まりは、
上田酒店デザイン事務所が手掛ける
「醗酵所PROJECT」

深川醗酵所をプロデュースするのは、大阪にある上田酒店デザイン事務所です。およそ80年前に小さな酒屋から始まったという同社は、時代とともに変化するニーズを柔軟に取り入れてきました。
お酒の販売のみならず、お酒をテーマとした飲食店の経営から海外進出まで、その事業内容は多岐にわたります。その知識とノウハウを活かし、お酒のことをトータルで考えられるデザイン事務所として、2019年に開業しました。

商品開発や販売、プロモーションの提案といった事業を手掛ける一方、「売るためにつくるのではなく、つくりたいからつくる」をモットーに、さまざまなメンバーが集まって「醗酵所PROJECT」を発足します。
発酵の文化と魅力を伝えていくことを目的とし、京都に「梅小路醗酵所」を、大阪に「BAR AND SPACE 扇町裏醗酵所」を出店。それらに続く深川醗酵所の運営は、醗酵所PROJECTのメンバーに名を連ねる日本酒輸出専門問屋である海琳堂が担っています。

深川醗酵所店長の佐藤裕子さん。

深川醗酵所の店長である佐藤裕子(さとうひろこ)さんによると、海琳堂は、全国各地の酒蔵から仕入れた日本酒を海外へ輸出する事業をメインとしながら、20207月に、200種類以上の酒類を扱う小売店「梅酒屋ガレージ東京×Sake Shop 海琳堂」をオープン。そこからわずか1年で深川醗酵所を出店したのには、こんな想いがあったといいます。

「深川醗酵所では日本酒を中心としたお酒の販売のほか、テイクアウト用のデリメニューを充実させています。コロナ禍で外出が制限される日々が続いていたため、お酒とお料理の両方をご提供することで、家飲みをより楽しんでいただきたいと思いました」

1Fでテイクアウトができるデリメニュー。一部は2FのBARでも食べることができる。

蔵元とコラボした
オリジナルの日本酒もそろう

深川醗酵所の1階で購入できるお酒は、日本酒のほか、日本ワイン、クラフトビール、リキュール、ユニークな調味料なども揃えており、海琳堂が酒蔵とコラボレーションしたオリジナル商品も並びます。
実は、佐藤さんが海琳堂で働くことになったのも、同社の日本酒の豊富な品揃えが決め手だったのだとか。

「お酒の中でも特に日本酒が好きなんですが、扱っているお酒がとてもオリジナリティがあって、ほかの酒屋や飲食店にはない商品が多いんです。それがすごくおもしろいと思って働き始めました」

おすすめの「Oh Splash(オースプラッシュ)」は、一般的な日本酒のイメージを覆す自慢の逸品です。

「おすすめしたいのは、岡山県にある嘉美心酒造で作っていただいている、オリジナルのスパークリング日本酒Oh Splashです。瓶内二次醗酵による発泡性の純米酒で、通常の日本酒がアルコール度数1516度なのに対し、こちらは5.5度とかなり控えめ。グラスに注ぐとシャンパンのような繊細できめ細かな泡が楽しめるだけでなく、味わいも甘酸っぱくて飲みやすいので、日本酒ビギナーの方にもおすすめです」

どんな食事にも合うという、オリジナルのスパークリング日本酒「Oh Splash(オースプラッシュ)」。

オリジナルの取り扱いは日本酒のほか、リキュールも含めて約20種類。個性豊かな味わいはもちろん、ラベルも描き下ろしでデザインされた物もあり、見た目で選ぶのも楽しそうです。

日本酒には和食をというイメージを、
醗酵所が提案するペアリングで変えていきたい

2階にある「深川醗酵所BAR」では、ペアリングを楽しむことができます。日本酒に合わせるのは和食というイメージが強いですが、「その先入観を変えていきたい」と佐藤さんは話します。

「例えば、丿貫(へちかん) 純米吟醸のようなフルーティなお酒に、フルーツトマトの酒粕あえを合わせていただくと、よりフルーティさが増したおしゃれな組み合わせになるんです。
また、長期熟成された古酒は、通常の日本酒に比べて香りや味ともに芳醇なので、苦手な方もいると思いますが、これに牛すじ純米酒煮込みを合わせていただくと、お互いの味が絶妙にマッチします。それによって、古酒のおいしさに気づいていただけるのではないでしょうか」

ペアリングに迷ったときは、味の好みに合わせて日本酒に詳しいスタッフが提案してくれるそう。

また、メイン料理がお魚かお肉の2種類から選べるランチは、麹甘酒、副菜3種類、具だくさん粕汁、ごはん、プチデザートがつく、味もボリュームも申し分ない内容となっています。

「メインの料理は2週間ごとに変更しています。メニューの構成は『体にやさしいランチ』をテーマに開発していて、飲む点滴ともいわれる麹甘酒を入れたり、麹をふんだんに使用していたりする料理が多いのが特徴です。
麹甘酒は、お客様から、ここで試しに飲んでみたら『意外とおいしかった』と言っていただくことも多いです。

先日はハンバーグを八丁味噌とココナッツを合わせたソースでご提供したら、この組み合わせは珍しいと驚かれる方もいらっしゃいました。お酒とお料理のペアリングもそうですが、食材と発酵食材の組み合わせでも、オリジナリティあふれる物をご提供できたらと思っています」

発酵を取り入れ、アイディアに富んだ料理を提供する深川醗酵所には、ランチタイムはもちろん、夜のバータイムも、お一人で訪れる女性が多いといいます。

「オープンする前はご近所にお住まいの方や、門前仲町で働いている会社員が多くいらっしゃるかと思っていたんです。でも、いざオープンしてみると、発酵というキーワードに興味をお持ちの女性が、遠方からでも足を運んでくださっています。そういったお客様のニーズに合わせていくのはもちろん、スタッフも女性が多いので、女性の感性を活かしたメニューを開発していきたいですね」

日本酒や発酵文化を、
リアルな体験を交えながら
発信するお店を目指したい

深川醗酵所のこだわりは、お酒とお料理だけではありません。おしゃれな酒器やお皿といった食器にも目が行きます。

「日本酒はどの温度で飲むかによってはもちろん、酒器によっても味わいが変わります。バーでは、主に冷酒を飲むグラスは飲み口が薄い物を、お燗のときは専用の陶器の酒器をそろえています。
また、お料理を盛るお皿は、陶芸家の方にお店オリジナルの物を作っていただきました。お酒とお料理だけでなく、お店で過ごす時間や空間も合わせて、トータルで楽しんでいただけたらうれしいですね」

オープンから日本酒と発酵料理に対する自分たちの想いを、ひとつずつ形にしてきたそうですが、佐藤さんは「まだまだやりたいことがたくさんあります」と話します。

「いずれはバースペースを利用して、ワークショップのほか、発酵や日本酒について学べるセミナーを開催したいです。お店でただ食べる、買うというのではなく、お客様が体験できることがプラスされていくようなお店を目指していきたいと思っています」

深川醗酵所

深川醗酵所

住所:
東京都江東区門前仲町2-6-2
TEL:
070-7477-7459(営業中のみ)
営業時間:
1階11:30~21:00  2階11:30〜14:30(L.O.14:00)/ BAR 16:00~23:00(L.O.22:00)2階11:30〜14:30
(L.O.14:00)/
BAR 16:00~23:00
(L.O.22:00)
営業日:
年中無休
URL:
https://hakkojo.com/shop/fukagawa/

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