発酵を学ぶ
気分に合わせて楽しみ方は無限大。
人生を豊かにする「紅茶の基本」
2022/02/17
発酵を学ぶ
2022/02/17
欧米を中心とした諸外国では、お茶といえば紅茶が一般的。日常生活に欠かせない飲み物として、アフタヌーンティーの優雅なひと時を彩る一杯として、さまざまなシーンで愛飲されています。
とはいえ、「紅茶の飲み方がわからない」「たくさん種類があって、何をどう選んでいいか悩んでしまう」という方も多いかもしれません。ここでは、その日の気分や合わせるお菓子によって多彩な楽しみ方ができる紅茶の基礎知識を、オーストリア・ウィーンに本店のあるティーブランド「デンメアティーハウス」の広報・秋元陽菜(あきもとひな)さんに教えていただきました。
紅茶の原料は 、緑茶やウーロン茶と同様の茶の木です。採れた茶葉を発酵させない緑茶、少しだけ発酵させるウーロン茶に対して、紅茶は茶葉を完全に発酵させるのが特徴。発酵過程で生成される成分に高い殺菌力があり、芳醇な香りには深いリラックス効果が期待できることから、その味わいだけでなく、健康や美容面の観点でも注目を集めています。
さらに、種類が豊富で、香りや味わいを比較しながら選ぶことができるのも紅茶の魅力のひとつ。秋元さんが広報を務めるデンメアティーハウスでは、100%ナチュラルの原料を使った茶葉を300種類以上ラインナップしています。東京・六本木にある国内の店舗でも、常時80種類程の茶葉の香りを楽しみながら自分好みの紅茶を選ぶことができます。
これだけたくさんあると、どれを選んでいいのか悩んでしまいそうですが、秋元さんによれば「順番に絞り込んでいけば、そんなに好みを見つけるのは難しくない」とのこと。
「まずは、香りづけされているかどうかで大きく2つに分けましょう。茶葉本来の香りを楽しみたいなら、フレーバーをつけていない紅茶の中から選びます。最初は、コクがある、すっきりしているなど、ざっくりとしたイメージをお店の方に伝えて、アドバイスをもらうといいですね。
フルーツやスパイスの香りを楽しみたい方は、フレーバーティーがおすすめです。フルーティな香りの物、バニラのような香りの物などさまざまなので、実際に香りを確かめながら探していただくのがいいと思います」
フレーバーティーは、「気分やシーンに合わせて選ぶのもおすすめ」と秋元さん。ダイエット中ならお菓子を思わせる甘い香りの紅茶で満足感を得たり、気持ちがもやもやしているときにはグレープフルーツなど柑橘系の香りですっきりさせたりといった楽しみ方ができるそうです。
ノンカフェインの紅茶もあるそうで、就寝前でも安心して飲むことができます。
紅茶の選び方には、フレーバーの有無から絞り込んでいく方法のほか、茶葉の種類から決める方法もあります。紅茶の代表的な茶葉の種類と、その特徴を秋元さんに挙げていただきました。
・アッサム(産地:インド)
濃厚でコクがある味わいのアッサム。茶葉を丸める「CTC製法」で作られることが多く、短時間でも濃いめに出るので、ミルクティーに最適です。
・ダージリン(産地:インド)
ダージリンは、すっきり爽やかで、上品な渋みがあります。収穫期ごとに異なる風味も注目される、世界三大紅茶のひとつです。
・ニルギリ(産地:インド)
個性的すぎず、バランスの良い味と香りが特徴のニルギリ。シーンを選ばず飲める紅茶です。
・ウバ(産地:スリランカ)
ウバは、メントールに似た個性的な香りを持つセイロンティー(スリランカ産の紅茶の総称)です。
・ヌワラエリヤ(産地:スリランカ)
朝夕の寒暖差が生む、独特の渋みと香りが特徴のヌワラエリヤ。淡いオレンジ色ですが、味はしっかりとしています。
・キーマン(産地:中国)
キーマンは深い赤銅色で、渋みがなく甘みがあります。ダージリンやウバとともに、三大紅茶のひとつともいわれます。
ちなみに、デンメアティーハウスの一番人気は、ダージリンやスリランカ、中国産の茶葉をブレンドし、ジャスミンのつぼみ、ベルガモットを加えた「ザッハブレンド」です。
「オーストリアの最高級ホテルのひとつ、ホテル ザッハー ウィーンのオリジナルブレンドとして作られたフレーバーティーで、すっきりしたおいしさが魅力です。ザッハトルテのようなチョコレートのお菓子はもちろん、意外にも和菓子との相性も抜群ですよ」
せっかくおいしい紅茶を買っても、入れ方を間違えると残念な結果になってしまいます。おいしい紅茶を入れるために、必ず押さえたいポイントと手順についても知っておきましょう。
<紅茶のおいしい入れ方のポイント>
・汲みたての水道水を使うこと
・沸騰した直後のお湯を、茶葉の上から勢いよく注ぐこと
・ポットとカップにお湯を注ぎ、全体を温めておくこと
<デンメアティーハウスおすすめの入れ方>
1.お湯を沸かしているあいだにポットとカップを温めておく。
2.ポットに入れた人数分の茶葉の上から沸騰したお湯を勢いよく注ぎ入れます。デンメアティーハウスでは、1人分5gの茶葉に対して400㏄のお湯が基本です。
3.抽出時間は2分半から3分が目安。ミルクティーにするときは少し長めに蒸らしましょう。ただし、CTC製法の茶葉は濃いめに出るので、ミルクティーにする際も通常より抽出時間は短めで構いません。
「特に重要なのは、新鮮な水道水を使うことです。日本は軟水ですが、紅茶を淹れるのに適しているといえます。
また、汲みたての水道水には空気がたっぷり含まれていて、沸かして注いだときに茶葉が元気に踊る『ジャンピング』が起こります。ジャンピングが活発なほど、おいしい紅茶が抽出できると思ってください」
おいしい紅茶が入れられるようになったら、アレンジに挑戦してみましょう。レモンやミルクだけでなく、シナモンパウダーやハチミツを足すなど、アレンジの仕方はさまざま。組み合わせ次第で思わぬおいしさが引き出せるかもしれません。
自分好みの紅茶を手に入れたら、長くおいしく飲みたいもの。ですが、「どうしても紅茶は開封後、風味が落ちるので、長期保存はおすすめできない」と秋元さんは話します。
「保存する場合は、空気と光、湿度を避けて冷暗所に置いてください。ドアを開閉するときの温度変化で劣化してしまうので、冷蔵庫はあまりおすすめできません。『いいな』と思った紅茶の味わいを落とさないよう、なるべく早く飲みきってくださいね」
温かい紅茶をおいしく入れることができると、ほっとひと息つく時間も、より充実したものになるかもしれません。ご家庭でも簡単にできるので、チャレンジしてみてください。