ヘルシーフード探訪
笑顔をつなげる自然派ジェラート
「fun.ice!(ファンアイス)」
2022/07/01
ヘルシーフード探訪
2022/07/01
東京の中心とは思えないほど自然豊かな代々木公園。その森を眺めるように店舗を構える「fun.ice!(ファンアイス)」は、人工的な乳化剤や安定剤はもちろん、白砂糖や卵を使わずに、生産者から直接仕入れた旬の食材をふんだんに使った自然派のジェラート店です。「カラダにやさしくおいしいもの」を追及する、太田亜紀(おおたあき)さんと武山直義(たけやまなおよし)さんご夫婦にお話を伺いました。
「つい先月、ちょうど5年目に入りました。住宅街が広がっている立地柄、近所の皆さんにご利用いただくことが多く、おじいちゃんが散歩の途中に寄ってくれたり、子どもたちが学校の帰りに声をかけてくれたりもするんですよ。アイスのいいところは、小さい子どもからご高齢の方まで、老若男女問わずにみんなで食べられるところです」(太田さん)
2018年にオープンして以来、白砂糖や卵を使わないジェラートが、ベジタリアンやビーガンの方はもちろん、なによりも“おいしい”という理由でたくさんの方に愛されてきた「fun.ice!(ファンアイス)」。どのような経緯でジェラートにたどり着いたのでしょうか?
もともと食品メーカーで食品開発に携わっていた太田さんが、“健康”に興味を抱いたことをきっかけに、こころとカラダの両方の面からケアする仕事として次に選んだのは美容業界。しかし、どうしても見た目が優先される世界に次第に疑問を抱くようになり、そんななか特に注目したのは“五感”の大切さだったそう。
「当時、夫の定年退職をきっかけに、なにか一緒にできることを探していました。それぞれが過去に培ってきた経験や想い、リソースをかけ合わせていったら、二人にとって“食”が共通のテーマでした。食べ歩きしたり、ホームパーティーをすれば必ず、夫は手料理でもてなしたり…… ゲストに喜んでもらうことが好きな人なので、それを活かせることがいいなと」(太田さん)
「食を通じて“笑顔を作りたい”これも2人のテーマでしたね。ですから、コミュニケーションがとれるようなお店というのも大切なポイントになりました」(武山さん)
そうしてスタートした、こころのケアにもつながるような居場所としての店づくり。
「まず、ふらりと立ち寄ってだれかと話ができるような居場所にしたいと思いました。次に、何を提供しようかと考えたときに、フルーツは落ちてしまったら出荷できずに廃棄されてしまうという話や、アイス業界で働く仲間のことを思い出し、形を変えて提供できるアイスなら無駄なく使いきれる、と。これまでの培ってきた経験と、食育・環境のことを考えたりするなかでアイスだったら活かせる!と思ったんです」(太田さん)
「fun.ice!(ファンアイス)」の特長のひとつであり人気の秘訣は、食材へのこだわりにあります。
「白砂糖の代わりに何で甘味をつけるかはとても考えましたね。甘味はアイスの大切な要素だからです。味わいに大きく影響するので、アガベシロップや甘酒ひとつとってもいろいろな種類を試しました。また、以前小学校の調理実習の講師や学校でのボランティアを通じて、アレルギーの子どもたちがとても多いことを知っていました。アレルギーがあることで友達と同じ給食が食べられなかったり、食の授業でも特別メニューとしてその子だけに用意が必要になったり。そんな現状から、アレルギーがあってもなくても、皆で同じものを一緒に食べることができる、そういう場所にもしたくて、卵や乳製品を使わないなどのアレルギーに対応するメニュー作りもしました。みんなで一緒に食べられることって、なによりも大切なことだなって思うんです」(太田さん)
アレルギーに対応するため、単純に牛乳を豆乳に置き換えるということはしないのも、こだわりのひとつなんだそう。
「やはりおいしいことが大前提なんです。食材同士の相性ってあるんですよね。例えば甘酒の上品な甘味は牛乳ではなく豆乳のほうが相性がいいなど、豆乳の方があうもの、牛乳の方があうもので、レシピを作り分けています。また、甘酒の優しい自然な甘みは、隠し味として使うこともあります」(武山さん)
そしてもうひとつのこだわりは、生産者から直接仕入れた季節の食材の数々です。取材に訪れた6月初旬は、「ちょうどフルーツが少ない時期で……」とのことだったのですが、ショーケースには、あまおう、パイン、パッションフルーツと、色とりどりのジェラートがずらりと並べられていました。
「少し前にはヨモギがありましたし、これから夏に向けてメロンやスイカが登場します。季節のフルーツや野菜を使っているので、ショーケースの中はどんどん変化していきます。これは、食育にもつながるのですが、スーパーではいつでも並んでいる食材も、ここでは季節ごとに変わることを子どもたちに見てもらうことで、食べ物には旬があるということも知ってほしいんです。枝付きで届くものはできるだけそのままの姿を店頭に並べるのですが、『レモンってこんなふうに枝になっているんだよ』と、子どもたちに教えてあげることで、目の前のジェラートと果物の関係性がストレートにわかりますよね。そして、私たちが産地に赴き直接生産者の皆さんとやりとりさせていただいているのは、美味しくて安心な食材、生産者さんの声を皆さんに届けたいという“ファーム to テーブル”の思いもありますが、お客さまの声を生産者さんに戻していきたいとも思っているからです。生産者の皆さんは自分たちが作った作物が出荷するところまでは見ているけれども、その先でどうなるのかというのは多くはわからないんですよね。食べた人の声を届けることで、生産者のみなさんに本当に喜んでいただけていて。そして私たちは、生産者・消費者どちらの顔も皆さんの顔が見えるから、ちゃんとしたものを作らなくちゃいけないなと、気も引き締まるんです」(太田さん)
ジェラートを通してたくさんの人との繋がりを生み、多くの笑顔を生みだしてきた、「fun.ice!(ファンアイス)」。5年目を迎え次のフェーズに入ったと、これからの展望を聞かせていただきました。
「ひとつは環境面ですね。今はカップで提供しているのですが、本当はゴミを減らす意味ではコーンの方がいいんです。でも、アイスと相性のいいコレ!というものに出会えていなくて。それは課題のひとつですね。現在は、マイカップ、マイスプーンを持ってきてもらうことで、少しでも皆さんと一緒に環境問題を考えるキッカケになればと思い取り組んでいます。
そしてもうひとつは栄養面です。栄養価も考えながら、食べておいしいく栄養も摂れる…… 結果として、こころの健康、体の健康につながることを、自然なかたちで提供できたらいいなぁと。以前も作ったことがあるのですが、野菜使用したスムージー系のアイスもまた作っていきたいですね。アイス+栄養で、食べておいしく健康に。アイスを通して生活がより豊かになる仕掛けを、つくっていきたいと思います」(太田さん)
※季節によって営業日時が異なります。事前にお電話にてご確認ください。