美(うま)し国の食巡礼

心と体をすこやかに。
薬草の活用法を提案する「本草研究所」

2022/10/20

心と体をすこやかに。薬草の活用法を提案する「本草研究所」
心と体をすこやかに。薬草の活用法を提案する「本草研究所」

山海の恵み豊かな三重県のほぼ中央に位置する多気町は、薬草となる天然植物を研究する本草学の先駆者を多く排出し、地域ぐるみで伝統を大切に育んできました。 日本が誇る食・文化・アート・テクノロジーを集めた、大型商業施設「VISON」には、三重大学とロート製薬株式会社が共同研究を行う「本草研究所」があります。

自律的な健康管理が求められる時代、免疫力向上も期待できるという薬草の活用方法や本草学の現代的解釈について、ロート製薬経営企画部メディカルマネジメントグループ兼本草研究所主席研究員の相馬明弘(そうまあきひろ)さんに伺いました。

多気町のポテンシャルと伝統を活かし、
現代の健康学を模索中

薬でしか対処できない病気に苦しむ人に寄り添いながらも、「薬に頼らない製薬会社」のスローガンを掲げ、未病の改善や治癒力向上に注力してきたロート製薬株式会社。

「人々が健康で幸せに過ごすための手段は、薬以外にもたくさんあるというのが私たちのスタンスです。自然の力や、先人が残してくれた生活の知恵、地域の伝統・文化の中にも多くのヒントが隠れていると思っています」と相馬さんは自社の事業に対する姿勢を語ります。
2014年に発足した三重故郷創生プロジェクトに参画したのも、多気町が内包する伝統と自然の力に注目し、健康で幸せな地域づくりの一助になれたらとの思いからだったそう。

施設内の薬草園では、季節の薬草が植えられている。
撮影時(5月)はVISONのイメージフラワーでもあるシャクヤクの摘み取りが、
株式会社モクジの坂上実研究員の手によって行われていた。

「三重県は、2019年に女性の健康寿命日本一に輝いたすこやかな地域です。加えて多気町は、本草学を大切にはぐくんできた場所です。本草学の考え方や伝統を踏襲しつつ、現代のライフスタイルやライフサイクルに合わせて進化させることで、時代に合った健康学を確立したいと考えました。三重大学との共同研究の第1弾として、検討を重ねて行き着いたのが、本草と丹生暦(にゅうごよみ)に現代の技術を融合させて誕生した、薬草湯を使った温浴施設である本草湯です」

そもそも本草とは、薬の作用がある天然物のこと。現在では生薬(しょうやく)と呼ばれ、甘草(カンゾウ)や桂皮(ケイヒ)といった漢方薬で目にすることが多いかもしれません。
本草学が日本に伝来した時期ははっきりしていませんが、江戸時代に中国で本草学の基本書として刊行された「本草綱目」が日本に伝わって第8代将軍・徳川吉宗の目にとまり、生薬輸入に伴う財政負担軽減につながると本草学が奨励されるように。このとき活躍したのが、三重県が生んだ本草学者である野呂元丈と丹羽正伯です。以降、三重県からは多数の本草学者が排出され、本草学ゆかりの地と呼ばれるようになりました。

VISONに訪れるすべての人の心と体を癒やしたい

VISONにある温浴施設「本草湯」では、一年を通して72種類の薬草湯を楽しむことができます。72という数字は、三重県発祥の丹生暦との融合によって生まれたもの。季節や気象状況を記した丹生暦は、室町時代末期に現多気町に位置する賀茂家から出版され、後に全国に広まる「伊勢暦」の起源とされているものです。

「丹生暦は、二十四節気を3等分し、四季折々の気候(時候)の様子を表した七十二候で構成されています。だいたい5日ごとに、身近な季節の変化を示しているのが特徴ですね。本草湯の薬草レシピは、この七十二候に合わせて、地域の素材を組み合わせて作っています」

薬草湯のレシピには、誰もが口にしたり、使ったりしたことがある身近な自然素材を使い、近隣地域の休耕地に実った柑橘類を有効活用するなど社会課題の解決にも取り組んでいます。

薬草畑で収穫した植物を機械で乾燥。

さまざまな植物を使ったオリジナルレシピの薬草湯は、5日ごとに新しいレシピが変わる。

「自然と伝統を活かした本草湯も、社会的課題の解決や地域の活性化も、すべて私たちが追求するWell-Beingのひとつなのです」

72種類の本草湯すべてに共通する特徴は、下記の3つが挙げられます。

<本草湯の特徴>
・入浴によって血行が良くなり、新陳代謝の促進が期待できる。
・浴槽内の湯気が喉や鼻粘膜を潤し、異物の侵入や感染を防ぐ役割が期待できる。
・浴槽内の香りが自律神経に働きかけ、リラックス効果が期待できる。

まさに、免疫力の向上を目指し、ストレスへの対処が重視される現代に必要な場所だといえるでしょう。

「私たちが時代に合わせて解釈し直した本草学の考え方は、薬草湯だけにあてはまるものではありません。山間部の森林に囲まれたVISONでは、環境だけでなく、そこに集まる伝統的な食が集まり、腸内環境を整えたり、健康に有用な栄養素を体内に運んだりして健康維持を助けるお手伝いをしています。本草湯の温浴もそのひとつ。自然の宝庫である多気町のVISONに行けば、免疫力向上が目指せることを知っていただきたいですね。健康で幸せな地域を作るとともに、経済成長にも寄与していくことが私たちの願いです」

さらに相馬さんは、こう続けます。

「薬草に限らず、抗酸化力の強い植物、とりわけ食材となる野菜を食べることをおすすめします。子供たちに、『自然界で強いものはなんだと思う?』と聞くと、ライオンやトラといった答えが返ってきますが、私は紫外線や風雨、天敵など、過酷な自然にさらされながら育っていく植物こそ最強なのではないかと思っています。
身を守る力を持つ植物を上手に生活に取り入れることは、人間の心身を守ることにもつながるのではないでしょうか。花を飾る、柑橘の果皮を浮かべたお風呂に入るなど、簡単なことからぜひご家庭でも試していただきたいですね」

VISONで癒やされた後の日常生活にも
本草学の知恵を取り入れてほしい

VISONで癒やされ、VISONを後にしてからの生活を豊かにする手伝いをしてくれるアイテムがそろうのが、本草研究所に隣り合う「本草研究所 RINNE」です。1977年創業の株式会社りんねしゃが運営するカフェとオーガニック雑貨のお店。

RINNEオリジナルのハーブティー「和草茶」や健康的な暮らしを助ける生活雑貨、コスメ、オーガニックの食材などを販売するほか、カフェスペースでは、季節ごとの薬草やハーブを使ったオリジナルのお茶の飲み比べなどが楽しめます。
さまざまな薬草をブレンドしたお茶は、一期一会であることも多いため、好みの味を探してみるのもおすすめです。

3種飲み比べ(ヴィーガンクッキー盛り合わせ付き)。

日本の伝統の知恵と現代科学、技術の融合によって生まれたという現代の本草という考え方。そして人にやさしい物づくりを大切にしている本草研究所 RINNEのアイテムを、毎日の暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。

本草湯

住所:
三重県多気郡多気町ヴィソン672番1 本草湯1
営業時間:
6:00~24:00
(カフェは22:30まで)
定休日:
なし
URL:
https://vison.jp/shop/detail.php?id=63

本草研究所

住所:
三重県多気郡多気町ヴィソン672番1 本草研究所1
URL:
https://vison.jp/shop/detail.php?id=72

本草研究所 RINNE

住所:
三重県多気郡多気町ヴィソン672番1 本草研究所2
営業時間:
10:00~18:00
定休日:
なし
URL:
https://vison.jp/shop/detail.php?id=66

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