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米と水、雪国の里・魚沼
雪国の知恵と文化に出会う。
八海醸造が手掛ける「魚沼の里」
2022/12/22
雪国の知恵と文化に出会う。 八海醸造が手掛ける「魚沼の里」
米と水、雪国の里・魚沼
2022/12/22
酒造りに欠かせない米と水。地域に根ざした酒造メーカーは、おいしい米と水のある土地で、地元の生産者や豊かな自然と共生しながら酒を醸してきました。
新潟県南魚沼市に本社を構える、八海醸造株式会社もそのひとつ。雪深い地域で受け継がれてきた知恵と文化を酒造りに活かし、「八海山」をはじめとした多くの日本酒を生み出しています。
「自分たちを育ててくれた魚沼で、多くの人に心安らぐ時間を過ごしてほしい」と願う八海醸造が手掛ける複合施設・魚沼の里は、地域への感謝と愛があふれていました。
「魚沼の里」のそもそもの始まりは、2004年、八海山のふもとの里山だった現在の地に、「第二浩和蔵(だいにこうわぐら)」を新設したことでした。当初、今のような複合施設で観光を誘致するつもりはなく、培ってきた技術でより高品質な酒造りをするための蔵を建てたに過ぎなかった、と教えてくれたのは、同社魚沼の里企画室の矢野容子(やのようこ)さん。
その後、古民家を移築してお酒に合う蕎麦を出す「そば屋長森」、バウムクーヘンづくりを実演する「菓子処 さとや」が建設され、現在のような施設の原型が出来上がっていったといいます。
「新しい製造拠点、第二浩和蔵を建てたのが魚沼の里の出発地点です。蔵見学を希望する方が増え、初めはお断りしていたのですが、せっかく足を運んでいただいたのに申し訳ない…と、徐々にお客様を迎えられる施設を整えていきました」
現在の魚沼の里には、八海山のレギュラー酒である普通酒や特別本醸造を主に製造する第二浩和蔵を中心に、全部で16の施設が立ち並んでいます。
「八海醸造がおいしいお酒を造れるのは、地元の水や気候、米の生産者さん、そして地域に暮らす皆さんのおかげ。私たちは魚沼という土地に心から感謝していますし、その魅力をよく知っている企業であると自負しています。魚沼での時間を過ごす人を増やし、魚沼に息づく昔ながらの生活の知恵や魅力をたくさんの方に知ってもらうことで、少しでも地域に恩返しができるといいですね」
酒粕のみを使った本格粕取り焼酎や、もろみから造った本格米焼酎などを蒸溜する「深沢原蒸溜所」、日本酒や酒粕を使ったお菓子を出す「菓子処 さとや」、贈るをテーマにさまざまなラッピングをラインアップする「つつみや八蔵」などが点在する魚沼の里。
さらには、クラフトビール「ライディーンビール」の醸造所である「猿倉山ビール醸造所」、そしてビアバーでは出来たてのビールと料理を楽しむことができます。
従業員の社員食堂である「八海山みんなの社員食堂」は、一般の人も利用可能。塩麹や八海山の甘酒などで仕込んだ肉や魚と、小鉢のおかず、南魚沼産コシヒカリを堪能できる定食などを提供しています。
酒蔵には「同じ釜の飯を食うことで、一致団結していい酒を造る」と、皆でいっしょに食べる習慣があるそう。社員食堂で食事をすると、企業でありながら家業のようでもある、酒造り独特の雰囲気を少しだけ体感することができるような気がします。
「周辺には自然散策が楽しめる遊歩道が作られているので、気候の良い日は山々を眺めながら森林浴を楽しんでいただきたいです。美しい花が咲いていたり、神社があったり…。魚沼の暮らしをきっと、身近に感じていただけると思います」
さらに、雪国・魚沼に生きる昔ながらの知恵を最も体感できるのが、「八海山雪室(はっかいさんゆきむろ)」です。雪室とは、雪中貯蔵庫のこと。雪深い地域に古くから受け継がれている文化のひとつで、雪を貯蔵して庫内を冷やし、自然の冷気の中で野菜やお酒を保存する仕組みとなっています。
電気冷蔵庫が普及するまでは、一般家庭でも冬場に野菜などを保存する方法として利用されており、食品が冬場の寒さから守られるだけでなく、雪室で貯蔵することによって熟成しておいしくなるのもメリットです。
八海山雪室に使われている雪の量は、実に1,000t。1年に1度、外から雪を運び込んで積み上げます。
「貯雪室と雪中貯蔵庫が同じ空間にあり、内部は通年4℃の低温高湿の状態に保たれています。貯蔵室にはタンクが20本あり、合計約36万Lものお酒を保存することができるんですよ。雪中貯蔵庫の冷風は、雪室に隣接するショップの『雪室 千年こうじや』の冷蔵室にも一部、送られています」
雪中貯蔵庫は、無料で見学が可能。1日に10回、スタッフの案内によるツアーが実施されており、天然冷蔵庫という雪国に暮らす人々の知恵を、文字どおり肌で感じることができます(当日予約制・先着順)。
雪室の見学ツアーを終え、雪中貯蔵庫を抜けた先にあるのが焼酎貯蔵庫です。オーク樽の中で、時間をかけてじっくり熟成させ、深みのある味を引き出すのが八海醸造流。一角に設けられたカウンターでは、八海醸造の商品の試飲が可能です。
また、同じ空間のオーク樽に隣接する棚には、専用に蒸留した香り豊かな本格粕取焼酎「面向未来(めんこうみらい)」が、購入者の指定した年月まで貯蔵されています。
「最長で5年間貯蔵することができ、記念日などご指定の年月にお届けします。お客様が書いたメッセージも添えられるので、贈り物としても人気なんですよ。未来への思いを託したメモリアル焼酎を守りながら、私たちも一歩ずつ、魚沼とともに未来に向かって進んでいきたいですね」