Facebook Twitter -
世界の発酵食品探訪
乳酸菌と旨みたっぷり!
中国の漬物「発酵白菜」とは?
2023/03/09
世界の発酵食品探訪
2023/03/09
健康への意識が高まり、免疫力を高めると注目を集めている発酵食品。昨今、レシピ本が出版され、家庭でも手作りを楽しむ人が徐々に増えているのが、中国の酸っぱい漬物「発酵白菜」です。発酵白菜を使ったメニューが人気という東京都御徒町の中華料理店「老酒舗(ろうしゅほ)」を訪ね、代表の梁宝璋(りょうほうしょう)さんに発酵白菜の魅力について教えていただきました。
発酵白菜とは中国・東北地方で食べられてきた、酸っぱい白菜の漬物のこと。現地では酸菜(スヮンツァイ)と呼ばれ、親しまれている食材です。中国の東北地方とは遼寧省、吉林省、黒竜江省の三省を指し、代表の梁さんはその中でも北部に位置する黒竜江省のチチハル出身。
「中国・東北地方の冬は長く、寒さも厳しい。1~2月はマイナス30℃以下になるほどで、土も凍ってしまい、作物は一切できません。昔は今のように電車や飛行機も通っていないし、ハウス栽培だってできない。とはいえ、人間はやっぱり野菜を食べないと生きられません。そこで先人たちが保存のために発酵させて、いわゆる漬物にしたのが発酵白菜なんです。白菜以外にも、大根も同じように発酵させて食べていますよ」
中国・東北地方は白菜の一大産地。秋に収穫した大量の白菜を使って、それぞれの家庭で作られてきたという発酵白菜。ただし、現在は家庭で作られる機会は減ってしまったそうです。
「昔はみんな平屋に住んでいたけれど、今は住居の環境が変わってマンションに住んでいたりもする。発酵食品特有の匂いも気になるからと、家で作ることはなくなってしまいましたね。工場で大量生産されたものを買う人がほとんど。もともとは冬に食べることが多かったけれど、今は1年中作って食べられています」
発酵白菜の作り方はというと、極めてシンプル。材料も白菜と塩だけです。
「白菜を1日置いてちょっと水分を抜いてから、大きいものは半分に切ってかめの中へ。そして塩をまぶして、白菜と塩を交互に重ねて、大きい石を載せます。すると水分がだんだんと出てきて全体に行き渡ります。そして冬場は15℃前後の場所に置いておくと1ヶ月半くらいで発酵して出来上がり。すごく簡単でしょ。昔は味噌もよく作っていて、味噌は家庭によって味が全部違ったけれど、発酵白菜は塩だけだからさほど味に差は出ません」と、梁さん。
自然の常在菌の力で乳酸発酵が進み、酸味や旨みたっぷりの味わいに。乳酸菌が豊富で、白菜に含まれるビタミンなどの栄養素も凝縮されます。
梁さんにとって発酵白菜は、子どもの頃から毎日食べて育った懐かしい味なのだそう。
「他に食べるものがなかったからね(笑)。冬に主に食べていたのは発酵白菜やじゃがいも。それらを炒めるか、煮込むか。東北地方は小麦粉料理の文化で蒸しパンや麺、餃子をよく食べますが、おかずは煮込み料理が多いんですよ。というのも、昔の家庭の厨房には鉄鍋がひとつあるだけ。発酵白菜を煮込みながら、上に網を載せてパンを蒸したりして、ひとつの鍋でおかずとごはんものを作っていたんです」
中国・東北地方の食卓には欠かせない発酵白菜。そのまま食べることは少なく、加熱して食べるのが一般的。「白菜の外の葉は硬いから。柔らかい芯の部分だけは小さく切って、肉と一緒に食べるとさっぱりしておいしいですよ」と梁さん。
現在、「老酒舗」で食べられる発酵白菜を使ったメニューは炒めもの、土鍋、水餃子の3品。いずれも発酵白菜と最も相性が良いという豚肉を組み合わせています。
豚肉と発酵白菜、春雨の炒めものは、酸味をダイレクトに楽しめる一品。発酵白菜の酸っぱさとシャキシャキの食感、生姜やにんにくなどの香りが合わさって、一口頬張ると箸が止まらなくなるはず。土鍋は酸味が程よくやわらいで、旨みが溶け出したスープを飲むと身体もぽかぽかに。炒めものと土鍋に使う食材はほぼ同じであるものの、調理方法によって異なる味わいを楽しめるように工夫されています。
水餃子は豚ひき肉のコクと発酵白菜の爽やかな酸味が合体して、炒めものと土鍋ともまた違った旨みを堪能できます。具を受け止める皮も手作りで、モチモチとして絶品。
「発酵白菜は中国・東北地方ならではの食材であり、それらを使った料理も他にない独特のものだと思います。最近は一年中新鮮な食材が手に入ることもあって、発酵食品を食べる機会は減ってしまいましたが、先人の知恵も詰まっているものであり、身体にも良い。料理を食べながらただおいしいと味わうだけでなく、地域の文化を知ってもらえると嬉しいです」
※しばらくの間、月~木曜14:30~16:30は休業。それ以外にも新型コロナウイルス感染拡大の影響により、営業日時が変更になることがあります。店舗にご確認ください。