発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」
Vol.2 コツいらずで料理上手に!
料理研究家・ほりえさわこさんの「甘酒マジック」
2023/04/27
Vol.2 コツいらずで料理上手に! 料理研究家・ほりえさわこさんの「甘酒マジック」
発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」
2023/04/27
食にかかわるプロに、お気に入りの「推したい発酵食」を教えてもらう「私の発酵“推し”美食」。第2回のゲストは、家族の体と心を元気にしてくれる毎日のごはん作りの名人、ほりえさわこさんです。
自家製甘酒を欠かさずストックしているというほりえさん、「我が家の甘酒消費量はかなりのものですよ」と笑います。温かい甘酒やスムージーなど、飲み物として飲むだけでなく、料理にも甘酒が大活躍しているというのです。ほりえさんちの毎日ごはんを支える甘酒マジックに迫ります。
「飲む点滴」とも言われるほど、栄養価の高い甘酒。体にやさしいドリンクとして親しまれますが、実は飲む以外にもおすすめの活用術があるといいます。
「我が家では、食材の下処理に甘酒が大活躍! もう5年ほど、冷蔵庫にはいつも自家製甘酒が常備されています」
そう教えてくれたのは、料理研究家のほりえさわこさん。ほりえさんが甘酒に目覚めたきっかけは、5年前にさかのぼります。
「南青山のイタリアンレストラン、ドメニカ・ドーロの岩本シェフから教えてもらったのが、甘酒を使った食材の下処理法。それ以来、もう甘酒なしの生活は考えられないっていうくらい、惚れ込んでいます」
発酵パワーを活用した下処理としては塩麹や味噌に漬ける方法も知られていますが、甘酒は味わいを変えることなく、食材のいいところをグンと引き出してくれるのが魅力だそう。
「塩麹もおいしくて大好きですが、和のテイストが強くなりますね。麹独特の味わいが食材にプラスされて、それが塩麹の魅力でもあります。一方、甘酒は漬けておいても、麹の香りや甘酒の甘みは残らないんです。発酵による甘みだから食材の味を邪魔せず、食べたときには旨みとして感じられるんですね。和洋中とメニューを選ばず、なんにでも使えるのは本当に便利です。また、塩分をまったく含まないから、塩加減を自分で決められるのもポイントです」
毎日たっぷり使えるようにと、ほりえ家では自家製甘酒を常備。炊飯器の保温機能を使って、発酵を進めます。
作り方はとても簡単。まず、炊飯器の内釜にほぐした米麴300g、60度のお湯600mlを入れて混ぜ、濡らした布巾を2枚かぶせます。ふたを閉めずに保温スイッチを入れ、6時間保温すれば甘酒の完成です。途中、2〜3時間に1度、かき混ぜ、布巾が乾いてきたら濡らしましょう。
「出来上がった甘酒は、ハンドミキサーでなめらかに攪拌してから保存容器へ。麹のつぶつぶ感が残らないほうが、下処理に使いやすくておすすめです」
「途中1〜2回かき混ぜるほかは、炊飯器でほったらかし。ただ、出来上がるのに6時間かかるし、肉や魚の下処理に使うにはしっかり冷ます必要があります。いつでも使えるようにストックしていますが、うっかり切らしてしまったときは、市販の甘酒を使うことも。下処理に使う場合は、さらりとしたドリンクタイプではなく、どろっとしたタイプがおすすめです」
完成した甘酒は、1〜2日で使いきる分を残して、残りは冷凍用密閉袋に入れて冷凍庫で保存します。 最後の1袋をあけたら、次の甘酒を仕込むのがほりえ家のルーティンです。
「甘酒をまぶしておいておけば、肉も魚もおいしくなって日持ちもするから、私はかたまり肉が特売になっていたらもれなく買っちゃうし、魚の切り身の特売だって逃しません(笑)。今日の夕食に使う予定がなくても、とりあえず買って下処理しておけばいいんだもん。そのストックが、『今日なんにもない! 時間もない!』っていうときに活躍するの」
たとえば、豚のかたまり肉だったら、ポリ袋に肉の重量に対して10%の甘酒と2%の塩で漬け汁を作って浸しておきます。500gの肉なら甘酒は50g、塩は10gです。そのまま冷蔵庫で1日以上おいておけば、あとは食べたいときにゆでるだけ。冷蔵庫で1週間ほど保存可能です。
「ただ塩をしておくだけの塩豚と比べると、違いは歴然。信じられないくらいしっとりやわらかい塩豚になります。同じように鶏胸肉を甘酒にまぶしておけばパサつきしらずで超ジューシーだし、牡蠣や白子の下処理に使えば、独特のくさみがとれてぷりっと仕上がる! 魚の切り身なら、甘酒と酒を同量ずつまぶして。レンジ加熱でも、くさみゼロでふっくら仕上がりますよ。それからトマトや葉野菜にさっとあえてもおいしいし、私はキムチを漬けるときにも甘酒を使います。甘酒の発酵パワーは、食材のいいところをグイグイ引き出してくれるもの。おもしろいくらい万能なんです」
甘酒下処理の活用法、ありすぎて止まりません……!
甘酒で下処理した塩鮭で作る、ちょっとおしゃれなパスタを教えてもらいました。加熱して身がかたくならないから、ソースとのからみも抜群! 塩鮭ならではのぎゅっと凝縮したうまみで、奥深い味に仕上がります。
甘酒で下処理した鮭で、もう1品。定番の鮭おにぎりも、甘酒鮭があれば専門店の味わいにランクアップします。
同量の甘酒と酒をまぶしておいた塩鮭の水けを拭き、耐熱皿にいれます。尾の身の薄いところは折って重ね、ラップをかけずに600Wの電子レンジで1分30秒ほど加熱します。鮭の大きさによって、加熱時間は調節しましょう。
「このまま朝食の1品としてもいいし、お弁当にも便利。骨と皮をのぞいてほぐし、おにぎりにすれば、これまた絶品です。特売の鮭が『デパ地下で買ったよね?』っていうくらい、ふっくらやわらかくて雑味のない味になっちゃいます」
肉に魚に野菜にと、万能な甘酒の下処理使いは、覚えて損なし! 漬けておくだけで勝手においしくなってくれるのがなんともうれしいポイントです。
「甘酒の発酵パワーのおかげで、多少、加熱しすぎてもしっとりやわらかく仕上がります。コツいらずで料理の腕をあげてくれる頼もしい助っ人! 甘酒下処理、おすすめです」
次回は、料理研究家の井澤由美子さんにバトンをつなぎます。季節に合わせ、体がよろこぶ発酵食を楽しむ井澤さんの「発酵“推し”美食」もどうぞお楽しみに!
料理研究家
料理研究家
料理研究家・栄養士。家庭料理研究の草分け的存在である、堀江泰子さんを祖母に、堀江ひろ子さんを母に持ち、幼い頃から料理に親しんで育つ。イタリア、韓国への料理留学の経験も。50年以上続く料理教室を引き継ぎ、テレビや雑誌、書籍などでも活躍。家庭で作りやすく、家族から喜ばれるレシピに定評がある。『おいしい味つけ1:1:1の便利帖』(池田書店)など著書多数。