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発酵に恋して。
体と心を整えるヒントがいっぱい。
サッカー長友佑都選手の
専属シェフ
加藤超也さんの“アスリートごはん”の極意
2023/05/11
発酵に恋して。
2023/05/11
2022年「FIFAワールドカップ」でも大活躍だった、長友佑都選手。彼のコンディション作りを食の面でサポートしているのが、専属シェフの加藤超也(かとうたつや)さんです。
ほかにも一流アスリートを支える中で見出した、一般の人の健康維持にも大いに効果的な “最高のパフォーマンスを発揮するための食事”とは? さらに、アスリートの食にも欠かせないという、味噌や糀甘酒などの発酵食品のよさについて伺いました。
専属シェフを務めることになった当時、イタリアでプレーしていた長友選手が悩んでいたのが、パフォーマンスの不調とケガ。1日でも長く選手として活躍するために、二人三脚で食事の改善を始めたそうです。その積み重ねをもとに、北里大学北里研究所病院・山田悟医師の理論を加えて、3人で「ファットアダプト食事法」を考案しました。
「この食事法では、糖質を体質に適した量に減らすことで、血糖値の急激な上昇を抑制し、糖質の脂質への変化と脂肪の蓄積を抑えられます。糖質の摂り過ぎは、体脂肪の増加や、老化を引き起こす『糖化』の原因になるので、注意が必要なんです」
しかし逆に、「糖質制限」という言葉が先行し過ぎて、糖質は「摂ってはいけない」というイメージが定着しているのも事実。「制限」ではなく「コントロール」という言葉を使い、摂らなさ過ぎる状態にも警鐘を鳴らします。
「長友選手はかつて、徹底した糖質制限を行なっていました。しかし、それではガソリンがない車といっしょ。糖質が必要量より少ないと筋肉がエネルギー源になるため、筋肉量が落ちてしまうのです。糖質は3大栄養素のひとつなので、自分の活動量や代謝に見合った適量を摂る必要があります。長友選手も適正量の糖質を摂ることで、パフォーマンスが改善しました」
食事の順番も重要だそう。「ごはんやパンなどの糖質を多く含むものから食べると、血糖値が一気に上がりやすくなります。ケガをしないようにストレッチから始めるのと同じ感覚で、まず野菜を多く含むスープやサラダなどで体を慣らし、肉や魚などを食べ、糖質は後回しにしてみてください」
ファットアダプト食事法でのもう一つのメリットは、糖質を減らすことでエネルギー源が糖質から脂質に変わること。このサイクルで、体が痩せやすくなります。より効果的に脂質を燃やしてエネルギーを生むためには、良質な脂質は積極的に摂るべきと、加藤シェフ。
「私が専属シェフになる前までは、プロの栄養士がアスリートに油を極力摂らない指導をするのが当たり前でした。しかし良質な油脂は適量を摂ったほうがいい。自転車でたとえるなら、チェーンオイル。油をさすと劣化せずに動きがよくなるように、いい油脂を体に取り入れれば細胞の酸化を防いでくれる効果があります」
“良質な油脂”とは、牛肉や卵などに含まれる「飽和脂肪酸」、オリーブオイルや米油などに含まれる「オメガ9脂肪酸」、ごま油などに含まれる「オメガ6脂肪酸」、アマニ油やえごま油、青背の魚などに含まれる「オメガ3脂肪酸」などを含む油脂のこと。
「特に魚は良質な脂だけでなく、良質なたんぱく質も摂れるのが魅力です。たんぱく質は筋肉を作って保つために欠かせない栄養素ですが、アスリートだけでなく一般の人も積極的に食べていただきたいですね」
アスリート専属シェフとして、食の機能性を重んじる一方、食の楽しさも大切にしています。
「トップアスリートともなると、精神が枯渇するようなトレーニングやプレッシャーとも戦わなければなりません。おいしいものを食べると、どれほどストレスが改善することか。だからサポート中は、献立の中でひとつ、本人の食べたいものを叶えて、それに機能的な食品もプラスするようにしています。そして、家族や友人などと食べたいものを食べる、食事のオフ日も設けます。現代はストレス社会ですから、誰もが食を楽しみ、癒される時間が必要だと言えますね」
海外で選手のサポートをするときに、日本から必ず持参するのが、味噌などの発酵食品なのだそうです。
「発酵食品が腸内環境を整えるために効果的ということはご存知だと思いますが、腸はストレスとも直結しているんです。海外でのプレッシャーに耐えかねて、お腹の調子が悪くなるケースもあって、日本人の腸に合う発酵食品にはよく助けられますね」
味噌は、マルコメの「プラス糀 無添加 糀美人」を愛用。「『贅沢に糀を使った』『生みそ』『無添加』『国産米100%使用』という機能性の高さだけでなく、これ一択なのは、とにかくおいしいから。コクと糀の甘味のバランスが絶妙なんですよ」
そのよさが一番わかるというのが、味噌汁にしたときだといいます。
「味噌汁に加えると塩辛くなる味噌が多い中で、『糀美人』の場合は少量で深い旨みとコクが出ます。その味わいを、ひと口目から感じることができる。味噌汁は海外で飲むととくに、体と心に染み渡るもの。このお味噌で作る味噌汁は、長友選手には海外時代から好評です」
長友選手が日本代表として遠征する間、同じチームの海外選手に食事を提供することもあったそう。よくリクエストされ、喜ばれたのも、豆腐とわかめの味噌汁でした。
「塩とオリーブオイルでの調味が基本のイタリアで、味噌などの発酵食品の味わいと旨みが、おいしいと感じてもらえることは発見でした。逆に、日本では当たり前の調味料ですが、和ではないレシピに自分が取り入れて発信することで、日本の食文化を見直すきっかけ作りができたら、とも思っています」
マルコメの大豆ミート『ダイズラボ 大豆のお肉ミンチ レトルトタイプ』と『糀美人』を使い、「ヴィーガン担々麺」を考案し、好評だそうです。「年々増えている、ヴィーガンを志向するアスリートにも食べてもらいたいですね」
肉や魚などのたんぱく質をしっかり、おいしく摂ってもらう工夫として、塩糀が大活躍。生きた酵素の働きを利用します。
「肉の脂のかたまりは体の中でも白く固まりやすいので、調理の際に必ず除きます。そうするとパサつきやすくなるので、塩糀でマリネをしてから低温調理をすることが多いですね。」
糀甘酒の体内環境を整えるすごさも日々、目の当たりにしているそう。「妻が毎朝、甘酒入りのスムージーを作って飲んでいます。マルコメの『プラス糀 糀甘酒LL 糀リッチ粒』を好んで使いますが、通常の1.2倍量の糀が入っているからか、お通じがいいと言うんです。こういうところも、糀の持つ力を感じますね」
イタリア料理店のシェフを経て、2016年よりサッカー・長友佑都選手の専属シェフに就任し、株式会社Cuoreに所属。機能性の高い料理をテーマに、他分野のトップアスリートの食のサポートや、厳選食材を使ったプレミアムポタージュブランド「THE POTAGE」のプロデュースも行う。レシピ監修に『長友佑都のファットアダプト食事法』、著書に『食べて脂肪が燃える魔法のレシピ』(ともに幻冬舎)がある。
Instagram:https://www.instagram.com/cuore_kato/