手仕事カレンダー
vol.4 忙しい日も肉×夏野菜をバランスよく。
野菜の持ち味と発酵食品が相性抜群な、
黄川田としえさんの
「ゴーヤーのしょうゆ糀そぼろ」
2023/06/22
手仕事カレンダー
2023/06/22
汗をかきやすい夏場は、体の調子も崩しやすい時季。忙しくても、栄養バランスを調えたいから、作り置きを活躍させたいところ。
そこで今回は、料理家で、発酵食スペシャリストの資格も持つ黄川田としえさんに、栄養豊富な夏の野菜・ゴーヤーとまろやかな旨みが魅力の発酵食品・しょうゆ糀を使った、「ゴーヤーのしょうゆ糀そぼろ」を教えてもらいます。大好きな「しょうゆ糀」について、「母から分けてもらっている」というぬか床、手づくりの味噌など、発酵食品の楽しみも語ってくれました。
しょうゆ糀は、10年ほど前から始まった塩糀ブームの流れで知った、という黄川田さん。
「使ってみると、しょうゆがまろやかになり、旨みや甘み、コクも感じられる味わいがとても気に入りました。また、しょうゆやみりん、砂糖などの調味料をそれぞれ加えなくても、これひとつで味が決まります。仕事も育児もしながら、毎日の家族のごはん作りをする身としては、使わない手はないと思いました」
ただ使うだけでなく、自分で手づくりもするように。「糀をしょうゆに浸しておくだけでできますから、忙しい人でもトライしやすいですよ」
しょうゆ糀を使ってよく作るというのが、作り置きできるそぼろ。それに今回、夏バージョンとして加えたのが、黄川田家の夏の食卓によく登場するという、ゴーヤーです。
「栄養価が高い野菜なので、子どもたちが小さいころから、工夫して積極的に食べさせてきました」
ゴーヤーといえば、苦手な人も多いのが、「苦み」。
「でも、コクのあるしょうゆ糀や肉の旨みとよく合うので、このそぼろにすれば苦みがうまくなじんで、むしろおいしく感じると思います。よくゴーヤーの苦みを和らげるために、ゆでたり塩もみしたりしますが、その必要もありません」
おいしく作るコツは、肉を炒める始める前に、しょうゆ糀も同じタイミングで加えること。
「しょうゆ糀を含ませるようにじっくり炒めると、そぼろに味が入りやすくなりますよ」
1.ゴーヤーは縦半分に切ってわたを除き、薄切りにする。
3.ゴーヤーがしんなりしたらいったん火を止め、豚ひき肉、Aを入れて中弱火にし、木べらで混ぜながら4〜5分炒める。
※冷蔵で3日ほど、冷凍で2週間ほど保存可能。
このそぼろが冷蔵庫にあればとにかく便利、と黄川田さん。
「ごはんやうどんなどの麺類にかけるだけで、たんぱく質と夏野菜と炭水化物が一気にとれます。栄養バランスのいいワンプレートごはんが簡単にできるので、忙しい日に頼れますよ」
また、しっかりとした味つけで、冷めてもおいしいので、お弁当のおかずやサラダなどのトッピングにもぴったり。これから暑い時季の時短料理に、大活躍の予感がします。
7年前、発酵食スペシャリストの資格を取得したという、黄川田さん。
「当たり前のように毎日食べている発酵食品ですが、まだまだ知らないことばかり。家族の健康を考えたい、日々の調味料はおいしいものを選びたい、食育の場で発酵食品の魅力を伝えたいと考えるうちに、深く学びたくなりました」
自宅でもさまざまな発酵食品を作って、食卓に生かしています。たとえば、ぬか漬け。「ぬか床は、実家の母から分けてもらっています。私が子どものころから食べている味ですし、子どもたちもおばあちゃんのぬか漬けが大好きなので、うちでもこの味で漬けたいと思いました」
しかし、お母さんの味通りにはなかなかならないというから、不思議。「子どもたちもそう言うんです。育てる環境が違うからなのか、ぬか床って奥深いですよね」
失敗を何度も繰り返しながら、試行錯誤でつき合っています。
「家を空けるときなど、冷蔵庫に入れて発酵が進みにくい状態にしたら、逆に失敗することが多くて。これも不思議なのですが、実家の母はぬか床をいつも常温においているのに、ダメにすることがないんです。家を空けるときにも、水分を抜いた後、表面に塩をパラパラ振って軽く混ぜ、塩分濃度を高めるだけ。私も見習って、基本は常温保存しています」
琺瑯の保存容器で漬けている、黄川田さん。「すっきりとした見た目で、キッチンの隅に置いても邪魔にもなりません」
味噌も手づくりで楽しむ、発酵食品のひとつ。「糀をたっぷり使うことで甘口になって食べやすくなるので、大豆の2倍量を使っています。米糀に麦糀を合わせて作ることもありますが、米糀のみよりもさらに香りが加わって、おいしいんですよ」
1回5kgを年2回、冬と夏に入る前の時期に仕込んでいます。「熟成し過ぎない、若い味噌も味わえるので、このサイクルになりました」
味噌を熟成させるときに、ひと役買うのが酒粕。「アルコールが含まれているので、仕込んだ味噌の上に板粕をのせてふたをすると、カビを防げます。しかも熟成時に、たまり(味噌を熟成するときに出る、濃厚な上澄み液)を酒粕が吸って、おいしいおまけが。そのまま酒のアテにしたり、肉・魚の漬けだれにしたりして活用できますよ」
料理家・フードスタイリスト。発酵食スペシャリスト。2児の母でもあり、子ども向けの食育活動にも力を入れ、家族を対象としたワークショップ「tottorante」主宰。元Jリーガーの夫、アスリートの高校生の娘を食の面でも支える経験から、アスリートフードも研究。著書に『ホットプレートひとつでごちそうごはんができちゃった100』(主婦の友社)など。
https://www.instagram.com/tottokikawada