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手仕事カレンダー
vol.5発酵の副産物もすべて活用!
水切りヨーグルトと乳清で作る、
石澤清美さんの
「インドのチーズ・パニール」と
「ホエー漬け」
2023/07/20
手仕事カレンダー
2023/07/20
暑さとジメジメした湿気で、さっぱりとしたものが食べたくなるのが、この時季。ヨーグルトを使った手づくりの2品で、食卓をさわやかにしてみませんか?
今回は、料理家の石澤清美さんが夏によく作るという、水切りヨーグルトを使ったインドのカッテージチーズ「パニール」と、ヨーグルトを水切りして残る乳清(ホエー)を使った「夏野菜のホエー漬け」を紹介します。20年以上愛用する、秋田の発酵調味料「しょっつる」についても教えてもらいました。
「ヨーグルトを食べる習慣はないのですが、夏は水切りヨーグルトを使った料理を作ります」と石澤さん。ざるで1時間ほど水けを切ったヨーグルトは、質感がなめらかで、コクも際立ち、クリームチーズのよう。
水切りヨーグルトでは、冷たいデザートやドレッシングなどに加えて、インドのカッテージチーズ「パニール」をよく作るそうです。
「夏はカレーが食べたくなるでしょ? パニールは、インドカレー店でも見かける四角く切った白いチーズですが、カレーのトッピングにぴったり。そのまま食べると、やや酸味があり、さっぱりとした味わいの中に、チーズのコクを感じます。カレーに足すと、そのコクが加わっておいしいんですよね」
材料は、水切りヨーグルトだけ。電子レンジで加熱して、さらに水切りし、さっと固める、と手順もシンプル。チーズを買うとなると価格が高いので、ぜひ手づくりしてみてほしい、と石澤さん。
「加熱をすると、ヨーグルト自体の酸味で固まります。牛乳に酢やレモン汁を加えて作るのが一般的ですが、水切りヨーグルトを使うほうが固まりやすくて、自然な酸味なので断然おすすめです」
水切りヨーグルトを作ると、水分が残ります。これは、「乳清(ホエー)」と呼ばれる、乳成分の一部。ヨーグルトは、牛乳のたんぱく質が乳酸菌の酸で固まってできたもので、発酵が進むと収縮して、含まれていた乳清が分離して出てくるのです。
乳清には、水溶性のたんぱく質やミネラル、ビタミンなどさまざまな栄養が詰まっています。「活用しない手はありません」と石澤さん。
「簡単なのは、やや酸味は出ますが、ごはんを炊くときの水分にしたり、トマトベースのスープなどに加えたりする方法。私は『ホエー漬け』をよく作ります。夏野菜を半日ほど漬けるだけでおいしく食べられますが、1〜3日ほどおくと、乳清の乳酸菌の力で発酵します」
実際に、1日漬けて発酵させた「ホエー漬け」をいただいてみると、程よい酸味と塩味で、夏の暑い日に思わず箸が進むおいしさです。野菜がモリモリ食べられるのもいいところ。
「水キムチのように『ホエー漬け』の汁には乳酸菌がたっぷり入っていて、おいしいので、ぜひ汁ごと飲んでいただきたいです。また、肉や魚を漬けるのもおすすめ。ふっくらと、やわらかくなりますよ」
1.ざるに厚手のキッチンペーパーなどを敷き、ひとまわり小さいボウルにのせる。ヨーグルトを入れ、ざるにラップをかけて冷蔵庫で1時間ほど水切りをする。ボウルに出た水分(乳清)は、「夏野菜のホエー漬け」用にとっておく。
2.水切りヨーグルトは耐熱ボウルに入れ、電子レンジ(600W)でふつふつとするまで、2分30分〜3分半加熱する。
3.①と同様にざるに厚手のキッチンペーパーなどを敷いてボウルにのせ、②を入れて手早く水けを切る。ボウルに出た水分(乳清)は、「夏野菜のホエー漬け」用にとっておく。
4.③が熱いうちにキッチンペーパーごと小さなバットなどにとり出し、全体をペーパーで包んで、形を四角くととのえる。上に重しをのせ、あら熱がとれたら、冷蔵庫で1時間ほど冷やし固める。
パニールはそのままでもフレッシュでおいしいですが、さらにおすすめの食べ方を教えてもらいました。
「脂質が少ないので、油を絡めてあげるとおいしいんです。熱したオリーブオイルとクミンシードを絡めると、油分で食感もよくなり、クミンのスパイシーな風味が合います。おつまみにぜひ!」
1.夏野菜は食べやすく切る。
(きゅうりは乱切りに、セロリの茎は長さを半分に切り、1㎝幅に切り、葉はざくぎりにする。ピーマンは縦半分に切り、へたと種を除き、横に1㎝幅に切る)
2.計量カップに「パニール」の作り方1、3で残した乳清をそれぞれ入れ、水を加えて400㎖にする。塩を加えて混ぜる。
3.清潔なびんに①を入れ、②を注ぎ入れる。冷蔵庫で半日ほど漬ければ食べられるが、発酵させる場合は室温に1〜3日おき、酸味が出たら完成。その後、冷蔵保存で1〜2週間は保存可能。
「漬けもの」や「糀甘酒」、「酒かす」などの著書も多数あり、発酵食に造詣の深い石澤さん。20年来愛用しているというのが、秋田・諸井醸造の「しょっつる」です。
「素材や作りが安心な魚醤を探していたら、たまたま近所のスーパーで見つけました。しょっつるはそもそも、漁師が自分の家のために作っていたもの。市販品には、量産するためにアミノ酸添加しているものも多いのですが、諸井醸造のものは、ハタハタと塩だけで発酵、熟成させる、昔ながらの製法を守っているところがいいですね」
「しょっつるは塩味と旨味がありながら、しょうゆのような甘みがありません。炒め物など、シンプルな調理をレベルアップさせてくれますよ。でも、塩分濃度が高いので、使用量は少なめに。しょうゆを使うときの1/3〜1/4量ぐらいと覚えるといいと思います」
料理家
料理家
家庭料理からパン、保存食、スイーツまで幅広くレシピを手掛け、書籍、雑誌、テレビで活躍するほか、料理教室を主宰。国際中医薬膳師、国際中医師、米国N T I認定栄養コンサルタント、ハーバルセラピストでもあり、食と体についての知識も深い。近著に『60歳からの「老けない人」の漢方ごはん』(学研)など著書多数。
https://www.kiyomi-ishizawa.com/