発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」

Vol.5クセのない旨味で
使い勝手最高!
食卓写真家・丹下恵実さんの
愛用・玉ねぎ麹

2023/08/10

食にかかわるプロに、いまイチオシの発酵食をきく「私の発酵“推し”美食」。連載5回目のゲストは、食卓写真家として食品会社やカフェの撮影をするかたわら、食の体験型オンラインスクール「Harmo」の運営も手掛ける丹下恵実(たんげめぐみ)さんです。管理栄養士の資格も持ち、健康や食への関心の強い彼女の推しは、さまざまな料理にマルチに使える玉ねぎ麹。玉ねぎ麹のレシピと活用レシピもご紹介します。

冷蔵庫に常備する発酵調味料

「この玉ねぎ麹は、名古屋で発酵教室を主宰されている方に送っていただいているものなんです。塩麹と同じように使えて、シンプルな料理がとてもおいしくなるんですよ」

玉ねぎ1個(300g)をフードプロセッサーでペースト状にし、塩35gと麹100gをまぜた「塩切り麹」を加えてよくまぜ、清潔なびんに入れて1週間ほど常温で発酵させる。

冷蔵庫から保存びんを取り出しながら、そう教えてくれた丹下恵実(たんげめぐみ)さんは、食をテーマに撮影をする食卓カメラマン。取材で全国を回るなかで、その土地ならではの食文化や食にまつわる人々の姿を撮影しています。

「いま、冷蔵庫には玉ねぎ麹のほかに、醤油麹、黒麹の甘酒やフルーツ麹がスタンバイ。どれも名古屋の麹士いちこさんの手によるものです。仕事を通して出会い、すっかりいちこさんが作る発酵調味料のとりこに。定期的に取り寄せています」

左からフルーツ麹と黒麹の甘酒。フルーツ麹は、フルーツ酵素を作ったあとの果物に麹を合わせて発酵させたもの。

「もともと発酵食品は大好きで、普段の食生活にも自然に取り入れています。愛知県出身で、味噌文化のなかで育ったことも関係しているかもしれませんね。愛知は八丁味噌に代表される豆味噌が主流なので、上京したときは味噌の違いに少し戸惑いました。東京の人はおでんに味噌をつけない、と知ったときも衝撃でした(笑)」

滋味深い旨味に
しみじみ頷く、
玉ねぎ麹のまぜごはん

玉ねぎ麹の旨味がポイントの簡単まぜごはん。

玉ねぎ麹は、塩麹や醤油麹と同じように肉や魚の下ごしらえに活躍するほか、コンソメ代わりにも使えるそう。
「お肉を漬けておけば、しっとりやわらかくなって、玉ねぎの甘味と旨味もプラス。野菜とサッと炒め合わせるだけで、大満足の1品になります。最近のお気に入りは、お米と一緒に炊き込む玉ねぎ麹ごはん。炊き上がったら、旬の薬味をたっぷりまぜていただきます」

水と一緒に加えるだけの手軽さもうれしい!

  • [材料]
    2合
    玉ねぎ麹大さじ1
    しらす干し40g
    みょうが1個
  • [作り方]
    1.米をといで土鍋に入れ、玉ねぎ麹と水を合わせて400mlにしたものを注ぎ、中火にかける。
    2.10分ほどして沸騰したら弱火にして10分炊き、10分蒸らす。
    3.炊き上がったらしゃもじでほぐし、しらす干しと小口切りにしたみょうがを加えてまぜる。

みょうが+しらすのほか、大葉やごまなど、好みの薬味で楽しんで。

玉ねぎと発酵の掛け合わせが生み出す深い旨味は、確かにオニオンコンソメスープを思わせます。チキンライスなど、洋風メニューにしてももちろん最高!

食のおもしろさや大切さを伝えたい

食卓カメラマンとして活動する丹下さんですが、実はカメラマン志望ではなかったそう。
「大学3年生のときにおばにカメラをプレゼントしてもらったのが、写真を始めたきっかけです。自分で作った料理を撮影するのがおもしろくて、言葉を重ねるよりずっと自分の気持ちを伝えられるような気がしました。仕事を考えたときも、私が伝えたいことを届ける手段として、写真という方法は合っているのかもしれない、と思ったんです」

カメラを携え、手探りで踏み出した先には、学校では教えてもらえない食の世界がありました。「伝えたい!」という気持ちは、ますます強まったと言います。

「日本各地にその土地ならではの食文化があります。なかには今にも消えてしまいそうなものもあって。大切なものをもっと多くの人に伝えたいし、何より知らないことを知るってワクワクしますよね。何を選び、どんな食生活をするか、知ることから選択肢が広がっていくと思っています」

五感を解放する食体験をプロデュース

その思いが写真とは別の形で結晶したのが、食にまつわるオンラインスクール「Harmo」です。

「コロナ禍の外出自粛で撮影の仕事がストップしてしまったとき、ずっと温めてきた食や食に関するキャリアを多角的に学べるコミュニティをやるなら今じゃないか、とスイッチが入ったんです。立ち上げ時はオンラインの講義中心でしたが、現在は体験を重視したプログラムを提供しています」

米作りや1日カフェのイベント運営、日本各地の豊かな自然と食を味わうツアーなど、プログラムは多岐にわたります。

「スマホやパソコンをひらけば情報が溢れている今、私たちはどうしても画面で見た情報に頼って頭でっかちになりがち。だからこそ、五感を解放して感じたものって、人生にとってすごく大切なものになるんじゃないかなと思うんです。食を入り口に、参加者の方が地域や地元の人とつながって、『あの体験を大切な人にもしてほしい』と目をキラキラ輝かせているのをみると、その純粋な気持ちがすごくすてきだなとうれしくなります。日常にきっと何か持ち帰るものがあるはず!」

次回は、世界の食文化を作りやすいレシピで紹介しつづける祐成二葉さんが登場します。どうぞお楽しみに!

食卓写真家

丹下恵実(たんげめぐみ)さん

食卓写真家

丹下恵実(たんげめぐみ)さん

食卓写真家、管理栄養士。大学で栄養学を学び、管理栄養士の資格を取得。飲食店勤務を経て、フリーランスのカメラマンとして独立。食品会社や飲食店のWebサイトなどを中心に撮影・取材を行う。2020年のコロナ禍をきっかけに、食を多角的に学べる体験型オンラインスクール「Harmo」(https://www.harmo.online/)を立ち上げる。地域に根付く食文化の体験ツアーの企画をはじめ、食を通した生き方・働き方についての発信をライフワークに邁進中!