発酵に恋して。
マルコメ味噌アンバサダーの
元ラグビー日本代表・廣瀬俊朗さんが
古都鎌倉から甘酒の魅力を発信中!
2023/11/09
発酵に恋して。
2023/11/09
2023年2月、鎌倉大仏を訪れる人などで賑わう鎌倉市長谷に、元ラグビー日本代表キャプテンの、廣瀬俊朗さんが手がける甘酒に着目した「CAFE STAND BLOSSOM」がオープンしました。2021年には「マルコメ味噌アンバサダー」にも就任し、これまでも発酵を通してさまざまな活動してきた廣瀬さんが新たにスタートしたカフェを訪れ、お話を伺いました。
江ノ島電鉄の長谷駅からほど近く、花のマークが目印のシックな佇まいのカフェが「CAFE STAND BLOSSOM」です。ところで、ラグビー日本代表チームの愛称は「ブレイブ ブロッサムズ(Brave Blossoms)」。まさに廣瀬さんが手がけるカフェにぴったりの店名です。ところが最初の予定では、候補にも挙がっていなかったそう。
「最初は“ブロッサム”なんて思いもつきませんでした。仲間から“ブロッサム”の案が挙がったときも、ラグビー感があまりにも強すぎて、それはないだろうって思ったのですが、“ブロッサム”には花がひらくという意味もあり、僕の会社名の“HiRAKU(ひらく)”とも相性がいいかもしれないと、店名に採用。ロゴマークの花びらは、お米がモチーフなんですよ!」
お米の花が咲く「CAFE STAND BLOSSOM」には、甘酒を軸にしたメニューがずらりと並び、ヴィーガンのメニューを取り揃え、観光客や地元の人々に親しまれています。
「スポーツはからだが資本ですし、食事の大切さは身に沁みていたのでずっと食に興味はありました。いつかは食に携わる仕事がしたいと思い描いていたんです。それが、レストランか、ショップか、カフェかという具体的な構想はなかったのですが。現役を引退してから発酵を改めて学び、その魅力を広めたいという思いで、発酵を軸にしたカフェをオープンすることにしました。鎌倉に店を構えたのは、僕自身が6年くらい前に藤沢に引っ越してきたこともあるのですが、このエリアが好きというのが一番です。歴史のある地で、日本人が昔から親しんできた発酵をテーマにするのは、とても相性がいいなと思いました」
「CAFE STAND BLOSSOM」のメニューは発酵を軸にしたヴィーガンメニューも取り揃えたカフェですが、背景には世界各地で出会った食文化の影響もあったといいます。
「現役時代に世界各地に遠征に行くなかで、さまざまな食文化に触れることが多かったのですが、特に欧米ではヴィーガンメニューが当たり前のようにメニューから選べるんですよね。日本でも東京はだいぶ浸透してきているのかもしれませんが、地方や観光地などはまだまだだと感じています。鎌倉は、海外からのお客さまも多い土地柄なので、多様な食文化に対応し、誰にでも安心して楽しんでもらいたいという思いもありました」
「 “HiRAKU(ひらく)”という会社名のとおり、いろんなことをひらいていきたいという思いがあるのですが、発酵を学ぶなかで、美味しさだけでなく、栄養面でも優秀な伝統食である甘酒はもっと注目されてもいいんじゃない?と思ったんです。カフェをはじめてわかったのですが、甘酒には砂糖やアルコールが入っていると思っている方もまだ多い。でも、いきなり甘酒そのものをストレートに紹介するとハードルが高いので、スムージーにしたり、甘味料として砂糖の代わりに使用することで、これまで触れ合ってこなかった方に向けて、気軽に届けたいと思いました」
店内で作られるスイーツの甘味にも甘酒が使われているほか、季節の食材をふんだんに取り入れるなど、素材にもこだわりがたくさん。
「メニュー開発はすべて自家製。たとえば、看板商品の『甘酒あんバターサンド』の自家製あんは甘酒で炊き上げています。また、季節のフルーツを使った日本生まれのグラノーラの甘味は魚沼醸造の『糀みつ』を使っているのですが、風味が豊かでそのまま食べても美味しいですし、お酒のおつまみにもぴったりなんですよ!」
そもそもなぜ廣瀬さんは発酵食に興味を抱いたのでしょうか。
「海外遠征にしばらく行くと、やはり日本食って恋しくなるんですよね。お味噌汁にご飯とお漬物のようなシンプルなもの。日本にいると当たり前すぎて意識することはあまりなかったのですが、改めて味噌や醤油などの日本で昔からある発酵食の魅力を実感することになりました。その後、日本各地で地域ごとに個性豊かな発酵食に出会い、とても面白いなと思いました。味噌ひとつとっても全然違うんですよね」
そんな廣瀬さんが、マルコメ株式会社が味噌文化啓発のために2017年より社内で実施していた認定資格「味噌アンバサダー」に、社外初の有資格者として任命されたのが2021年のこと。
「独学で発酵食を勉強していたのですが、もう少し深く知りたいなと思っていたところ、マルコメさんの社内に独自の資格制度があることを教えていただいたんです。自社の商品を売るだけでなく、日本の伝統食である味噌を文化として残していこうとする活動にも共感しました。ちょうど2021年から僕の会社でスポーツにおけるフェアプレーの精神でさまざまな社会課題を解決しようというプロジェクト『TEAM FAIR PLAY(チーム フェアプレイ)』がスタートしたのですが、マルコメさんとも志を同じくし、以来さまざまな活動をご一緒させていただいています」
「TEAM FAIR PLAY」は、企業や個人と繋がりながら、さまざまな活動を展開しています。
「たとえば、スポーツの試合会場にフードトラックで出向いて甘酒を提供したりしています。スタジアムフードにヘルシーなものって意外と少ないんです。僕らは“ベンチフルーツ”と呼んでいるのですが、物流の過程で傷物になって売れなくなってしまった、スターティングメンバーになれない果物を使ったスムージーや、“ベンチ野菜”のお味噌汁を提供しています。2023年に出店した北海道マラソンでは、“ベンチフルーツ”として富良野メロンを使った甘酒ドリンクを、フルマラソン完走したランナーに提供しました。これがまた最高に美味しんです! それに、スポーツの現場って、健康と一番繋がる場所。サプリメントも大事ですが、天然由来のいいものを、スポーツの後に摂取したり、発酵食で腸内環境を整えたりすることの大切さを伝えていきたいなと思っています」
「思いついたことをメンバーに共有すると、みんながどんどん動いてくれるんですよね。ありがたいです。僕はアイデアを出すだけ(笑)」と語る廣瀬さんですが、取材当日はラグビーW杯2023の期間中で、翌日にはパリに向かうという多忙さ。同時に進行するさまざまなプロジェクトリーダーとして、「TEAM FAIR PLAY」の活動ルールにも掲げられている、「まずは、やってみよう!」を体現しているかのようです。今後はどんなビジョンを描いているのでしょうか。
「カフェでも販売しているのですが、宮崎で地元の農家の方に協力いただきながら栽培中無農薬でお米作りをしています。日本代表の時に、毎年合宿に行っていた宮崎には縁があって。いま2期目になるのですが、本当に美味しいんです。お米をつくるために必要な綺麗な環境が整っているから美味しいんですよね。実体験を通して、環境問題または地元の後継者問題などを考えるきっかけにもなりました。同じようにたくさんの方にも食を通して、さまざまな問題を知ってもらえたらとも思っています。個人的には、いつか自分たちお米で麹を作り、甘酒や味噌作りにも挑戦できたら楽しいなと思っています」
「これ、なんだと思います?」
と、廣瀬さんがまるでラクビーボールのようなかたちの、緑色の野菜のようなものを手に取りました。
「実は青パパイヤなんですが、なんと相模原産なんです。まさか神奈川でパパイヤ作っているなんて思わないですよね。こんなふうに面白いことに挑戦したり、頑張っている生産者さんのことをたくさんの方に知ってもらえたらというのが、これからの目標のひとつですね。カフェとECやイベントを通して、人と人とを繋げていけたら面白いなって思うんです。そしてもうひとつは、海外に向けて日本の食文化を紹介していくこと。ついこの間、ワールドカップの直前に日本のパリ文化会館で、元ラグビーフランス代表主将のティエリ・デュソトワールさんと対談をしたのですが、後半のパーティーで、甘酒を使ったソルベとスムージを提供したんです。マルコメさんにも『プラス糀 糀甘酒 ゆずブレンド』を提供いただいたのですが、柑橘の味わいが飲みやすいようで美味しいと評判でしたよ。海外では日本食はからだにいいというイメージがすでにあるのですが、まだまだ知られていない食文化もたくさん。特に発酵食は本当にからだにもいいですし、世界にも魅力を発信できたらと思っています」