日本の朝ごはん
焼きたての干物と卵かけご飯で1日をスタート!
鎌倉の日常を感じられる「ヨリドコロ」の朝ごはん。
2023/11/16
日本の朝ごはん
2023/11/16
2015年に稲村ヶ崎に1号店がオープンして以来、天日干し無添加の絶品干物の定食で人気の「ヨリドコロ」。朝早くから連日満員、待ち時間情報が流れるほどの人気店に、待望の2号店が2023年5月オープン! 由比ガ浜大通り店が建つのは、江ノ島電鉄の和田塚駅から徒歩3分、鎌倉駅からも10分ほどで到着するローカルな雰囲気がほどよく残るエリアです。話題の朝ごはんをいただきに由比ガ浜大通り店を訪ね、自身もお店のファンだったという、スタッフの近藤麻衣子さんに「ヨリドコロ」の魅力とこだわりを伺いました。
8年前、江ノ島電鉄の稲村ケ崎駅に「ヨリドコロ」がオープンしたときに掲げられたコンセプトは「鎌倉の日常を旅する」でした。ここを訪れる人に鎌倉の当たり前の日常を体験してほしいという思いは、もちろん2号店の由比ガ浜大通り店も同じです。
サーフィンや神社散策などをする人の多い鎌倉の朝は早く、「ヨリドコロ」のオープンも朝7時。まちの1日のスタートとあわせて、店内には焼き魚の香ばしい香りが漂います。干物をメインにした昔ながらの朝ごはんを求めて、たくさんの人が訪れる「ヨリドコロ」ですが、スタッフの近藤さんもそのひとりだったのだそう。
「稲村ヶ崎の本店ができた当時、わたしはまだ高校生でした。近くの高校に通っていたのですが、江ノ電沿いに古民家を改装したご飯屋さんができたと学校でも話題になったのを覚えています。朝ごはんが食べられるお店なんてないエリアだったので嬉しくて、卒業前の記念にと、友人と朝ごはんを食べに行ったのが最初の出会いでした」
そう話をしてくれた、近藤さんは、「ヨリドコロ」で働き初めて5年目。2号店のオープンとともに由比ガ浜大通り店に移動し、日々厨房に立っています。
「『鎌倉の日常を旅する』というお店のコンセプトにもあるように、鎌倉に住むわたしたちにとってはごく当たり前の日常の風景を、遠くから来てくださった方にも体験してもらえたら嬉しいです。私が特に好きな時間は朝。早起をきして、神社に散歩に行くことも多いのですが、早朝にまちを歩いていると、サーフボードを持って裸足で歩いている人がいたり、顔見知りのご近所さんと挨拶を交わしたりと、鎌倉独特のとてものんびりした時間が流れているんです」
入社5年目を迎えて、干物を焼くのがすっかり上手になったという近藤さん。同じ干物でも、焼き方ひとつで味わいが変わるんだそう。コツは、身のジューシーさを失わないように皮をパリッと焼くこと。
「焼き加減は何年もかけて、体得していきました。最初は難しかった焼き上がりの瞬間も、あっ今だ!と、分かるようになりましたよ」
注文後に焼き上げた干物の焼き魚を、朝からのんびりといただける贅沢な1日の始まりです。ところで、なぜメインの食材が干物なのでしょうか?
「もともとのきっかけは、代表の実家が干物屋を営んでいたこともあり、生産者さんとの繋がりがあったからです。そういう背景があるので、干物にはとてもこだわっているんです。全国各地から届いた新鮮な魚を干物に加工してくれるのは、探し求めて見つけた西伊豆の加工場。ここの加工場は水にこだわっていて、天城水流の湧水を使用しているんです。清らかな水で丁寧に洗い、天日干しで仕上げた干物はくさみも癖もなく、とてもおいしいんですよ!数量限定の『あさごはん定食』はあじとさばですが、1日中ご注文いただける『おしょくじ』メニューでは、さばやえぼだい、ほっけやきんめだいなどたくさんのメニューをご用意しているほか、オンラインサイトで地方発送も行なっています」
さらに、「ヨリドコロ」の名物にはもうひとつ、ふわふわの白身が特徴の卵かけご飯があります。この人気メニューは、常連さんの食べ方からヒントを得て生まれたものなのだそう。
「卵かけご飯はもともとメニューにあったもの。あるとき、オーナーの友人でもある常連さんが、お箸で白身だけを泡立てて食べていたのをスタッフが真似してみたのが今のふわふわ卵かけご飯の始まりです。最初はお箸で混ぜるところからスタートし、試行錯誤しながら進化して、泡立て器を使うことでよりふわふわもこもこの白身をつくれるまでになりました。この泡立て作業は、基本的には客さまご自身で行なっていただくのですが、魚の焼き上がりまでの待ち時間を楽しく過ごしていただけたらという思いもあります。たとえば、お友達と一緒に、朝早くに卵を泡立てたという特別な時間を共有するという体験は、きっと特別な思い出にもなると思うんです」
ふわふわの白身は口に入れると、じゅわっと溶けてなくなる驚きの新食感。卵かけご飯独特の白身のどろっとした食感が苦手な方でも、おいしく食べられるというのも頷けます。
「素材そのものにもこだわっていて、卵は神奈川中の養鶏場を訪ね歩き吟味して決めたもの。“女性のための卵”ともいわれていて、葉酸が豊富で濃厚な味わい。見て分かる通り、黄身の色と弾力も特徴です。ほかにも、お米は新潟から取り寄せ、お味噌汁の味噌は、九州では親しまれている麦味噌を合わせて甘めに仕上げています。ヨリドコロではいろいろなお料理を提供しているわけではないので、ひとつひとつの素材にこだわることで、満足いただけるおいしい時間を提供したいと思っています」
「ヨリドコロ」の2店舗はどちらも古民家を改装した建物ですが、今回訪れた由比ガ浜大通り店は築100年にもなるのだそうです。
「2つ先の駅の極楽寺に住んでいる大工さんとのご縁があり、ほぼひとりでリノベーションをしてくださいました。最初に空き家を見た時、どうなるかなと不安に思うくらい古かったのですが、完成を見てびっくり。見事に生き返りましたね!」
「建物を壊して新しくするほうが簡単かもしれませんが、やっぱりいままで受け継がれてきた古き良きものを今後も残していきたいなと思うんです」
それは食事にも通じる思いだとも言います。
「実は、お味噌汁を飲むのが久しぶりというお客さまが結構いらっしゃるんです。最初の頃は驚いたのですが、ありがたいことに若いお客さまも多いので、日本人らしさを取り戻すというか、古き良き日本の素晴らしさに触れるきっかけになれたらとも思っています。ヨリドコロという店名は、いろいろな人の居場所でありたいという思いが込められています。遠方からきてくださるお客さまも、ご近所さんも、働くスタッフにとっても、いろいろな人にとっての居場所にたち寄り、鎌倉の日常を旅してもらえたら嬉しいです」