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発酵人
オランダで納豆を製造販売する
NATTODANⓇが伝える納豆の魅力と可能性
2023/11/30
発酵人
2023/11/30
オランダ人の一家が納豆の栄養価に魅せられ、納豆を作り始め、家業として手作り納豆を販売しています。今までアジアンスーパーで冷凍の輸入食品としてしか買えなかった納豆が、オランダ人の手で、しかもオランダ産の大豆から作られている――。
東京大学 医学部 健康総合科学科を卒業後、コペンハーゲン大学院で食品科学修士課程を履修中の大野南香(おおのみなか)さんが、2022年の夏にオランダのエーデで開催された発酵フェスティバルで出合ったNATTODANの納豆の特徴とは? 日本の納豆との違いは? 今夏、大野さんがNATTODANの代表にインタビュー。現地からのレポートをお届けします。
大野さん(以下、敬称略): NATTODANのこれまでの道のりについて教えてください。
私たちの納豆の旅は、2010年に納豆の実験から始まり、2013年には正式に販売を開始しました。そして2023年現在、NATTODANは転換期を迎えています。創業者はアドバイザー的な役割で活動を続けるものの、代表を退任しようとしており、次の世代である私たちが日々の経営を引き継いでいます。NATTODANを通して私たちは納豆の伝統を受け継いでいきます。
大野:どのようにして納豆と出合ったのですか?
納豆との出合いは、料理への興味からではなく、創業者が心臓や血管の病気で処方された薬の副作用を経験したことがきっかけでした。薬とは別の解決策を探していたところ、カルシウム・パラドックスや骨折に関する日本の研究についての情報に出合いました。これが納豆を調査するきっかけとなり、最終的には自分たちで納豆を作り始めたというわけです。
大野:納豆を作るようになった経緯を詳しく教えてください。
ヨーロッパでは、ビタミンK2を含むさまざまなサプリメントが販売されていますが、そのほとんどは納豆から抽出されたものです。ビタミンK2には骨を強くする働きがあり、これは私たちの健康ニーズに対する解決策でしたが、納豆にはもっと多くの貴重な栄養素が含まれており、私たちはそれを逃したくありませんでした。私たちは合成サプリメントよりも、納豆に含まれる天然の栄養素を重視しました。
私たち家族は実験が好きで、過去にビール、石鹸、コンブチャなど様々な製品を試作してきましたが、最終的に納豆にたどり着きました。
大野:初めて納豆を作ってから10年だそうですが、これまでに製造方法は変わりましたか? また、製造工程で大切にしていることを教えてください。
初めての納豆作りは、刺激的で勉強になる経験でした。当時は、IKEAのキャビネットを改造し、サーモスタットで発熱体を制御した自家製の培養オーブンを使っていました。適切なバランスを見つけるために試行錯誤を繰り返しましたが、その甲斐があって今に繋がっています。この10年間で、私たちは製造方法を大幅に改善しました。現在では、加熱と冷却の両方が可能なプロ仕様の培養機を導入し、より高い生産性を実現しています。
製造工程に関しては、熟練した技術と次の世代への知識の継承を重視しています。納豆の発酵過程は、周囲の温度に影響される浸漬時間など、さまざまな変数に左右されます。無駄のない効率的な工程を心がけるとともに、キヌア入り納豆などの一部の製品では経験に基づいた職人技を大切にしています。私たちの目標は、NATTODANの伝統が続くように、この知識と技術を守り、磨くことです。
このようなお客様一人ひとりに合わせたアプローチは、お客様から高く評価されており、私たちは常に”最高の納豆体験”を提供することを目指しています。
大野:日本の納豆を食べたことがありますか? 日本の納豆とNATTODANの納豆ではどんな違いがありますか?
残念ながら、日本にまだ行った事がなく、現地で生の納豆を食べたことはありませんが、オランダのアジア食料品店で売っている冷凍の納豆を食べたことはあります。日本の納豆と比べて私たちNATTODANの納豆は豆が大きく、柔らかく、粘りがあり、ビタミンK2が豊富です。
私たちは、日本の納豆のレプリカを作ることを目指しているわけではなく、オランダの納豆を作っています。そのため、日本で一般的に使用されている大豆よりもわずかに大きい、品種の異なる大豆を使用して、栄養価の高い製品を提供することに重点を置いています。
大野:最近、原料の大豆を中国産からオランダ産に切り替えたそうですが、その理由を教えてください。
2023年の初めまでは、大粒の大豆も小粒の大豆も中国産を使っており、その出来栄えには満足していました。しかし、風味や栄養など品質に改善点があることに気づきました。そんなとき、オランダでさまざまな種類の有機大豆を生産している新興企業に出合いました。私たちはオランダ産の大豆への切り替えを慎重に調査・検討し、実行に移しました。最終的に、適切なタンパク質と糖分を含む大豆を見つけ、今ではオランダ産のオーガニック大豆だけを使用しています。
大野:納豆の栄養価を高めるために工夫していることはありますか?
私たちは人工的な添加物を使わずに製品の栄養価を高める方法を模索してきました。納豆はもともとグルテンフリー(グルテン不耐性の方に最適)という利点が備わっていますが、ベーシックな納豆(標準品)に加え、ビタミンK2が豊富な大麦入り納豆とビタミンBを含むキヌア入り納豆の2種類を提供しています。
大野:看板商品である大麦入り納豆の良いところを教えてください。
当社の大麦入り納豆は糖度が高く、発酵中の細菌に理想的で栄養豊富な環境を提供します。その結果、この納豆にはビタミンK2が標準品より30%多く含まれています。さらに、大麦はヨーロッパ料理によく使われる食材であり、この納豆に親しみやすい風味を加えています。
大野: 納豆のおすすめの食べ方があれば教えていただけますか?
納豆のおいしい食べ方はいくつかあります。醤油をかけたり、オムレツに入れたりゆで卵と和えたり。しかし、当社のお客様は納豆の様々な食べ方を試すのが大好きです。例えば、納豆をヨーグルトと組み合わせて楽しんでいるお客様がいらっしゃいます!
私たちはレシピを提供することもできますが、お客様に自由に試していただき、ご自分の好きな納豆の楽しみ方を発見していただきたいと考えています。
大野:お客様はどんなかたたちですか?
年齢層は10歳~と幅広いです。当地では小さい子供に納豆を食べさせる親はあまりいませんが、私たちの子供は納豆が大好きで、よく食べています。お客様で最も多いのは高齢の方で、心臓や血管の病気の既往歴があったり、骨粗鬆症を患っていたりすることが多いです。健康効果を期待して納豆を購入するお客様が多いのですが、納豆を料理に使うことに興味を持つお客様もいらっしゃいます。
現在、私たちは市場を広げようとしており、ドイツやデンマークといった近隣諸国での小売販売を検討しています。納豆のようなニッチ商品にとってオランダはやや小さいかもしれませんが、当社のウェブストアはすでにベネルクス(BeNeLux=ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)市場で十分な認知度を持っています。
今後は、乾燥納豆や納豆クッキーなど、より加工度の高い商品を増やしていきたいと考えています。納豆の認知度が着実に向上し、より多くの人々に納豆のユニークな味と効能を楽しんでいただけることを願っています。
1999年生まれ、愛知県出身。東京大学 医学部 健康総合科学科卒業後、2021年よりデンマーク・コペンハーゲン大学院食品科学修士課程を履修中。趣味はヨガ、玄米と味噌汁に夢中。
2010年に納豆作りを始め、2013年からWEBストアで販売をスタート。すでに「ベネルクス」にもWEBストアの認知度は十分で、オランダ国外の実店舗での販売も検討中。目を引くブランドロゴは、漢字の「豆」と「男」を並べたもの。"男が豆にキスする"様子を表しており、納豆に対する熱意を表現している。
https://www.nattodan.com/